第一次審査を無事通過できたので、展示の前にメイキングを公開します。
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銀座中央ギャラリーの第5回公募展
今回、銀座中央ギャラリーの第5回公募展の一次審査を通過しました。
じつは第2回に出展して以来、作品を全く出せておらず、3年ぶりの参加となりました。今回は過去最多の269作品の応募があり、その中から59作品が選ばれたとのこと。(倍率4.6倍!)かなり激戦だったようなので、通過できただけでも嬉しいです。作品はギャラリーで見てもらえますし!

大賞は、一般投票とコレクターの投票で決まる、というのも他ではあまり見かけないので、ドキドキするけど楽しみです。
前回の作品についてはこちらの記事に書いてます。
今回は、あまり公開しない作品のメイキングをお届けします。画材をたくさん使っているので、あまり参考にはならないと思うけど、作品が仕上がっていくのを一緒に追ってもらえたら嬉しいです。
テーマを決めていく
作品テーマを決めるのが、一番大事だと思ってます!(よく作品のテーマ決めも質問されます)
今回は描きたいものが決まってました。というか長いこと温めていたテーマでした。それが「パンドラの箱」
実は水彩はじめたてのころに一度チャレンジしたテーマでした。

2005年、19歳くらいかな。まだ水彩紙に出会ってなかったので、マルマンオリーブの画用紙に描いた記憶があります。サイズはF6だったと思うから、今回描く作品よりも大きいね。人物には拙い部分も多いけど、このころから透け感にこだわっていて、洋服や蝶が透けに自分の興味が投影されています。
パンドラの箱はあまりに有名ですが、一応おさらいしておくと。
ギリシャ神話の話です。パンドラは最古の人間の女性とされ、ゼウスから「絶対に開けてはいけない」と箱を与えられますが、好奇心に負けて開けてしまいます。箱の中からはありとあらゆる厄災が飛び出し、地上に広がったとされています。諸説ありますが、箱の底に希望が残ったとされています。現代でもパンドラの箱という言葉は「触れてはいけない危険なもの」の比喩として使われています。

今回は同じテーマでももう少しアプローチは変えるつもり。このパンドラの箱から飛び出すのは厄災とか病気のような人類にとっての忌まわしいものです。これをどう表現するか、が作品のメインテーマです。

どんな風に表現するかが、腕の見せ所です!

有名なテーマだから逆にむずかしいのかな…
ガラスの箱から、模様のような植物の柄が飛び出してくる、という構図に。色は禍々しいというより特別に美しい色合いにしたいな、と。イラストレーションではなく絵画なので、神話のそのままを説明するようなものではなく、少し見ている人に想像させるような余白を作りたい思っています。
下書き
いきなり直に下書きです。
水彩紙はアルシュ細目です。今回はマスキングをがっつり使うので、表面強度の高い紙を選びました。

顔はやっぱり直接描いた方が上手くいきがち。顔も一期一会なんですね。とにかく最近は顔にこだわってます。パンドラは神々からありとあらゆる贈り物を与えられた女性なので、たぶん美しい。
このあと箱から出ている植物も描き足しました。
鬼のマスキング
今回植物の部分は、絵の中で一番重要な部分なので、視覚的に特別感を出したいです。ちょうど、漆塗りの螺鈿っぽくしたいので、マスキングで白く抜いてから、後で偏光色を塗っていくつもり。
題材はギリシャ神話ですが、どこか現代の私たちにも共感できるような和を感じさせるモチーフや形を入れたいです。
普段はあまりマスキングを使わずに、塗り残すのですが、今回の細かい模様は塗り残すことは絶対にできません。


ということでマスキング!
今回使用したのはシュミンケホラダムのマスキングです。これははじめて買ったものですが、あまり粘度が高くないので、滑りがよく塗りやすかったです。筆も名村大成堂のマスキング用の筆を使用しました。
量が多かったので、手がつってしまいました。

あいたた…
人物をざっと塗る
下準備ができたら、人物をざっくり塗っていきます。
顔の塗り、体の塗り。最後は髪の毛です。特に髪の毛はマスキングを剥がした後は、塗り足しができないので、なるべく完成に近い色を最初から入れることに。

ものすごくザラザラした感じにしたいので、シュミンケホラダムの分離色を使いました。今回は上に来る植物模様がキラキラで瑞々しい雰囲気になる予定なので、髪の毛や背景は逆にザラザラして古い雰囲気が出ればと思います。
髪の毛は「髪の毛のリアルなふわふわ感やサラサラ感」を出さずに、あえて「波の模様」のようにしています。もともと髪の毛を模様っぽく塗るのは好きなのですが、ここまではっきり模様っぽくしたのは始めてかも!斜め左下に向かって広がっていくことで、「斜め右上に飛び出す植物の対比」を作っています。

顔立ちなんかは、大きく変えられないので、最初が肝心という感じがします。手も顔の近くにあって目立つので、手の表情にも気を配る。明るく楽しい物語ではないので、瞳には少し憂いが入るように。

夜空の背景を塗る
まだまだ、人物は出来上がっていませんが、あまりマスキングを長い間放置できないので、背景の暗い部分を一気に塗ります。
今回使用するのは、アクリル絵具です。この作品には背景が耐水性である必要があります。複数色を混ぜて、深い紺色にしていきます。

一気に塗っていきます。マスキングも隠れてしまって、とても不安になりますが、多分大丈夫です。

月もマスキングテープで貼っていました。全体を塗り終わったら、背景の建物(左下部分)も塗っておきます。

なんとなく全体像が見えてきた感じ。
マスキングをはがす
マスキングは何日も貼りっぱなしにできないので、剥がしていきます。剥がすときに使うのはラバークリーナー。あるいは指で剥がしていきます。


アクリル絵具で隠れてしまっているので、どこからがマスキングで覆った部分なのかがすごく分かりにくくて、苦労しました。(後になって剥がしていない部分が見つかったり…)
とりあえず、全部はがせました!

全体像はこんな感じ。ここだけは絵具を塗っていないので、ぽっかり穴が空いた感じ。
このままでもインパクトありますが、さすがに違和感もあるので、この部分に絵具を塗っていきます。

植物模様をキラキラにする
選んだ絵具はターナーの「玉虫色」何色か試して、黄色と緑を使うことにしました。それだけでは色が薄いので、複数のメタリック絵具を重ねて塗ることに。

とにかく手間がかかります。マスキングでガタガタしているところも多いので形を整えながら。


並行して顔を整える
この作業と並行して、顔を整えていきます。人物画の大事な部分はやっぱり顔です。目に光を入れ、口周りもふっくらさせました。今回マスキングで鼻の光沢を抜いてみましたが、若々しい感じになってよいですね。徐々に生命力が出てきました。


手も影を入れて、血色を整えていきます。ちなみに手は自分の手をモデルにしながら描いてます。
髪の毛もかなり色を入れたつもりですが、まだまだ足りないので、特に画面下の方を濃くしていきます。
夜空に星を入れる
背景に星を入れます。星はスパッタリングすることもありますが、今回は端正な画面にしたいので、点を丁寧に打ちながら一つずつ星を描いていきます。キラキラする部分は1箇所にしたいので、今回は白い星です。

ちなみに箱にも色が少しだけ色を入れました。

箱に色をつける
今回のテーマは「パンドラの箱」。そう、物語の中心は「箱」です。なので、箱に目がいくようにしたいし、その箱から飛び出た植物の方に視線が流れるようにしていきたいです。
なので「箱」はもう少し目立つようにする必要がありますね!
どうしたもんかと悩みます。赤などで目立つ色にするのも一つの手ですが、そこまですると目立ちすぎて絵全体の調和が崩れそう。なので、これまた写真にアイビスペイントで上書きして、シミュレーションしてみます。

うーん、こんな感じにできたらいいよね!デジタルで着彩すると適当に塗ってもすぐに発光感が出るのですが、これをアナログで再現するのは結構難しい。
とりあえずは、デザイナースカラー(ニッカー)で塗ってみることに。デザイナースカラーだったら、しっかり色が塗れますし、下に塗った中途半端な色も隠れて、しっかり発色するので、適度なインパクトを出すのにちょうどいい感じ。

結局何度も色を入れたり抜いたりしながら、調整しました。箱を目と同じグリーンにしたの、結果的によかったです。箱の内側もキラキラしている感じにしました。

洋服をグリーンに
画面を見回してみて、画面下部に重みが足りなかったので、洋服の色もしっかり塗ることに。ここもデザイナースカラーが活躍してます。箱の色とリンクさせて、グリーンにしました。

必要以上に肉体の情報はいらないので、腕より後ろはあいまいにしています。
細かい部分に手を入れ、完成!!
画面では分かりにくいですが、傾けて光を当てるとキラキラします。暗い部屋で見ると、植物だけ輝いて見えます。

スキャン画像も見て!

額装
今回も額装は新橋額縁店ファブリさんでお願いしました!
公募展は何度もあることではないので、思いきって価格の高い額に入れています(額代は全額は作品にのせてません。けっこうサービスになってしまっている🙏)
さんざん悩んだのですが、今回は、ずっと憧れていたハニカム額!「Cube キューブ」ラーソンジュールの額ですが、オーダー額になるので、今まで手が出なかったんですよね。

でもいつかこの額で額装したいなあと思っていたので。その「いつか」って「今じゃない??」と思ったので。いつかいつかって思ってもなかなか実現しないので、私はもう実現することにしちゃってます。

たぶんこの作品に合う額って他にもたくさんあって、もっとシンプルでエレガントなものでもいいかもしれないのですが、たくさん素晴らしい作品が並ぶので、その中で足を留めてもらえたらいいなと思って、額縁は個性的なものを選びました。
お客様の好みじゃなかったら、額はこちらで変更してもよいと思ってます。とても素敵なのですが、ちょっと強い額ではあるので。
展示の詳細について

投票は12日(土)までです!
私の作品は80番です。ぜひ見にきていただけたら嬉しいです!3作品投票できるのですが、どの作品がいいかな〜と会場をウロウロするのも楽しいです。選ぶ、となると途端に見る目も真剣になったりしますね。私も楽しみ。

作品販売は、初日は会場にて先着順。2日目の8日火曜日)から通販も対応してくださるそうなので、遠方の方もぜひ。日付変更からメール入れていいそうです。そこも早いもの順になるのかな〜。
私の作品の価格はHPにも載っていますが、55,000円となります。
↓こちらで全ての出品作が見れます。
https://chuogallery.com/events/2025/411/20250707koubo/index.html
会期:2025年7月7日(月)~13日(日)
開廊時間:12:00 ~ 18:00 最終日15:00迄
投票期間:7月7日(月)〜12日(土)
投票方法:3会場全ての作品をご覧の上お1人様3票まで
展示投票会場
東京都中央区銀座1丁目9-8 奥野ビル
第一会場:銀座中央ギャラリー(4階411号室)
第二会場:銀座中央ギャラリー(3階315号室)
第三会場:画廊一兎庵(2階201号室)