2色の絵具を混ぜていると、時々うまく混ざらず分離してしまうことがあります。
以前は、分離は絵具がうまく混ざらない困った現象、としか思っていませんでした。
ですが、最近は分離色も定番になりつつあり、色々なメーカーから分離色も販売されています。今回はそんな分離色を自分で作る方法をご紹介したいと思います。
分離色ってどんなもの?
分離色とは、粒子の大きさが違い、うまく混ざらない顔料同士を混ぜて作られた色のことです。

分離色は、紙に塗ると
色々な色が出てくる不思議な絵具❗️
一見すると、1色に見えるのですが、実際に紙に塗ってみると複数の色に分かれます。中には激しく色が分かれてしまうものもあれば、ほんのり分離するだけの色もあります。

今まで、「絵具はキレイに混ざらないと困る」と思われていたものですが、うまく混ざらないことを逆手にとって、「混ざらずに色が分かれること」を魅力にした絵具です。
分離色はここ数年の流行で、色々なメーカーから分離色が出ているのですが、もしかしたら絵具1本使い切るのは大変かもしれません。分離色は、画材店で手に入れにくいようなメーカーから販売されていたり、限定色も多いので、入手が難しいことも多いです。
とりあえずどんなものか知りたいときは、手持ちの絵具で分離色を作って試してみてもいいと思います。

どんな組み合わせだと分離するのかな?
色々な絵具の組み合わせで、試してみるととても面白くてあっという間に時間が経ってしまいます。
ではいってみましょう!
どんな組み合わせの絵具が分離する?

どんな絵具を選ぶと分離するのかな?

粒子の大きい絵具がポイントです!
絵具は1色ずつ粒子の大きさが違います。粒子が粗い絵具があったり、粒子がとても細かい絵具もあります。分離色を作る時にポイントになるのは、「粒子の大きい絵具」です。
粒子の大きい絵具は、粒状化色(グラニュレーションカラー)と呼びます。
粒状化色(グラニュレーションカラー)は、絵具のカタログやチューブに記載があることが多く、グラニュレーションカラーの「G]のマークが付けられていることが多いです。

絵具を混ぜるとき、2つの絵具の粒子の大きさが違うと分離します。
粒子の大きい絵具✖️粒子の小さい絵具
粒子の大きい絵具と粒子の細かい絵具を混ぜるパターンを試してみます。
先ほど説明した通り、粒子の大きい色にはグラニュレーションカラーの「G]のマークが付けられていることが多いです。
例えば、フレンチウルトラマリンや、コバルトブルーやコバルトグリーン、ポッターズピンク、マンガニーズバイオレットなどです。
一方、粒子の小さい絵具は、絵具のカタログやチューブに、ステインカラーを示す「S」マークがついています。粒子が細かすぎて、紙やパレットに染みついてしまうということで、Stain Color ステインカラーです。
具体的には、フタロブルー、フタログリーン、キナクリドン系の赤や紫、ピロール系の赤やオレンジです。

この2つのタイプの絵具同士を混ぜると、粒子の大きさが違うため馴染みません。一旦色が混ざった後にそれぞれの色がぼんやり浮き出てきます。ただ、粒子の細かい色も混ざっているため、粗密感はなく、しっかり色が混ざった後に別の色が浮き出ることが多いです。
組み合わせにもよりますが、分離の見え方は控えめです。
粒子の大きい絵具✖️粒子の大きい絵具
実は、粒子の大きい絵具同士でも分離します。というかこの組み合わせの方が分離が激しいことに気がつきました。
シュミンケホラダムのスーパーグラニュレーションシリーズが、このパターンの分離色だったからです。2色〜3色の組み合わせなのですが、どれも粒子粗めの顔料でした。

例えばウルトラマリン(粒子の粗いタイプ)✖️ポッターズピンク、のような組み合わせですね。
両方とも粒子が粗い顔料同士の組み合わせです。

えっ!粒子が大きい同士でも分離しちゃうんだ
この組み合わせの分離はすごく独特で、紙の地が透けるような粗密感があります。色もより分かれやすいですし、霜降りのような独特の質感があります。粒子の細かい絵具を混ぜたパターンよりも紙の地をはっきりと反映します。
この分離はちょっと見た目が荒っぽいので、使う絵を選ぶかもしれませんが、分離色らしい見た目ではないでしょうか。
とにかく分離色を作るには、片方に粒子の荒い絵具を選ぶことが大切で、片方が粒子の荒い色であれば、もう片方はステインカラーの表記がなくても分離することが多いです。
分離とはどんな現象?
百聞は一見にしかず。
分離の面白さは、混ぜて塗った後に、色が別れて、元々の色が浮かびあがり、1色なのに複数の色味が感じられるところにあります。
例えば、マンガニーズバイオレット(粒子の荒い色)とフタログリーン(粒子の細かい色)を混ぜた場合、鈍いブルーができます。その混色の鈍い青に加えて、マンガニーズバイレット、フタログリーン、それぞれの色味が顔を出すので、全部で3色の色が感じられます

青と緑、青と紫、のように近い色で混ぜてみると、きれいな色味になりやすいですが、あまり分離は強く感じられません。逆に青とオレンジ、のように補色同士(遠い色同士)を混ぜてみると、グレーの中に、オレンジや薄ら青が見えます。それぞれの色がはっきり違う色なので、3色強く感じられて、面白い分離になりやすいです。
統一感がありながら、色の変化があるので、美しく見えやすいのだと思います。それが人気の理由かな?
(同じようなことは分離でなくてもできます。2色の色を混ぜ切らないで、色を変化させつつ、ランダムにウェットインウェットすればOK)
きれいな分離の作り方
分離は水が多いところで、多く発生します。粒子の小さい色の粒だけ、水の流れに乗って広がっていくようです。なので、水で引き伸ばしたり、ウェットインウェットやバックランでにじみをつくると、多く分離しやすいです。
濃く塗ったところはあまり分離しないので、混色したそのままの色を楽しめます。
濃く塗るところと、水をたっぷり加えて分離させるところ、メリハリをつけると面白いかもしれません。
また、どちらかというと早く乾く紙の方が分離が面白いです。早く乾く紙は、普通の使用だと、ムラなく塗ろうと思ってもすぐに端から乾いてしまったり、難儀するのですが、分離色の場合だと色が分かれやすく面白いです。ヴィフアールやアルビレオなどですね。
いろいろな分離色を作ってみた
分離色を作るときには、片方が粒子の荒い色であれば、もう片方は粒子の小さい色(ステインカラー)の表記がなくても分離しやすいです。
なので、まず粒子の荒い色を軸にしてみて、そこに色々な絵具を混ぜてみましょう!
フレンチウルトラマリン(PB29)

粒子の粗めのウルトラマリンがおすすめです。ホルベインのウルトラマリンディープ、ウィンザー&ニュートン、シュミンケなら、フレンチウルトラマリンは粒子が粗めです。
赤や紫だけでなくグリーン系とも相性抜群。オレンジと混ぜてグレーにするのもきれい。
ウルトラマリン×キナクリドンバイオレット

ウルトラマリン×フタロブルー(PB15)

ウルトラマリン×フタログリーン(ビリジャンヒュー)(PG7)

ウルトラマリン×オレンジ

セルリアンブルー(PB35)

この色は粒状化色の中でも、特に粒子の荒い色。どの色と混ぜても分離します。
私にとっては混色厳禁の危険な色ですが、分離させたい時にはいいと思います。分離というより、もはやどの色とも、混ざる気がありません。筆で、クルクルしてもパレット上ですぐに色が分かれてしまうんです。
色自体が淡い水色なので、分離しても、あまりはっきりした色合いにはならないかもですね。赤や紫系との混色が無難。
(ちなみにシュミンケのセルリアンブルーヒューは全然違う顔料で、むしろ粒子の細かい色。色合いもホルベインのピーコックブルーに近い色。紛らわしいので注意が必要!)
セルリアンブルー×ピロールレッド

セルリアンブルー×キナクリドンバイオレット

コバルトグリーン(PG50)

ウィンザー&ニュートンのコバルトグリーンは色も明るく、分離色にぴったり。明るめのコバルト系の緑は珍しいかも。緑なので、植物などにも使えて、かなり使い道もありそうです。

コバルトグリーン×イエローオーカー(粒子荒い色同士だけど分離)
コバルトグリーン×イミダゾロンイエロー
このあたりは普通に葉っぱを塗ったりできますね。
面白いのは
コバルトグリーン×パーマネントバイオレット
個性的なグレーになっています。
マンガニーズバイオレット(PV16)

マンガニーズバイオレットは、シュミンケホラダムやマイメリで買える色です。(ターナーの海外色にもありました!これはお買い得)
珍しい紫の粒状化色。
特に粒子の荒い色の一つで、かなり個性的。分離色にはむいている!個人的にはとても気に入っている色。グリーン系との混色でブルーグレーができて、何かに使えそう。色も美しい。
マンガニーズバイオレット×フタロブルー

マンガニーズバイオレット×フタロターコイズ(マイメリ)

マンガニーズバイオレット×フタログリーン

他にもあるけど
また、他にも試すことができたら追記します。
茶色系だと、ローアンバーは粒子が粗めで分離させることができます。シュミンケホラダムのマホガニーブラウンもかなり粒子が荒いです。あとはマイメリのマルスブラウンがかなり粒子が荒いと思います。
このあたりは無難に絵の中で使えそうな分離を作ることができそうです。
あとはポッターズピンクですね。この色はかなり粒子が粗いので、どんな色と混ぜても分離色が作りやすく、色味もソフトなので、ベージュやピンク、紫など作れる色の幅が広いです。また今度作った色の見本も載せます!

どんな表現に使えるか?
分離色はとても魅力的なんですが、絵の中に入れてしまうと、あまり分離は目立たなくなります。

しっかり描くほど分離は見えにくくなるよ
はっきりと分離を生かすなら、単色で描くか、2〜3色におさえて、色の変化をはっきり感じられるようにしてみるといいと思います。
分離色はあまりコントロールできないので、偶然性を生かして、遊ぶような気持ちで取り入れるといいかもしれません。
シュミンケホラダムのスーパーグラニュレーションシリーズは、粒子の粗い同士の分離色で、独特のテクスチャーがあります。もう手に入りにくくなってきていますが、参考までに記事を読んでみて下さい。作例も載せています。
完売して販売終了になったら、スーパーグラニュレーションシリーズの色を市販の絵具で作ってみる企画をやろうかなと思っています。