今回は基本7色の中にも入っているフタログリーンについて、詳しくお話しします。
基本の7色についてはこの記事を参考にしてください↓
Table of Contents
一体何に使う?謎の色、フタログリーン
よく透明水彩セットに入っている鮮やかなグリーン。メーカーによって名前はまちまちです。
ホルベインでは、フタログリーンではなく「ビリジャンヒュー」という色で売られています。
ウィンザー&ニュートンでは「ウィンザーグリーン」です。
シュミンケホラダムとターナーでは「フタログリーン」です。
名前がちがうから、ややこしいね💧
ややこしいですが、このサイトでは「フタログリーン」で統一させて頂いてます。後で表にまとめているので確認してください。
どんな色かというと、ものすごく鮮やかで人工的なグリーンです。葉っぱの色とかではないです、間違いなく。
これ、一体何に使うんだろう?
数年前まで、私はこの色の使い方が全く分からず、パレットの中で減らない色No.1でした。基本色らしいので一応入れてはいるけど…
植物の色としては青すぎるし、鮮やかすぎて、むしろ毒々しい。
何しろ、サップグリーンやフーカスグリーンがとても自然な色味で、便利なので、あまりこの色の出番はない。そう思っていたんです。
ところが最近になってやっと使い方が分かってきました。使い方が分かるととても、優秀な色だということが分かり、とても重宝しています。
使い方がわかると、とても優秀な色だということが分かります!
ということで、「え?ビリジャンヒュー?いらなくない?」と思っている方、ぜひ読んでください。私だけではないはず。
最初にまず、分類からしてみます。
メーカーごとに色名も違うので、整理しないとややこしいのです。
フタログリーン PG7
こちらはメーカーによって、色が違ってややこしいです。顔料はPG7です。
ホルベイン | ビリジャンヒュー |
ウィンザー&ニュートン | ウィンザーグリーン(ブルーシェード) |
シュミンケホラダム | フタログリーン |
ターナー | フタログリーン(ブルーシェード) |
マイメリ | キュープリクグリーンディープ |
クサカベ | ビリジャン(ネオ) |
これらは顔料PG7という顔料の絵具で、ほぼ同じ色です。性質も一緒です。どれか一つで充分◎です。
いかにメーカーが思い思いの名前をつけているかが分かりますね!色名を統一して(笑)
この色は基本7色の中に入れています。初心者必見 透明水彩のおすすめ7色
この色は青みがかった鮮やかなグリーンです。透明感があり、粒子が細かく滑らかです。発色も強く、少しの量で、濃く塗り広げることができます。そして、混色のときに分離しづらく、きれいに混ぜることができます。
サップグリーンやオリーブグリーンなど、市販で売られている便利系のグリーンは、ほとんどが、このPG7か次にお話しするPG36と黄色の顔料を混ぜて作られています。
そして、とてもややこしいので、この色はフタログリーン(ブルーシェード)と呼ぶことにします。
双子の色 PG36
PG36の顔料についても説明しますね。
この顔料はとてもPG7と似ている色です。
本当に双子の兄弟といってもいいくらい。
PG36は、フタログリーン(PG7)と比べると、少しだけ黄色よりのグリーンです。粒子が細かく、透明感があり、鮮やかすぎて手に余るところもそっくりです。
どちらもフタロシアニン顔料なので、似たような顔料なのだと思います。
この色もメーカーによって色がちがうので、ややこしいです。メーカー別に整理しておきますね。
ホルベイン | バンブーグリーン |
ウィンザー&ニュートン | ウィンザーグリーン(イエローシェード) |
シュミンケホラダム | ヘリオグリーン(イエローシェード) |
ターナー | フタログリーン(イエローシェード) |
マイメリ | キュープリクグリーンライト |
セヌリエ | セヌリエグリーン |
全部違う名前ですが、同じ顔料です。うっかりすると、同じ色を違うメーカーで買ってしまうことがあるので要注意です。
PG36は、PG7のフタログリーン(ブルーシェード)とほぼ同じような性質の色なので、PG7の代わりに使うことができます。
PG36は、フタログリーン(イエローシェード)と呼ぶことにします。
PG7とPG36は本当に似ているので、どちらか一色あれば十分です。
分かりにくいので表にまとめた
メーカー | PG7 | PG36 |
ホルベイン | ビリジャンヒュー | バンブーグリーン |
ウィンザー&ニュートン | ウィンザーグリーン ブルーシェード | ウィンザーグリーン イエローシェード |
シュミンケホラダム | フタログリーン | ヘリオグリーン |
ターナー | フタログリーン ブルーシェード | フタログリーン イエローシェード |
マイメリ | キュープリクグリーン ディープ | キュープリクグリーン ライト |
クサカベ | ビリジャン(ネオ) | |
セヌリエ | セヌリエグリーン |
フタログリーンの使い方
そのままNG、必ず混色して使う
では、PG7とPG36をまとめてフタログリーンと呼ぶことにします。
フタログリーンの使い方は、必ず混色して使います。
そのままではあまり使い道がありません。(いや、あるのかもしれませんが…かなり限定的)
何色と混色するか、ということですが、主に次のパターンが考えられます↓
- 黄色系と混色→黄緑を作る
- 茶色系と混色→渋い緑を作る
- 青系と混色→青緑を作る
- グレーと混色→緑がかったグレーを作る
- 赤、紫と混色→黒、グレーを作る
一つ一つ説明していくととても長くなるので、「色々なグリーンを作る」という点に焦点をあてて、お話したいと思います。つまり①、②、③です!
①黄色系と混色
②茶色系と混色
③青系と混色
①黄色系との混色
黄色はいろいろあるので、手持ちのイエロー、全部試してみました。フタログリーンと黄色を混ぜると黄緑になりますが、どの黄色を使うかで、鮮やかさや透明感が変わります。
フタログリーン×レモンイエロー
レモンイエロー 澄んだ黄色です
最も鮮やかな黄緑を作ることができる組み合わせ。実際はもっと鮮やかです。とにかく彩度を落としたくない、明るくしたい時におすすめ。
フタログリーン×カドミウムイエロー
カドミウムイエロー…不透明で発色のよいイエロー
カドミウムイエローが不透明なので、黄緑は半不透明。しっかりした色になります。自然な色合いで使いやすい組み合わせ。
フタログリーン×イエローオーカー
イエローオーカー 黄土色、黄色の代わりに使ってみよう
程よい渋さのグリーンになります。フタログリーンの青っぽさが適度に残っています。竹林のような色です。かなりお気に入り。よく使う組み合わせ。
フタログリーン×カドミウムオレンジライト(シュミンケ)
カドミウムオレンジライト みかんのような黄色がかったオレンジ
鮮やかな黄色寄りのオレンジを混色してみました。もちろんシュミンケの絵具じゃなくても、似たような色であれば同じような混色できます。フッカーズグリーンのような落ち着いたグリーンの完成。植物や風景を描くのにとても役立ちそう!おすすめ。
フタログリーン×ブリリアントオレンジ(ホルベイン )
ブリリアントオレンジ…鮮やかなオレンジ
ブリリアントオレンジは鮮やかなオレンジです。フタログリーンと混ぜてみると、オリーブ系のグリーンになります。かなり渋いですが、洗練された配色できれいです。!
②茶色系との混色
茶色系も色々あります。赤茶色、普通の茶色、焦げ茶色などが、ありますので、試してみたいと思います。フタログリーンと茶色を混ぜてできるのは、深いオリーブグリーンです。かなり使えます。暗いけれど、温かみのある色なので、森や木など自然の表現に使うことができます。葉の影色など。
フタログリーン×バーントアンバー
バーントアンバー…定番の茶色です。便利な色です!
レパートリーに入れておきたい混色。深い森のような色になります。少し暗くしたいときは、とにかくバーントアンバーを混ぜる!と覚えておこう。
フタログリーン×ベネチアンレッド
ベネチアンレッド(ライトレッドでも可)
赤茶色と混色すると、補色の混色に近づくのでかなり渋さが増します。
ベネチアンレッドは、赤みが強く、発色が強いので、混ぜると独特の暗いグリーンに。使えそうな組み合わせなので要チェック
フタログリーン×セピア
セピア…かなり暗いブラウン
フタログリーンと焦げ茶色の組み合わせ。かなり暗いグリーンになります。ダークグリーンを作りたいときは、黒を混ぜるのではなく、セピアを混ぜる方が自然な色に。
③青系との混色
青とフタログリーンを混ぜると、ブルーグリーンができます。ブルーグリーンは市販でも美しい色がたくさん売られているので、作る必然性が感じられないかもしれません。でも混色で作るブルーグリーン、すっごくきれいなんです!!全世界にこの感動を広めたい(笑)
フタログリーン×プルシャンブルー
プルシャンブルー…着色力の強い深みのあるブルー
プルシャンブルーは着色力が強く、濃厚な色味なので、混色した色もその影響を受けます。強い色味のブルーグリーンになります。深みがあってきれいです。
フタログリーン×ウルトラマリン
ウルトラマリンブルー…鮮やかな赤よりのブルー。粒子が荒い。
ウルトラマリンは粒子が荒いので、少し分離しやすいです。少しまだらになってしまうけど、これはこれで味があります。くすんだ感じになります。
フタログリーン×ウルトラマリンバイオレット(シュミンケ)
誰にも教えたくないほど気に入っている混色。程よい彩度で、とても美しいブルーのグラデーション。。気に入っています。
フタログリーン×デルフトブルー(シュミンケ)
ちょっと!美しくないですか。色は渋くなりますが、それがいいのです!ホルベインではロイヤルブルー、W&Nではインダンスレンブルーですね。同じ顔料なので、同じような混色ができるはずです。
フタログリーンは意外と有能
いかがでしたか。
フタログリーンが、混色ではとても優秀な色である、ということが伝わったでしょうか!
フタログリーンは、そのままではあまり使う場面がなく、長い間、パレットの中で余りがちな色でした。でも、最近やっと使い方が分かってきたのです。
特に便利なのは、①黄緑を作る、②暗いグリーンを作る、③ブルーグリーンを作る、という使い方だと思います。今お話しした混色です。特にくすんだ青との混色は、意外ですがとても美しいです。水の表現や人物の表現にも使うことができます。
もちろん、使いやすい色に調整されたサップグリーンやフッカーズグリーンも便利です。(もちろん私も便利に使っています^^)ただこれらの便利系のグリーンも、フタログリーンと黄色を混ぜて作られている色だったりします。
なので、フタログリーンの混色が使いこなせるようになると、大抵のグリーンは自作することができます。
フタログリーンで作れるグリーンの色の幅はすさまじいです。混ぜるだけなので全く難しいことはありません。混色で作るグリーンのいいところは、色の配合や水の量で色の変化を持たせられるところです。グリーンは単色で塗ってしまうと単調になりやすいのです。
フタログリーンを持っていたら、ぜひ試してみてください。
緑を作る混色の記事はこちらもおすすめ↓
基本だけど、意外と使いこなせてないかも?↓
鮮やかなフタログリーンの使い方が分かりました。渋いグリーンと混ぜてもいいかも。
それも素敵な使い方だと思います!
[…] 使用されているPG7については、枯葉さんが詳しくブログに書かれています^^ k-garden.art […]
こんにちは、枯葉さん。
自分の色彩の幅を広げたくて悩んでいた所、枯葉さんのブログに沢山混色のことが書かれていたなと思い出し、1つ1つ読ませて頂きました。
実際に混色した色を紙に広げてみて、単一の絵の具では表現しきれない、絶妙な色が沢山出来上がって凄い!と思いました。
フタログリーンもこれまであまり出番が無かったのですが、混色してみるとどれも綺麗でこれから出番が増えそうです♪
これからも枯葉さんのブログを見て勉強していきたいと思います!
ありがとうございました。
こんにちは。
色彩の幅を広げるのにお役に立てたようで嬉しいです!
もちろん単一の絵具でも、優秀な色はたくさんありますが、混色が使いこなせると
幅がひろがり、絵の色彩が豊かになると思います。
フタログリーンは混色でめちゃめちゃ活躍する色ですので、ぜひ活用していただきたいです!
色々な追求の結果を記事にしていますので、ぜひ参考にしていただければと思います^^