以前にも書いた内容ではありますが、透明水彩のパレット洗うか洗わないか?質問があったため、私が最近思っていることをまとめようと思います。
Table of Contents
透明水彩のパレットは洗った方がいい?
結論からお話しすると、透明水彩のパレットは洗う必要ありません!
が、長時間放置もあまりよくないので…
その辺りを詳しくお話しようと思います。
絵具を長くパレットに
出しとくのもよくないのかな?
透明水彩ユーザーの皆さん!透明水彩のパレットはどうしていますか?
チューブ入りの水彩絵の具でパレットに絵具を出して固める派、固形水彩なのでそのまま派、混色用のパレットを別にしてその都度洗う派、絵具をその都度出してその日のうちに洗う派、など人によっても様々かと思います。
私の場合はパレットにチューブ入りの透明水彩絵具を出して、そのまま洗わずに使っています。パレットの色の入れ替えは1年に1度だけ、年末に行っています。年末までに全ての絵具を使い切って、新しく絵具を入れ直しています。
2021年のパレット入れ替えの様子↓
2022年のパレット入れ替えの様子↓
時々絵具の配置や絵具の種類を変えたいのでそのようなスタイルに落ち着きました。全ての色を使い切らないと絵具の場所の入れ替えはできないからです。
固形パレットの場合は何も気にせず、そのまま使っています。固形水彩はもともとそのまま使うことを想定しているので、場所の入れ替えも簡単にできますし、放置しておいても問題ないです。時々混色スペースをきれいにするくらいですかね。
ただ、メーカーさんにお話を伺うとほぼ全てのメーカーさんが
「チューブ入りの絵具を出しっぱなしにして使うやり方はメーカー推奨ではない」
とおっしゃるのですね。その理由はチューブから出した絵具をそのまま放置しておくと乾燥したり、メディウムが劣化するので、絵具としての質が下がるから、ということなんですね〜。
とはいうものの、多くの透明水彩の教本では「パレットに絵具をチューブから出して、乾燥させ、固めて使う」という記述が多いんです。中には、継ぎ足し継ぎ足しで絵具を継ぎ足していてって1度も洗っていないというパレットも。結局どっちがいいの?って混乱しちゃう人もいると思うので、その辺りを考えてみたいと思います。
パレットに絵具を出して乾燥させておくメリット
メリットは簡単です。楽だからです。
やってみると分かりますが、絵を描くたびに、いちいち使う色をチューブから出すのは結構面倒です。むしろそっちが普通なのは分かっているのですが、透明水彩の絵具出しっぱなしパレットに慣れてしまうと、チューブから絵具を出しという行為自体が面倒なこともあります。後で「この色も必要だったな」と追加で絵具を絞る時は、手間に感じてしまいます。パレットを作っておけばいつでもすぐに作業が始められるのは、忙しい人にとって大きいなメリットだと感じます。
後片付けもやや、面倒です。図工の時間もパレットを洗う時間が大嫌いでした。大抵絵具はスッキリ使いきれないので、残った絵具がとてももったいなく感じたものです。そして、絵具を排水口に大量に流すのも、こんなに流して大丈夫?って思っていました。
その点、透明水彩の洗わないパレットは楽なのです。
何色も絵具を同時に使えるし、準備も後片付けも楽なのです。混色スペースも洗わずに取っておき、次回の作業に使うことができます。時々、ティッシュで絵具をふく程度。あまりゴミも無駄な絵具も発生しません。出したチューブの絵具はほとんど紙の上に絵として乗っかっていてゴミが出ません。筆を水筆にすると排水口に流す絵具はほぼゼロになります。
確かに無駄が出ない透明水彩。
エコ!
また絵具を同時に何色も使えるのもいいんです。絵の途中で、この色が合うかな、とアドリブで色彩を決めることも多いのですが、その時にも役立ちます。ちょっとこの色を隠し味にしよう、とか。1枚に使う色は5〜6色くらいですがそれでも、どの色とどの色を混ぜるかなどは、予想がつかないことを試すことができます。26色パレットなら26色を同時に使うことができるのがメリットだと思います。
パレットに絵具を出しっぱなしにするデメリット
パレットに絵具を出しっぱなしにしておくデメリット、それは…
「出しっぱなしにしておくと絵具が劣化する」
これに尽きます。
これは私が1年でパレットを入れ替えるシステムを採用しているので、はっきりと気付いてしまったのですが…
「パレットに絵具を入れたてホヤホヤの1月」と、「ちょうど1年絵具を出しっぱなしにしておいた12月」では明らかに絵具の使い心地が変わっているのです。
1月の出したての絵具は、スッと溶けやすく、発色も強いです。最高に使い心地がいいのです。
それが12月になると…まず多くの絵具がひび割れしてきます。酷い色だとボロボロになってしまいます。ボロボロと崩れた絵具を筆で取ると絵具のつぶや破片が紙にくっついて悪さすることも。あとは溶け方が悪くなってきます。筆でゴシゴシしても絵具が中々溶けません。メディウムが乾燥してしまったためだと思われます。あとはこれは衝撃なんですが、ちょっと発色が悪くなる色もあります。
なので、長時間パレットに絵具を放置するのはおすすめしないです。
絵を描くペースに合わせよう
絵画の本の先生は作家さんだったり講師もするため、とにかく絵具を消費するペースが早いんだと思います。なので、たくさん絵具を使い、しょっちゅう新しい絵具を補充するというなら、出しっぱなしによる絵具の劣化はあまり気にならないかもしれません。絵を描くペースや絵のサイズ、濃い色をたくさん使うかどうかでも、絵具の消費量は変わってきます。もしあまり絵具が減るペースが早くない、絵具をあまり使わない画風の場合は、パレットに絵具を少しずつ出す、またはこれからお話しする固形水彩の利用も考えてみてください。
かといって、時々見かけるちょびっとだけ絵具を出すのもおすすめできないです。というのはドットカードを塗る時に気づいたことですが、ちょびっとの絵具で色を濃くしっかり塗ろうと思うと結構難しいからです。
筆全体に絵具が行き渡らないので、色も薄くなりがちですし、絵具をしっかり根元まで含ませて滲みを作る技法もやりづらいです。もったいないといって出す絵具の量が少なくなりすぎるのも問題です。ある程度はしっかりパレットに絵具を出していくのがおすすめです。体感では半年過ぎたくらいから劣化し始めます。1〜4月くらいはとても気持ちよく描けますが、だんだん「???」という感じになってきます。なので半年で使い切れる量を目安にしてみたらいかがでしょうか?
色によってはもっと早く
使い切った方がいい色もあります!
あとパレットを開いたままにしておくと埃や糸くずが絵具の部分にへばりつくこともありますし、混色するときに他の絵具がついてしまったり…私は経験がないのですが、まれにカビが生えることもあるそう…
そういった意味でもず〜っとパレットを放置しておくと物理的に汚れます。ので、1年に1回とか半年に1回とか時期を決めてパレットの大掃除をするのもおすすめです。私は忘れっぽいのとマメじゃないので、1年に1回、年末と決めて大掃除をしています。そのついでに絵具の入れ替えもしています。今のところバランスよく使えている感じがしますね!
あまり描かない人には固形水彩もおすすめ
固形水彩は成分が違う?
アンケートを見たら、1週間に1度とか1ヶ月に1度くらい絵を描くという人も多かったですね。半分近くいらっしゃいました。で、特に1ヶ月に1度くらいだったら、固形水彩か、その都度絵具を出す方法がおすすめです。
固形水彩はもともと、固めた状態で使うことが前提になっている絵具なので、乾燥による劣化が少ないそうです(とはいえ、徐々に乾燥はしていきます)チューブの絵具と固形水彩と両方売っているメーカーもありますが、チューブの絵具と固形水彩では絵具の成分が違うそうです。(唯一シュミンケホラダムがチューブと固形の成分が同じ)
ホルベインアーチストパンカラー、おすすめ
特にホルベインは、チューブと固形で全くラインナップも価格帯も違っていて、固形水彩の方が高級路線です。中身の成分も違うそうです。ホルベインの固形水彩はホルベインアーチストパンカラーという名前ですが、なぜかそこまでメジャーではありません。ただ、コスパが最高で使い心地はシュミンケホラダムにも匹敵する(と私は思っている)ので、固形水彩で探している方には超おすすめしておきます。何色か買ったレビューがありますのでぜひ!
固形水彩のメリットデメリット
固形水彩の弱点は大きな筆が入りづらいこと。小さい筆であっても色が取りづらいです。少し使って凹むと掘るような感じになるので。筆は根元までしっかり色を含ませるのがコツなのですが、固形水彩だと筆先にチョンチョンとつける感じになり、どうも絵具が取りにくいです。パレットだと仕切りの前の部分で水分や絵具の量の調節ができるのですが、固形だとそれがしづらいです。
入れ替えがしやすいのはメリットです。
なので、固形水彩の絵具を箱から取り出して(カッターで出せます)通常のパレットに出すことができないかな?と思ったんですが…
できました笑
メーカーさんに怒られちゃいそうですが笑
でも大きいパレットに出した方が
筆で取りやすいんです…
そのままのせるだけでは絵具が定着せず、動いてしまうので、アラビアゴムメディウムで貼りつけています。
で、今コバルトターコイズとキナクリドンマゼンタをホルベイン固形で使ってますが。とってもいい感じです。発色は恐ろしくいいですね。やっぱり固形のせいか、溶け方はすごくいいですし、色の濃度もちょうどいいです。時間が経っても劣化しにくいのかは、1年使って検証してみたいと思います。
使うたびに絵具を出し片付けてしまう
たまにしか使わないなら…
そもそも、そこまで頻繁に絵を描かない、という場合は、「使うたびに絵具を出して、終わったら片付ける」というスタイルでも、全く問題ありません。Twitterなどで交流していると、そういうスタイルを取っている方も少なくありません。
それだと、出しっぱなしになってしまった絵具が不衛生になったり、劣化することを心配する必要がなくなるので、かえって気が楽かもしれません。
たしかにその方が絵具の色を濃く使えるということもあるので、固めた絵具から濃い色がうまくつくれない、という悩みがあったりしたら、絵具を固めてから使うのではなく、チューブから絵具を直接出して使ってみてください。
固めて使うのに向いていない絵具もある?
これも色々な絵具を試して、分かったことですが、固めて使うのに向いていない絵具というのもあります。そもそも顔料の性質が、1度固まると水に溶けにくいという感じのものです。
具体的には
ビリジャン(ビリジャンヒューではありません)
テールベルト(グリーンアースという名前のことも)
ポッターズピンク
コバルトバイオレット
(コバルトブルー)
(セルリアンブルー)
コバルトブルーとセルリアンブルーに関しては、溶けるには溶けるのですが、フタロブルーやウルトラマリンなど他のブルーと比べて、溶けにくく色も薄くなりがちなので、チューブから出した色をそのまま使った方がいいです。(知らずにパレットに出しっぱなしにしていて、使いづらい色!と思ってました💦)
粒子が荒くて、色が薄い絵具が多いね
そうなんです!
そういう絵具はチューブから出したてがおすすめ
ビリジャン、テールベルト、ポッターズピンク、コバルトバイオレットはもともと発色も弱く、固めてしまうとかなり溶けにくいです。チューブから出したてを使うのをおすすめします。
あとは分離色系の絵具も、固めずにチューブからそのままの色を使った方が、よく分離するような気がしています。
終わりに
というわけで、透明水彩のパレット、洗わない??問題について考えてみました。
絵具を出しっぱなしにしておくパレットにはメリットがいっぱいある
長時間放置すると絵具が劣化する
というところだと思います。メーカーさんの立場としては「絵具が劣化して使い心地が悪くなった」ことに保証が持てないので、「チューブ絵具をパレットに出して固めるやり方はメーカー推奨ではない」という言い方になるのだと思います。
個人的にはチューブ入りの絵具を大きなパレットに出しっぱなしにすることには、他に替えがたいメリットもあると感じていて、多くの作家さんが恩恵を受けていると思います。ただ、確かに使うたびに絵具を出す方がいい場合もあるので(例えば面積の大きい部分を濃い色で塗る、など)ケースによって使い分ければいいかな、と。
日本は夏場高温多湿になりやすいので、時々パレットのお掃除は必要と思ってます。
ではまた〜〜!