今回はミニ原画について!私の中ではポストカードより小さい作品がミニ原画というイメージなんですが、どうでしょうか?制作する時のコツや、額装について語ってみました。今回は作家活動をしている方に向けての話がメインになりますが、コレクターさんにも読んで欲しいです。
額についても少しだけご紹介します。
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ミニ原画の定義
明確な定義はないので、私はなんとなくですが、ポストカードより小さいサイズの原画はミニ原画というイメージを持っています。規格のサイズというのがあまりないので、売られている額のサイズもマチマチです。
小さい額かわいい!
よく知られているのはセリアのミニサイズの額。
他にもミニサイズの額というのはたくさんありまして、額屋さんや画材屋さんで高級額の端材を利用した額縁もよく売られています。多くは規格のサイズがないので、サイズバラバラです。こちらは価格はそこそこしますが、やはりデザインも素敵で作品が引き立ちます。ただ、1点ものなので、同じ額を買って連作、というのは難しいですね。
小さいなサイズの原画を販売する企画もあります!とっても楽しそう。小さいサイズだと購入する側も気軽ですよね。通販を利用した企画に向いているな、と思いました。
というわけで、10年くらい前に私が展示活動していたときにはほとんど見かけなかった「とても小さい原画」。
展示で映えるのは圧倒的に「大作」だったりしますが、実際に手にとってもらうことを考えると「小さい絵」はとっても優秀。今まで「絵のお迎えをしたことがない」という方にとっても「小さい絵」は金額もお手頃になりますし、飾る場所を確保しやすいという点でとても手に取りやすいのではないでしょうか。
ただ、制作する側には、小さい絵は思ったより手前がかかってしまったり、画面が小さすぎて自分らしさが出なかったり。メリットもあればデメリットもあると思います。
小さいから楽、ではなかった…
そんなことを踏まえて、私が今まで制作してきた小さいサイズの絵と一緒にミニ原画について考えてみたいと思います。
ミニ原画の種類
セリアのミニ額
これなしにはミニ原画を語れない。まず、セリアのミニ額をご紹介しましょう。
SNSなどで見かけたことのある方も多いのではないでしょうか?
色々探してみましたが、これはかなり小さい額です。これより小さい額は見つけられませんでした。(たまに窓が極小の額ありますが)
セリアの額の窓のサイズは56×56mm。外枠は75×75mmです。
試しに買ってみましたが、思ったよりずっとずっと小さかったです!このスペースに詳細に描かれた作品も見たことがあったので、こんなに小さいとは思いませんでした。
ちっさ!
絵柄によってはこのサイズ難しいかもしれませんね。
なんでも試してみないといけないですよね。試しもせず評価するな、実際に試したものしか紹介しない、がブログのコンセプトなので、描いてみました。
ちなみに、この額は見た感じは、そのままでもまあまあ悪くないです。木のフレームがナチュラルな感じだし、表面もつるっとしているので、100円の商品ですがそこまで安っぽさはありません。ですが、シンプルすぎるので、塗装したり、加工する人も多いです。塗装についてはまた記事を書きたいと思いますが、なかなか楽しかったです。
今回、私は額の塗装を先にやってしまったので、絵は額に合わせて描きました。額は100円らしさを抜くため、アンティーク風に。アクリル絵具で塗装しましたが、ターナーのアイアンペイントを使ってもいいかもしれません。
すごく小さいので、かなり細かく描かないといけない。悩みます。顔もかなり小さくしないと入りません。私の場合人物の目が小さいので、ちょっとデフォルメして目を大きめに描かないと入らない感じでした。お花や蝶、小動物くらいならこのサイズでも入るかも。
今度はひよこちゃんのミニ原画を描いてみようかな…
えっ!嬉しい❤️
ミニ原画はどちらかというと「かわいい絵」の作家さんに向くかもしれません。
後日談:プレゼント用にひよこミニ原画を制作しました↓
ATC
次にご紹介するのはATCです。Artist Trading Cardの略です。詳しくはこちら!!
ATCサイズだと2.5×3.5インチ(約64×89mm)こちらはセリアのミニ額よりも少し大きめです。ATC用のケースも売っているし、額も売ってます。
こちらも小さいです!
ATCは専用のボードが売られています。厚みがあるので、水張りの必要がなく、そのまま制作できるので描きやすいです。使われている紙も細目で滑らかなものが多いので、細かい絵も描きやすいです。
こちらも制作してみましたが、かなり小さいです。縦長に使っても横長に使ってもいいのですが、やはりあまり多くのものは入りません。私の場合、人物をデフォルメして少し顔を幼くしないと目が描けない。背景は頑張れば入りますが少しだけです。
びっくりするくらい細かく描かれる方もいるので、偉そうなことは言えませんが、細かく描くのは同じ密度の絵をもう少し大きく描くよりももっと大変でした。小さいサイズだから簡単にできるわけではないんだと思いました。
ATCはフレームも売っています。これはお手頃で、デザインもかわいいのでおすすめ!
追記(22/6月):こちらはこの記事を書いた4ヶ月後に描いたATCサイズの絵です。だいぶ書き慣れてきて構成は上達してきたと思います。小さい作品なので、色彩のコントラストを強めたり、キラキラ絵具を使ったりして小さい「宝物感」が出たらいいな、と思いながら制作しました。今回はATCボードでなく、水彩紙に描きました。
額もたまたま色違いが見つかったので、「東西」で連作にしました。
後日談:ATCサイズの作品もハガキサイズの額に入れるとかなり見栄えすることが分かりました。
2022年ATC展
豆色紙(追記、2022/6月)
最近お気に入りとなったのが豆色紙!ホルベイン主催の31日水彩マラソンで毎日、この小さい色紙をを使って絵を描いていたのですが、私はこれがとても気に入りました。
ATCを描きながら、「小さいサイズの絵、めちゃむずかしい!」と思っていたのですが、豆色紙だと…「あれ、そうでもない?」
豆色紙は76×76mmなので、面積はATCとそこまで変わらないんですよ。
豆色紙の面積:76×76=5776㎟
ATCの面積:64×89=5696㎟
この正方形という形が自分の絵には合っているのかもしれません。構図のバリエーションも豊かでした。このあたりは相性もあるので、ATCとも比べてみてもいいと思います。
しかも色紙なので、厚みもありますし、金色の縁がついていてパッとみた感じも豪華です。
これなら額装しなくてもいい感じ。このまま透明フィルムに入れて販売しました。
額縁店のミニフレーム
他にも私がよく使っている小さめの額は作品サイズ90×90mm。
こう言った額は額縁店の端材で作られていることが多いです。サイズも色々で、決まった規格はないみたいです。形も縦長と正方形、どちらも見かけます。
私は、いいなと思う額があったら先に買ってしまいます。で、額に合わせて作品制作することが多いです。
小さめサイズの額はマットを敷いてサイズ調整することも難しく(マットはあまり細いものを注文することができない、作ってくれる店もある)描いた絵のサイズに合わせて額装は難しいです。なので小さい額に合わせて制作がおすすめです。
9cmくらいあればかなりゆったり描くことができる印象。細かいですが、このサイズになるとかなり色々工夫次第で魅力的な画面が作れます。人物の表情や装飾、背景もコンパクトではありますが、入れることができます。
私が制作した絵の紹介をします。
この額はやや立体的な額で、奥の方に絵を配置することのできる面白い額でした。絵のサイズは70×70mmです。小さいながら雰囲気があります。
ミニフレームは小さいながらも、デザインが豪華なものもあり、大きめサイズの原画を横に並べても見劣りしません。
ポストカード額
小さいサイズの絵画で、一番規格として優れていると思うのがポストカードサイズの原画です。なぜならは、ポストカードサイズの額はバリエーションも多く、かつ入手しやすいからです。
もし原画を額なしで販売したい〜という方がいたら、オススメはポストカードサイズの原画です。ポストカードのサイズは100×148mmとサイズが決まっています。額はフォトフレーム仕様のものがたくさん売られています。安いものから、かなり本格的なお洒落なものまで。少しマットを挟んで大きな額に入れることもできます。
とにかく飾るときの選択肢が多いです。絵を壁がけできない(賃貸などの事情で)場合も、フォトフレームだと棚の上に飾れたりします。
入手場所も、雑貨店や写真屋さん、通販もAmazon楽天どこからでも買えます。特にラーソンジュールの額、すごく可愛いので検索してみてください。
額縁店でも端材で作った額の中でもポストカードサイズの額は種類が多くて選びやすいことが多いです。
ミニサイズの原画は、規格サイズがほとんどないことが弱点だと思っているのですが、(ATCサイズくらいかな)その点ではポストカードサイズは絵を制作する側にも購入する側にもメリットが多いサイズだと思います。
サイズも適度に大きいので、描こうと思えばわりと本格的な絵も描けます。細かい装飾も細めの筆やペンを使えばかなり描けますし、背景も描けます。そしてこのサイズになるとギリギリ全身を入れることができます。
セリアのミニ額やATCでは全身は厳しいです(入れることが不可能というより、しっかり描けないという表現が正しいかな)このサイズになってくると構図も色々選べますし、作品にバリエーションを出すことができます。
額はどこで買える?
100円ショップ
一番安く入手できるのが、100円ショップ。額といえばどんなに小さくて安くても1000円〜1500円くらいはするものなので、100円で額が買えるというのは驚き。とりあえず額装してみたいという人にもとても気軽なので導入に。
ダイソーでもキャンドゥでもセリアでもフレームは売っています。
が、100均の額は正直なところ安っぽいです。ノリがはみでていたり、歪んでいたり。アクリル板ではなく透明PPシートが挟まっていることが多いのですが、透明PPシートは透明度が低く、作品の色がいまひとつに見えます。最初から傷だらけのこともありますし、時間が経つと黄変したりもするそうです。
とはいえ、100円はすごいです!
安くてびっくり!
そのままではちょっと、という場合は、買ってきたフレームを塗装するという手もあります。
額屋さんのミニフレーム
額屋さんのミニフレームは、100円ショップのものに比べるとかなり高価にはなります。小さいのに1000円〜2000円くらいします。が、ほとんどは高価な普通サイズの額の端材で作られているものなので、作りもしっかりしているし、額のデザインもやっぱり素敵です。
なので、額屋さんのミニフレームで気に入ったものがあったら、私は即決で購入します。ミニフレームは基本的に1点もの。買い逃すと基本的には同じ額には出会えません(買っておけばよかったな〜😭と後悔することも多いです)
どんな作品を入れるかは、あとで考えます。販売価格は、もちろん額の価格を上乗せします。
小さい絵でも額がしっかりしていると見栄えがします、本当に。
なので、サイズが小さくても「これは」というものは額屋さんのミニフレームを利用してみると良いと思います。
どの額屋さんなら売っている?
額屋さんであれば、どこでもミニフレームは扱っている印象でした!
都内の情報で申し訳ないですが、オーダーのみの額専門店にミニフレームはありませんでしたが、ほとんどの額屋さんで売っていました。新宿世界堂、神保町の文房堂、お茶の水のトゥールズ、レモン画翠にはありました。
ちなみにサトウ画材さんはミニ額の専門店です。行ってみたらレポします。
どのくらい小さくても大丈夫か?
どのくらいのサイズまで、小さくしても自分の描きたいものをおさめられるか?
もちろんこれは人によって違うと思います。私は「絵柄とサイズの相性」は絶対にあると思ってます。なので、どのサイズが自分の絵を一番よく見せてくれるんだろう?ということは自分の中で納得する必要があると思いました。
これは意外と大事なことかも?
自分にとっての基本のサイズ
枯葉の場合、若い頃から自分の基本のサイズはF4とF6サイズでした。描きたいものを自然に描いていくとこのサイズに落ち着くのです。少し凝ったものを描くときはF6です。全身入れるとF4ではおさまらないことが多いからです。
で、展示活動がメインだったので、「どうしても必要!」と思っていたのは、どちらかというともっと大きめサイズの作品でした。水彩や色鉛筆というと、小品のイメージが強いので、F8〜F10(四つ切りや半切サイズ)の作品を額装してドドーンと飾るとそれだけで足を留めてくれる方が多かったのです。自分としても大きなサイズの作品は自分の世界観を好きなだけ展開することができ、一番本領ができるサイズでした。
とにかく思いっきり描ける。
大きい絵も迫力があるね
なので、特に若い頃は、大きな絵には興味があったのですが、小さな絵には興味が沸かなかったというのも事実。
ミニ原画のメリット
ですが、やっぱり実際に手にとってもらえるサイズとなると…やはり小さい作品の方が気軽でいいという面もあります。大きな作品は見栄えはしても、その作品をそのままお求めいただくのはとても難しいこと(複製にして販売するという手もあるのですが…)
そして周りの絵描きさんをざっと見回しても、とにかく作品が小さい!なので、ここ1年位はとても小さな作品にも挑戦するようになりました。
ただ小さい作品になると自分の描きたいもの(モチーフ、題材、背景)などが描けるスペースそのものが足りません。なので、どうしても小さいサイズで描けるものは限られてきます。
そんな中でもどこまで小さくしても大丈夫か?
「どのサイズまでなら、自分の世界観を保てるか?」
「どのサイズまでなら、描きたいものを描けるか?」
「どのサイズまでなら自分らしさを表現できるか?」
そういうことを自分なりに知っておくのは悪くないかも、と思います。
私は色々描いてみた結果、8cm×8cmくらいのサイズが、自分の描きたいものを描ける最低のサイズ、という結論に至りました。
それ以下のサイズで手抜きしているという意味ではないんです。小さいサイズでも決してクオリティを下げることはありませんが、むしろ小さいサイズの場合は小さいサイズに自分の絵柄を合わせる、とう努力が必要でした。
追記:2022年6月 最近の話ではありますが、あまりにもたくさんの豆色紙の絵を一気に描きあげたことで、また新たな世界を開きつつあります。小さい画面でも、色々なものを描けるようになってきました。
小さい作品だからこそ描けるものもある
小さい作品をたくさん描くうちに、「小さいサイズだからこそ描けるテーマもある」ということを実感しはじめています。これはあくまで枯葉の考え方なので、ご参考までに。
大作で表現できるのは、どちらかというと「ストーリー、空気、世界観」です。それは背景をたっぷり描けるということが関係しています。大作は世界観を前面に押し出した作品が向いていると思います。
大きい作品も面白そう…
小さいサイズは人物を接写したような構図が増えるので、人物(特に顔)に焦点を当てた作品が多くなります。そのせいか細かい感情の表現みたいなものが増えてきます。これはこれで新鮮で、新しい世界を開いているような感じがします。
これは「願いごと」という作品です。作品の大きさはわずかに8cm四方。副題には「誰かの幸せを願う幸せ」とつけるつもりでした。ここまで人物の表情や感情に焦点をあてた作品は初めてだったのですが、「これは小さい作品ならでは」だと思いました。
大きな紙の上では、情感的すぎるテーマは重苦しくあまり好きではないのですが…
小さな作品なら…!
幸福の王子も大きな紙に描きたいと思ったことはなかったんです。好きなお話だけど、ちょっとテーマが重たい。でも小さい画面なら!「このサイズだとちょうどよかったんだな!」と妙に納得しました。
今までうまくいかなかった作品を思い出して、「紙が大きすぎたかも?」と思ったものもあったので、小さい画面で再チャレンジしようと思ってます。
なので、サイズによって描けるものは変わってくることが分かりました。
大きいサイズよりも小さいサイズの方が映えるテーマもあるかも?と思ったので、自分なりに考えていきたいなと思いました。
小さいサイズもかわいい!
サイズによって向いているテーマも違うかもね!
色々描いていきたいです。
作家として考えること
アナログ画では絵のサイズはとても大切です。
展示のスペース、絵の価格、描けるテーマ、サイズから受ける印象などなど、色々な要素が関わってきます。
制作する側からすると、気力・体力・時間によって描ける絵のサイズも色々だと思います。
活動当初(結構前、15年くらい前)は小さなミニ原画というものを展示や販売のために用意するという文化がなかったように記憶しています。小さければ、価格も手に取りやすい価格になるので、「なるほどなあ」と思いました。特に活動が軌道に乗る前には、積極的に利用した方がいいと思います。
ただ、やっぱり小さいサイズに描けるものにはどうしても限度があるので、どこまで作品を小型化するか?は考えておいた方がいいかもですね。小作品が得意な人もいれば、あまり小さいと自分らしさがなくなってしまうという人もいると思います。
ゆくゆくは大きめの作品にシフトしていくのが理想かなと思います。
1番の代表作はどれですか?と聞かれたら、ある程度のサイズの作品になる作家さんが多いと思います。作家として成長していくためにはある程度の作品を、ある程度の時間と手間をかけて描いていく、こういったことも大切なことと思います。時間は限られていますから。
私は、しばらくはミニ原画も描くけれど、ある程度のサイズの代表作と呼べるような作品も増やしていきたいと思います。
販売だけをメインに考えている方は、ミニ原画だけ制作していくのも一つの方法です(そういう方法を取る作家さんもいます)やはりミニ原画は手に取ってもらいやすいので、企画や展示のチャンスも多いです。その場合は、時間をかけずに、よく売れる作品を分析して、手際良く制作していく姿勢も大切だと思います。ミニ原画は価格が安い分、同じ密度の絵を4倍くらいのサイズに描いた方が、時間あたりの収入が多くなることも多いです。時間がかかってしまうなら大きな紙に描いた方がいいことも。手間のかかるものを安売りはおすすめしません(絶対に長続きしない)
多くの作家さんは「手間をかける大きめサイズの作品」と「お迎えしてもらいやすいミニ原画」をバランスよく制作していくのが、長続きしそうだと思いました。
そのあたりは作家さんによって何を目指すかが違うので、自分でどういう方向に進みたいのかよく考えてみることが必要かもしれませんね。
販売しないなら、F4くらいがのびのび描けるかも♪
ひよこちゃんの言う通り、絵を販売しないなら、F3~F4くらいがのびのび描けるのではないかと思います。小さな紙だと絵具の技法の練習もしにくいですしね。
今度は大きなサイズの絵を描く記事も書いてみたいと思います。
熱く語ってしまいましたが、どなたかの参考になれば嬉しいです。
ここ最近は小さい作品をたくさん描いたので、だいぶ慣れてきたということもあり、「小さい作品ならでは」の魅力をさらに感じています。
小さい作品がたくさん集まると、それはそれで圧巻です。大きい作品1枚よりも、迫力があるかもしれません。色々バランスを見ながら制作していきたいと思っています。