今回はチャコペーパーを使って水彩の下書きをキレイにする方法です。
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下書き、どうやってするのが正解?
以前「透明水彩の線画を何で描くか?」の記事は書いたのですが、今回は水彩画の下書きをどうやって描くか、のお話です。
こちらのペン線画と鉛筆線画の比較も人気です。
皆さんは、水彩画の下書き、どうしてますか?
結構、直書きしちゃう方も多いかもしれません。
枯葉も水彩画の下書きはほとんど直書きしています。一発描きになるので、キレイに描けないこともあるのですが、大抵は直接描いてます。なので下書きにかける時間はかなり少なめだと思います。
ただ無駄な線を描かずに、一発でキレイな線を描くのは、やはりそれなりに練習が必要でした。今ではだいぶスムーズに描けるようになってきましたが、最初は線が何本にもなってしまったり、必要な線が分からなくて描かなくてもいい線をたくさん描いたりしてしまっていました。いまだに下書きが混乱してしまうことはあります。
意外と悩ましい…
水彩画は透明感を活かす画材です。あまりに下書きの鉛筆線がたくさん描いてあると、塗った時にキレイに見えないことが多いです。鉛筆の線で、紙が汚れてしまうことも。そして絵具で塗ってしまうと、鉛筆の下書き線が消えなくなる紙もあります。また、不必要な線を消すために、消しゴムでゴシゴシ消すうちに水彩紙が傷んでしまうこともよくあります。
線自体は色を塗ってから、描き起こすこともできるので、「下書きの線は必要最低限である」ことが理想だと思います。
なので、ラフを何らかの形で写す方も多いはずです。最近ではデジタルツールを利用する方も増えてきました。
水彩紙に直接下書きを描くメリット
では、水彩紙に直接下書きをしていくメリットを考えてみたいと思います。
メリット
・早い(手軽)下書きから着彩までのスピードが速い。とにかく手軽。イメージしてから制作までのスピードが早く新鮮さを保てる。スピードが速いというのは一番のメリットかも
・線に勢いがある。直接描いているので、線に新鮮さと勢いがあります。
デメリット
・スキルが必要。キレイな線を一発で決めるのは慣れと経験が必要。それがないとかえって時間がかかることも。
・線が迷うと紙が汚くなる。何度も描き直したり、線を加えていくと、紙が汚れてしまう。
・意味分からん線ができがちで着彩で迷うことも。
・複雑な構成がしにくい。一発で描けるものの複雑さには限度がある。
・少し右上がりになってしまったり、左上りになってしまったり、バランスも難しいです。
線画が上手くいかないということも
時々あります。
直書きする時にしている工夫
大きめの水彩紙を使って、余白を作る
枯葉はずっと直書き派(というかうまく絵を写せない)でした。ほぼ全ての作品が直書き。でもやっぱり線画がうまく起こせなくて、水彩紙が無駄になったりすることもあります。
そして、結構悩みの種なのが、人物の位置など、紙の中でうまく配置できない。いざ、描いてみると思ったより人物が小さくなってしまったり、少し右寄りになってしまったり。
このポストに全力で共感してしまいました↓
人物は真ん中だといいとは限らなくて、少し右寄りの方がバランスがよかったり、あるいは人物は下の方がグッとくる画面になることもあって、実際に描いてみるまでなんともいえません。
最初から一番いい位置に描けるとは限りません。
そこで編み出した工夫が、仕上がりのサイズよりも大きめの水彩紙に描くということ。以前は水彩紙にぴちぴちに端っこまで描いていたのですが、あえて大きめの水彩紙を区切って小さい絵を描くようにしました。
SM(サムホール)サイズに描くならF3サイズの水彩紙に、F4の作品にはF6サイズの水彩紙を使います。ハガキサイズの作品も、ハガキサイズの紙には描きません。SMサイズの紙を横にして、2つ作品を並べます。上下左右2cmくらいは余白がある状態です。そうすると少し作品をずらしたいな、と思った時に融通がきくのです。
四方に空白があると、額装の時にも良いです。水彩紙の端っこまで描いてしまうと、端っこ5mmはマットに重ねる部分として必要なので、絵の端がマットに隠れてしまいます。ところが空白があると絵の端っこギリギリまで見せることができます。この意味からも少し大きめの紙を使うようにしています。
余白分は少し切り落とすこともあるので、少し勿体無い気もしますが、絵具の混色のお試しに使ったり、小さなイラストを描くこともできるので、結果として無駄にはなりません。
少ない線で描くように心がける
かつての枯葉は下書き線が多くなってしまう方でした。どうしても、水彩画の下書き線がキレイに描けるようになりたくて試行錯誤していました。振り返ってみると、こればかりは、練習や経験が必要だと感じるのですが、それでも普段からの一工夫と意識で驚くほど変わることがあります。
↑恥ずかしいですが、左は18年前、右は去年の線画です。
まず模写やクロッキーなど、影をつけないで描く練習をすると、線の数は減っていきます。観察力がつくと、無駄なものは描かなくなっていったような気がします。脳の中で正確な形が認識できるようになるからだと思います。枯葉も一時期人物のクロッキーや模写を謎に頑張っていた時期があったのですが、その練習を境に線の数はかなり減ったように感じます。
もう一つ。太めのペンを使って練習をすることです。鉛筆や色鉛筆は力の入れ加減で、線に強弱がつけられます。そのため弱い力加減で何度も線を描くと、なんだかいい感じに見えてしまうことが多いです。私はある時から、ノートの落書きや絵のアイディアを鉛筆ではなく、文字を書くようなペンでするようにしました。模写やクロッキーもペンでするようにしたら、とても難しくていつもより画力が下がってしまう感じがしました。
それでも気にせずペン落書きを続けていたら、少しずつ線が減って、勢いのある一本線が最初から描けるようになってきました。
これはのちのち、線画の一発書きをスムーズにするために役に立っていきました。
下書きを写して描く方法のメリット
ここまでお話しして思ったのですが、一発書きする練習をするより、ラフを写していった方が効率的なのでは?と思った方もいると思います。そう、その通りです!!デメリットもほとんどありません。
メリット
・ラフの段階で何度も練り直しができる。時間や労力をかけられるので、複雑な構成も可能。
・拡大縮小、配置も一番良い位置にできる。反転もできる(苦手な顔の向きに対応できる)
・ラフが残っているので、万一着彩に失敗しても、線画を新しい紙に描き直してリトライができる。失敗が少ない。
人物と背景のラフを別々に描いて、本番の紙で組み合わせることもできる!
それも便利そう✨
デメリット
・面倒。小作品などは、直書きできる方が速くていいかも。下書きを描くまでの時間と手間がかかる。その間に気持ちが冷めちゃうかも。
・線に勢いが減る。ラフの方が勢いがあってよかったな、というパターン。少し整った感じにおさまりやすい。このあたりは慣れと作風との相性もありそう。
色々やっているうちに飽きちゃう…
下書きを水彩紙に写す方法
直書きするために、色々な工夫をしてきたのですが、最近は、少し大きめの作品やじっくり練りたいとき、ラフを何らかの方法で水彩紙に移していく方が、かえって効率がよいのではないか、という気もしてきました。なので、自分の中で良い方法を探しているところです。
下書きを写す方法には色々あります。
トレス台で写す
トレス台は、以前はちょっと手が出にくいアイテムでしたが、最近はサイズが小さいものも増えましたし、なんと100均でも500円ほどで売っているというではないですか。
台の部分が光るようになっていて、ラフ画を下に置いて、上から本番の紙を当てて、台を照らすと光で、下絵が透過して簡単に写すことができるようになっています。
とっても便利そうなのですが、一つ問題が。水彩紙が思いのほか分厚いということです。
水彩紙として使いやすいのは200g/ ㎥以上だったりします。使いやすい上質水彩紙の場合はほとんどが300g/㎥ですので、絵を写すとき少し線が見えずらいそうです。あとは色紙のような分厚いものを写せません。とは言ってもやっぱり便利そうだなとは思います。
ペイトさんの記事がとても参考になりました↓
私はトレス台を持っていないのですが1台くらい欲しいと思いました!
チャコペーパー、念紙を使って写す
次は王道の方法です。写し紙を使って写す方法です。ラフを描いた紙と水彩紙の間に挟んで使います。カーボン紙が一番よく知られているのですが、カーボンなので紙が黒く汚れやすいのが弱点です。
そこでおすすめなのがこれ。デザイン用のチャコペーパーです。
こちらは水色で、ラフ紙と水彩紙の間に挟み、上から線をなぞるとキレイに水彩紙に線を写せます。写したものをキレイに描き起こしした後に、水をかけるとチャコペーパーの水色の線は消すことができます。ここが気に入りました。
青とグレーがあります。どっちでも良さそう。
使い方はこのような感じです。
1.水彩紙の上にチャコペーパーをのせ、上にラフを描いた紙を載せます。(①、②、③の順で)
2.ラフの線をボールペンなどやや硬いものでなぞっていく。そのときどこをなぞったか分からなくなってしまうので、赤など色の違うものでなぞる方がよいです。
3.このチャコペーパーなら、さほど強い筆圧でなぞらなくても楽にキレイに写りました。(私はここでも最低限の線しか写しません。)
4.水色で線が写ったのを確認したら、茶色の色鉛筆(水彩画の下絵として馴染みやすいような色)で下書き線を描き起こしていく。ここでは少し詳しく描いていきます。顔のラインや、洋服の装飾、髪の毛の細かい線など。
5.その後、水だけ含ませた筆で、なぞっていくと水色のチャコペーパーの線は消えます。
これで普段通りの制作ができます。いつもより線が少ないので、色も塗りやすくなっています。
チャコペーパーで写してみてよかったこと
このような方法で丁寧に下絵を写す習慣がなかった私にとっては、この作業はとても新鮮です。実際にやってみて、いくつかいいなと思ったところがありました。
①ノートに描いたラフ画を直接紙に写せる
よくアイディアラフをノートに走り書きするのですが、リラックスした気持ちでザクザクペンを走らせるせいか、細部は雑でも勢いがあって良いなと思うことがあります。それを本番の紙に描き直すとどうもおとなしくなってしまいます。
ノートの落書きを拡大コピーして、水彩紙にそのまま写したら、イメージ通りのバランスになってとても良かったです。
ノートを拡大コピーしました、ラフを描く手間も省けた↓
②拡大縮小、回転、位置の移動が簡単
一発で描くのとは違って、ラフを拡大縮小コピーしたりすることもできますし、位置もちょうどいい場所に調整できます。特に大きい画面に、人物を配置するときは、場所のバランスがとても難しいので、じっくり調整できるのはいいなと改めて思いました。
回転したり、場所をずらしたり、微調整ができるのはとても便利!
またこちらの作品では人物の場所はすごく難しくて、上の方にいるのと下の方にいるのでは印象が全く違うので、色々試行錯誤しました。しかも最終的にちょっと向きも回転させて、勢いを感じるようにしました。
苦手な顔の向きだったら、左右反転してもいいですしね。
③下絵が残っているので、何度かチャレンジできる
ラフや下絵が残っているので、失敗しても何度かやり直せるのも良いですね。同じ下絵を描き直すのは手間なのですが、ラフが残っているので、やり直ししよう!と思えましたね。写すだけなら楽です。表情や髪の毛の流れなど細部は違う感じになりますが、でもやり直しが効くのは思い切って塗れていいなと🙏
いつもと比べるとびっくりするほど線画の線が少なくて整理されています。今までの下書きの中で一番きれいにできたかも。塗るのも楽でした!!
考察
と、ここまで描いて、転写するのはメリットしかないという感じなのですが。
やっぱり紙に下書きを直接描くのも好きで。なんでそこにこだわってしまうか、というも考えみました。
やっぱり、枯葉は何度も同じ絵を描くのが苦手です。一番最初に描いたものが「一番いいな」と思うことが多いです。たとえ、何かで写しても表情も髪の毛の流れも同じようなものを描くのは難しくて、一番最初に描いたラフの表情とは少し違うものになってしまいます。もっと良くなる場合もあるのですが、「やっぱり最初の方が良かったじゃん!」となることが多いんですね。
同じ絵を描くの苦手!
そこには「自分にとっての新鮮さ」というのがポイントとしてあるみたいなんです。なので、一期一会の線を大事にしたいです。水彩画はちょっとしたミスが取り返しのつかない場合も多いので、この考え方はあまり相性がよくないような気もするのですが、それでも、自分の気持ちも優先したいと思ってます。
なので、人物の顔は転写しない、とか、どこまで許容できるかのラインも探っていきたいですね。
これからは、制作に合わせてどちらのスタイルも取り入れていきたいと思います。
ちなみにラフやアイディアスケッチからどのように制作していくかは、この記事に詳しい流れが書いてあります。私は見切り発車で制作を始めてしまうことが多いので、参考になるか分かりませんが、「こういう方法もあるんだ」という感じで読んでいただけたら嬉しいです。