透明水彩メーカー、ホルベインの公式の三原色は、キナクリドンマゼンタ、イミダゾロンイエロー、フタロブルー(イエローシェード)です。
キナクリドンマゼンタをキナクリドンレッドと勘違いして、記事を書いてしまっていたのですが、そこそこアクセスを集める記事となってしまったため、書き直そうと思っています。
キナクリドンレッドで書いたものも残しておこうと思っています。ぜひ参考までに。
Table of Contents
ホルベイン公式三原色(透明水彩)
ホルベイン透明水彩の公式の三原色はこちらでした!2種類あるみたいです。
印刷の三原色(CMY)
M キナクリドンマゼンタ
Y イミダゾロンイエロー
C フタロブルー(イエローシェード)
色料の三原色(RYB)
R ピロールレッド
Y イミダゾロンレモン
B フタロブルー(レッドシェード)
こちらの公式ページでも見ることができます。
今回試したのは印刷の三原色(CMY)の方です。どこのメーカーでもCMYの三原色の色に近い絵具が、公式三原色になっていることが多いです。色料の三原色(RYB)の方は試していませんが、選ばれている絵具と今までの実験の結果から予想するに、CMYの方がやや鮮やかな混色ができる気がします。
RYBの三原色も試してみたいなあ
ホルベイン三原色はこんな色!
ホルベイン透明水彩の三原色を塗ってみました!こんな感じの色でした。
キナクリドンマゼンタとフタロブルーはかなり強い色味です。着色力が強く、色も濃いめです。
一方イミダゾロンイエローはそこそこ鮮やかですが、色味はキナクリドンマゼンタやフタロブルーと比べると、色が弱めです。なので、混色すると、イミダゾロンイエローは染まりやすいです。
イミダゾロンイエローはかなりたっぷり用意した方が良いです。
三原色の2色の混色
キナクリドンマゼンタとイミダゾロンイエローの混色
キナクリドンマゼンタとイミダゾロンイエローを混色しました。
わりと、はっきりした赤やオレンジを作ることができました。しかし、この2色はちょっと色相が離れているので、混色で作った赤やオレンジはやや鈍いです。
この2色の相性は悪くありません。しっくり混ざっています。
イミダゾロンイエローはあまり発色が強いイエローではないので、強いキナクリドンレッドに負けがちです。たっぷり用するのがおすすめです。
黄色は染まりやすいんだねえ
そしてイミダゾロンイエローの顔料の特徴だと思うのですが、乾かしたあともやや柔らかめです。そのせいか、混色をするとパレットの個室が汚れがちです。これはどうにかならないものか…と毎回思います。黄色はただでさえ、明るく弱い色なので、パレットの仕切りスペースが汚れていると、きれいな色を作れません。
ホルベインは黄色の選択肢があまりありません。パーマネントイエローは鮮やかさに欠けるし、イミダゾロン系は汚れやすいし、カドミウムは有毒だし…有毒が気にならなければ、やはりカドミウムが発色や混色も含めて1番使いやすいような感じがするのですが…
あっ話がそれましたね。
この2色の混色はこんな感じでした。
イミダゾロンイエローとフタロブルー(イエローシェード)
イミダゾロンイエローとフタロブルー(イエローシェード)の混色を混色しました。
イミダゾロンイエローとフタロブルーの相性はイマイチです。あまりしっくり混ざらないです。
特にイミダゾロンイエローが多めの部分がガサガサしています。フタロブルーが発色の強いブルーなので、青が多くなるほど濃い色味になっています。2色を混色してできる緑は、そこまで鮮やかではないですが、自然に見えるきれいな緑です。
緑がきれいに作れると、画面の熟れ具合がかなり違って見えるよ!
絵で緑の色合いは要だと思っていまして。鮮やかな緑を作るための絵具の組み合わせ、渋めの緑を作るための絵具の組み合わせ、ついて考えた記事がありますので、ぜひ読んで欲しいです。
ここに赤やオレンジを少しずつ足していくとオリーブグリーンやフーカースグリーンを作ることができます。緑はあまり鮮やかすぎない方が自然に見えるので、混色して渋い緑の作り方も練習すると便利です。
フタロブルー(イエローシェード)とキナクリドンマゼンタ
フタロブルー(イエローシェード)とキナクリドンマゼンタを混色しました。
フタロブルーとキナクリドンマゼンタはどちらも色味が強いです。発色が強く、染め付ける力も強いです。
なので、強い同士の色を混ぜると…
かなり濃いめの色になります。黒っぽい紫です。一見色が渋くなっているようにも見えるのですが、薄めると意外に鮮やかです。明度は下がっているのですが、彩度は下がっていないという感じです。
顔料同士の相性は悪くないのですが、とに描く色が濃いですね。水で薄めたりして、調節します。
うん、なかなか鮮やかな紫になってるんじゃない
この混色は、少し渋い紫になっているものの、かなりいい感じだと思います。
ちなみに鮮やかな紫を作るのは、難しく…どの絵具を選ぶか?がかなり大事になってきます。
どうやったら好みの紫を作ることができるのか?…この記事がおすすめです。鮮やかな紫を作るためには、かなり条件が限られてきます。
3色混色で色の幅を広げる
ここまでは3色のうちから2色選んで混色するとどのような感じになるか、というお話でした。
次は3色を混色するお話です。
むやみに3色を混ぜても、色作りの練習になりません。3色混色するときは、必ず2色の混色をベースにして、そこに3色目を加えていくようにします。
難しいから、初心者さんは読み飛ばしちゃってOK!
3色混色のやり方は↓の記事に詳しく書いてあります。
3色の色を混ぜて色作りするのは難易度が高いです。なので三原色で絵を描くのは、絵具に慣れた人向けの練習だと思います。今回は、先ほど紹介した3種類の2色混色をベースにちょっとだけ、お話しします。
キナクリドンマゼンタとイミダゾロンイエローをベースにする
この混色はオレンジ系の色を作る混色です。なので、3色めのフタロブルーを加えて、渋いオレンジや茶色系の色を作る練習をしましょう!
あまり深く考えるとややこしいので、今回はランダムに混ぜます。
3色めに加えるフタロブルーですが、フタロブルー単色でもいいし、紫(混色して作ったもの)を加えてもいいです。オレンジと紫は相性が良いので、好みの色を作りやすいと思います。
私は三原色で茶色を作る、というのがかなり難しく感じました。一応上の画像をみると、イエローオーカー(黄土色)やバーントアンバー(茶色)バーントシェンナ(赤茶色)風の色を作ることができていますが、狙って作るとなると、かなり絵具の量のバランスに苦戦します。そして、元々茶色の絵具に比べると色が薄く、物足りません。
なので、やはり茶色系の絵具はパレットの中に入れておくことが必要!と強く思いましたね。(特にイエローオーカー、バーントアンバー、バーントシェンナかベネチアンレッドは必須)
イミダゾロンイエローとフタロブルーをベースにする
この混色はグリーン系の色を作る混色。このままでも十分使えますが、もう一歩進んで、サップグリーンやオリーブグリーン、フーカスグリーンも作ってみましょう!
3色めに加えるのはキナクリドンマゼンタになりますが、そのままでは対比がきついので、オレンジ(混色で作ったもの)を加えるのが易しいかもしれません。
緑と赤は補色の中でも特に対比がキツいので、色が渋くなりすぎることもあります。特にこの三原色はイエローが弱めなので、3色めに加える色も黄色が加わったオレンジの方が、調整しやすいです。
このグリーン系の3色混色が1番役に立つ混色ではないかと思います。イミダゾロンイエローとフタロブルー2色のみの混色と比較してもらいたいのですが、やはり3色使って彩度を落としたこの混色の方が自然に見えると思います。
あとは、青と黄色の混色よりも、フタログリーンの方が鮮やかだというのも大切なポイントです。なので、もっと鮮やかな緑色を使いたい時には、フタログリーンが必要になります。
この記事も3色使って渋いグリーンを作っています。
3色混ぜるのは適当で大丈夫。感覚で慣れていってください。
フタロブルーとキナクリドンマゼンタをベースにする
この2色の混色は紫を作る混色です。黄色をたくさん混ぜて茶色にすることもできますが、今回はグレーを作ります。青や紫がかった色味のあるグレーで、この色はとても絵に取り入れやすい色気のあるグレーです。
3色めに加えるのはイミダゾロンイエローです。オレンジを加えてもいいです。オレンジと紫は相性が良いのです。
青〜青紫〜紫あたりの色に3色目のイエローやオレンジを加えていくと…ブルーグレーになります。
赤紫に黄色を加えると茶色になります。青紫に黄色を混ぜるのがポイントです。
幻想的なグレーになります。実はグレーというのは、完全に無彩色の色(色が全くない)のことを言うのですが、彩度が低い、青や紫のこともグレーだと認識されていたりします。彩度が低い赤やオレンジは茶色やベージュといいがちです。面白いですよね〜。
黒を作りたい時も、この青と赤の混色から作るのがおすすめです。
分量のバランスが完璧であれば、完全無彩色の黒も作ることができます。上の黒は少しだけ青が強いですね。
キナクリドンマゼンタ→キナクリドンレッドに変えてみるとどうなるのか?
以前書いたものも簡単に残しておこうと思います。
本当は赤はキナクリドンマゼンタですが、間違えてキナクリドンレッドで塗っています。
間違えているけど、これでも十分色作りはできるよ
ですが、キナクリドンレッドも鮮やかなローズレッドで、あまり色を濁らせずに色を作ることができます。ウィンザーアンドニュートン公式の三原色ではキナクリドンレッドと同じ顔料の色(PV19)パーマネントローズが選ばれているので、そこまで的外れなチョイスではないはず💦
使用色
この3色を使って色作りをしました。
キナクリドンレッドは鮮やかなローズレッドですね。透明感があり、色味も強いです。キナクリドンマゼンタよりも色相は赤より。キナクリドンマゼンタはかなり紫よりの赤なんです。
イミダゾロンイエローは同じですね。少し透明感のあります。混じり気のない澄んだイエローです。
フタロブルー(イエローシェード)も同じです。インクのように粒子が細かく透明なブルーです。この色も強い色味です。
3色の混色
3つの色を使って色相環を作ってみました。少し歪んでしまいましたが、こんな感じ!
キナクリドンマゼンタを使用した時との違いは、紫の彩度が下がっていると言うところです。キナクリドンレッドとフタロブブルー(イエローシェード)だと色相がかなり離れてしまうので、混色した場合、やや色は渋くなります。
一方、キナクリドンレッドとイミダゾロンイエローは色相が近づくので、混色オレンジはやや鮮やかになるはずなのですが、そこまで差はなかったですね。
やはり公式の三原色の方がやや鮮やかさを保てるみたいです。
キナクリドンレッドとイミダゾロンイエローを混色。赤やオレンジ作れます。フタロブルーも混ぜて、肌色や茶色もできます。
今度はイミダゾロンイエローとフタロブルーを混色。爽やかなグリーンが完成。少し、キナクリドンレッドを混ぜ、渋いグリーンも。透明度はありますが、色味は弱め。
キナクリドンレッドとフタロブルーを混色。かなり濃いめの紫になります。濃く塗ると黒のようにも見えます。あまり鮮やかな紫ではありません。少し水を足していくとちょうどいい色味に。黄色を少し混ぜれば完全な黒にもなります。
三原色で描く、どんな人に向いてる?
色づくりを練習したい人
理論上は全ての色が三原色で作れるはずなのですが、現実にはそう簡単に行きません💦
緑や茶色、肌色など、おなじみの色を三原色で作るのは意外と難しいです。
一回作った色と同じ色を再現しようとすると、これまた難しいのです。3色をどのくらいの比率で混ぜたのか、分からなくなってしまいます。
私も、かなり色作りは慣れてきたぞ!と思っていましたが、三原色で色を作るのはかなり難しかったです。
3色だけで色を作るのはホンッットに難しいよね!!
3色だけで、色々な種類の色を作ってみると、なんとなく色を作るコツがつかめてきました。
確実に色づくりが上達しますし、相性のいい色というのも分かってきます。
どの色とどの色を混ぜるとどのような感じになるか、そういうことも覚えてきます。
濁る混色、鮮やかな混色など。
もっと色作りや、色使いが上達したい、という方にはおすすめの描き方だと思います。
画歴が長く、色がマンネリ化してしまう人
画歴が長くなると、自分の絵のスタイルができてきて、色合いもマンネリ化することがあります。
私の場合、絵の色彩が、何となく同じような感じになってきました。個性といえば聞こえはいいですが、自分が飽きてしまうこともあります。。そんな時には、新しい色彩にチャレンジしてみるのもよいとおもいます。
耳が痛いです…
いつもと同じ絵具で描いていると、似たような混色をしてしまい、同じような色彩で描いてしまいがち。
その点、三原色で描くとなると全ての色を作らなくてはいけないので、頭が一気に混色モードに切り替わります。
肌色にしても、いちから作らなくてはいけないので、いつもと違う色合いになります。
思ってもみなかった色が作れたりすることもあり、発見もあります。なので、そろそろマンネリ化してきたかな?と思う方には、三原色で描いてみるのをおすすめします。刺激的で楽しいです!
新しい画材を試したいが、少ない色数で揃えてみたい人
これはよくあります。今まで別の画材を使っていて、新しい画材を買ってみようと思ったとき、最初からたくさん絵具を買いたくないこともあります。
新しく買う画材が、自分に合うか分からないし…
ただ試してみたいだけ、というときは、三原色買ってみて試すのはいい方法だと思います。3色だけなら安いですしね。場所もとりません。
絵具も三原色セットのようなものが、売られていたりします。
絵具の中でプライマリーレッド、プライマリーイエロー、プライマリーブルーのような名前がついているのは三原色として売っている色なので、とりあえずその3色を買ってみて試してみることができます。
例えばわたしの場合は、透明水彩をメインに使ってきましたが、あるときアクリルも試してみたいな、と思いました。でも、アクリルが自分の絵に合うか分からない、たくさん買って余るのもイヤ。という訳で三原色の3色をそろえました。3色あればとりあえず、絵は描けます!(かなり不自由ですけど)
三原色で描く、向いていない人は?
初心者の方
三原色で絵を描くのは、初心者の方にはちょっと難しいかもしれません。
よく使う茶色や緑を一回一回混色で作らなくてはいけないのが、大変です。気をつけていないとすぐ色が濁ってしまいます。
初心者にはもう少し色が欲しいね。
最初は、もう少し色数があった方が、色作りは分かりやすいと思います。
私のおすすめは7色です↓
鮮やかな色で描きたい人
三原色で描くというと、鮮やかな色が作れそうな感じがするかもしれませんが…
混色によって、思ったより色は沈みます。
理論では三原色で全ての色が作れるということですが、実際の絵具の顔料の色は、そこまで純粋ではないので、色を混ぜていくと、彩度は下がってしまいます。
鮮やかな色で明るく描きたいと思う場合は、三原色だけでは、鮮やかさが足りないことが多いと思います。
その場合は、鮮やかな色を何色かパレットに入れて、色が沈まないような混色をする必要があります。混色では作ることができない色、と言うのは意外と多いです。
ただ、鮮やかな色>渋い色 というわけではないので、大切なのは色の扱い方を覚える、ということだと思います。
私は、個人的には、三原色に限らず、色々な混色も試してみたいと思っています。
さいごに
おそらく日本で1番メジャーな透明水彩ホルベインの三原色を紹介しました。
今まで三原色という言葉と意味は知っていたけれど、「実際に3色から色を作る」ということをちゃんとやったことがなかったので、とっっっっても勉強になりました。
三原色といっても、三色の絵具には色の強さに差があるので、理論通りには行かないこと、思ったより混色で色が沈むことも初めて知りました。3色で作れない色というのも、思ったより多いんだなと。
とても刺激的な試みなので、オススメです!
この試みをした後に、基本の7色というのを思いつきました。三原色、という概念を前提として、実際の色料では限界があるので、そこをフォローする色はどれかな、と考えて選んだのが7色です。
また、顔料同士で、うまく混ざりあう、混ざらないもの、という相性もあります。
どれもこれも実際に試してみないとわからないことばかりです。
なので、ぜひこの記事を読んだ方にも実際に三原色で色作りにチャレンジしていただきたいな!と。
簡単なようで一筋縄でいかないのが三原色です。
私は他のメーカーの三原色でもチャレンジしようと思っています。それぞれちょっとずつ違いがあるので面白いです。
限りのある色で、色づくりするのは、とても難しい、でも面白いです。