今回は水彩画の下書きを直接描いていく方法をご紹介します。たぶん一番多いであろう直描き。意外と難しいのでコツと対策をまとめてみました。
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水彩画の下書きを直接描く方法について
水彩画の下書きの方法は大きく分けると3つあります。
①水彩紙に直接描く
②チャコペーパーを使って写す
③トレース台を使って写す
今回は水彩紙に直接下書きを描いていく方法についてご紹介します。私は②も③も使いますがいまだに①の水彩紙に直接描く方法を一番多く採っています。また風景や静物などの水彩画の技法本をみると、多くが下書きを水彩紙に直接描いています。この業界ではこれが普通のようにも言われていますが…
でもさ
意外ときれいに下書き描くのむずかしいよね?
簡単そうで、意外と罠が多い直描き!
ただ、一発書きになるため、上手くいかないこともありますし、混線して塗りが混乱してしまうこともあります。また綺麗な下書きを描くこと自体もいまだに難しいです。なので意外と万人向けとは言えません。
ただ、直接水彩紙に下書きを描くメリットもあると感じているので、今回はそれをご紹介してみたいと思います。
水彩画の線画に必要なこと
水彩画の線画には必要な要素があります。
①無駄のない線画
それはすっきりした線画に整えておくことです。透明水彩はその名の通り透明なので、下書きの線が隠れずにそのまま、完成まで見えます。なので、よくも悪くも線画のクオリティが仕上がりのクオリティにダイレクトに影響を与えます。
直接下書きを描こうとすると、ついついたくさん線を描いてしまうことが多いです。たくさん下書き線が描いてあると、上から色を塗ってもきれいに見えないことが多いです。鉛筆の線で紙が汚れてしまうこともあります。


なので線はすっきり、必要な線だけ、というのが大事なポイントです。
②なるべく消しゴムをかけたくない
もう一つのポイントは、なるべく水彩紙を傷めないように下書きを描くということです。不必要な線を消すために、消しゴムでゴシゴシ擦ると水彩紙が傷んでしまうことがあります。
表面の強い水彩紙なら、多少は大丈夫ですが、中には表面が繊細な水彩紙もあります。消しゴムをかけると、表面がボロボロになり水彩をのせた時にきれいににじまないことも…
なかなか悩ましいですね!なのでラフや下書きを別の紙に描いて、それをトレース台やチャコペーパーで写す人が多いはずです。最近はデジタルで下書きを作ったり、そのまま水彩紙に印刷するパターンも多いようです。
水彩紙に直接下書きを描くメリット
では、水彩紙に直接下書きをしていくメリットを考えてみたいと思います。
メリット
・早い(手軽)下書きから着彩までのスピードが速い。とにかく手軽。イメージしてから制作までのスピードが早く新鮮さを保てる。スピードが速いというのは一番のメリットかもしれません。
・線に勢いがある。直接描いているので、線に新鮮さと勢いがあります。
デメリット
・スキルが必要。キレイな線を一発で決めるのは慣れと経験が必要。それがないとかえって時間がかかることも。
・線が迷うと紙が汚くなる。何度も描き直したり、線を加えていくと、紙が汚れてしまう。
・不明瞭な線ができがち、着彩で迷うことも(着彩の時間がかかる)
・複雑な構成がしにくい。一発で描けるものの複雑さには限度がある。
・少し右上がりになってしまったり、左上りになってしまったり、バランスも難しいです
直描きする時にしている工夫、コツ
こうしてみるとデメリットも多い感じがしますね。このデメリットを克服するために色々な工夫をしています。
大きめの水彩紙を使って、余白を作る
今でも8割くらいの作品が直書きなのですが、一番難しいのが人物など大事な要素をバランスよく画面に収めるところです。
描いた後に、人物の位置のバランスを変えたくなることがあります。少し右に寄せたくなったり、上の方に空間が欲しくなったり。最初から一番いい位置に描けないこともあります。

そこで編み出した工夫が、仕上がりのサイズよりも大きめの水彩紙に描くということ。以前は水彩紙にぴちぴちに端っこまで描いていたのですが、あえて大きめの水彩紙を区切って小さい絵を描くようにしました。


SM(サムホール)サイズに描くならF3サイズの水彩紙に、F4の作品にはF6サイズの水彩紙を使います。ハガキサイズの作品も、ハガキサイズの紙には描きません。SMサイズの紙を横にして、2つ作品を並べます。上下左右2cmくらいは余白がある状態です。そうすると少し作品をずらしたいな、と思った時に融通がきくのです。


ちなみに四方に空白があると、額装の時にも良いです。水彩紙の端っこまで描いてしまうと、端っこ5mmはマットに重ねる部分として必要なので、絵の端がマットに隠れてしまいます。ところが空白があると絵の端っこギリギリまで見せることができます。この意味からも少し大きめの紙を使うようにしています。
余白分は少し切り落とすこともあるので、もったいない気もしますが、絵具の混色のお試しに使ったり、小さなイラストを描くこともできるので、結果として無駄にはなりません。

このゆとりを持つ、というのが直書きには大切だったりします。
少ない線で描くように心がける
かつては下書き線が多くなってしまうタイプでした。どうしても、水彩画の下書き線がキレイに描けるようになりたくて試行錯誤していました。振り返ってみると、こればかりは、練習や経験が必要だと感じるのですが、それでも普段からの一工夫と意識で変わることがあります。


↑左は2008年線が多かったころ、右は2024年戦がすっきりしてきた線画です。
私がよくしていたのは、模写やクロッキーを、線だけで描く練習でした。なるべく一本の線で描くように意識していると、少しずつ線の数は減っていきます。よく対象を観察することも大事でした。観察力がつくと、脳の中で正確な形が認識できるようになるため、より正確な線を1回で描けるようになります。人物のクロッキーや模写を頑張っていた時期があったのですが、その練習を境に線の数はかなり減ったように感じます。
ここで意識していたのは、「上手く描けるようになる練習」というより、「きれいな線を選んで描く練習」をすることです。


また練習に使う画材も大切だと感じています。
色々試した中で、太めのペンを使って練習をするのが一番効果がありました。鉛筆や色鉛筆は力の入れ加減で、線に強弱がつけられます。そのため弱い力加減で何度も線を描くと、なんだかいい感じに見えてしまうことが多いです。私はある時から、ノートの落書きや絵のアイディアを鉛筆ではなく、サインペンでするようにしました。模写やクロッキーもペンでするようにしたら、とても難しい!
それでも気にせずペン落書きを続けていたら、少しずつ線が減って、勢いのある一本線が最初から描けるようになってきました。
これはのちのち、線画の一発書きをスムーズにするために役に立ったと思います。
※もちろんラフを描いているときは、どういう構図にするか迷っているので線をたくさん描いてしまいますが、いざ下書きをすると決めたらなるべく線を少なく描くように心がけています。
直接下書きを描くときに使う画材
直接水彩紙に下書きを描くときに使う画材についても、ときどき質問を頂きます。
使っているのはほとんど色鉛筆。焦茶色や赤茶色、くすみピンクなど、褐色系の色鉛筆を使うことが多いです。色鉛筆は鉛筆削りで先を細くして使います。場合によっては、場所ごとに色を変えることもあります。

メーカーもこだわりはありませんが、ファーバーカステルやカランダッシュ・パブロ、三菱の硬質880など硬めの色鉛筆を使うことが多いです。
線画にはカランダッシュのBrownが描きやすいかな
特に色が淡くなるところはあまり濃い色の線がないほうがよいこともあるので、淡い色を使ったりします。結構線の色で雰囲気が変わりますので色々試すのがおすすめです。
まれにペンでなぞることもあります。ただ頻度は低めです。体感として、ペンでしっかりなぞった線画は塗りの時間を節約できます。線をペンで描くのと、色鉛筆で描くのでは、見た目や雰囲気は変わり、どちらにも良さがあります。

線画にどんな画材を使うのかはこちらの記事で詳しくまとめています。
なぜ直書きにこだわるのか?
今ではチャコペーパーやトレース台も徐々に活用するようになっていますが、やっぱり紙に下書きを直接描くのも好きで。なんでそこにこだわってしまうか、ということも考えてみました。
①新鮮な気持ちを保ちたい
この辺りは気質もあると思うのですが、自分の場合、一番最初に描いた線が「一番いいな」と思うことが多いです。たとえ、何かで写しても表情も髪の毛の流れも同じようなものを描くのは難しくて、一番最初に描いたラフの表情とは少し違うものになってしまいます。シンプルな線画の場合、塗ることでより良くなる場合もあるのですが、線に関しては「やっぱり最初の方が良かった!」となることが多いです。


そこには「自分にとっての新鮮さ」というのがポイントとしてあるみたいなんです。
なので、人物の顔は転写しないでその都度描くようにする、など、どこまで許容できるかのラインも探っていきたいですね。
②直接描いた線の方が柔らかい
下書きだけでみると、やはりトレースした線はどうしても硬いです。なぞりながら柔らかい線をひいていくのは難しいことが分かりました。直書きした線の方が何倍も柔らかく、味があるように感じます。特に差が出るのがスカートや髪の毛などの曲線部分です。線が長くなると差は顕著です。
色をのせていく過程で気にならなくなる線画もありますが…


このあたりも直書きにこだわってしまう大きな理由となってます。
③気軽に作品を描き始められる
トレースをするなら、事前にラフや下書きが別に必要になります。私の場合は、しっかり計画してから描きたいこともありますが、気軽に描き始めたいこともあります。アドリブでどうなるかこの先よく分からない、描き始めてには完成の姿が全く見えていない作品。そういう作品も多く描きたく、そしていいバランスとして成立していることもあるのです。


↑描き始めはどうなるかよく分かっていない絵、でもだんだん探りながら完成します。
時にはラフや色ラフなど何も用意せずに描いていることもあります。見返してみると半分くらいはそんな作品です。上手くいかずに無駄が出てしまうこともあるのですが…


以前はそういった工程をすっ飛ばした作品制作をコンプレックスに感じることもあったのですが、それも自分の大切な個性として大事にしようと思っています。
転写をする方法も知っておきたい
ということで、直に描く方法についてまとめてみました。いかがでしょうか。ほとんど自分語りのようになってしまって、参考になるかは分かりません。こればかりは気質との相性もあるような気がしているので、他の方法も知って欲しいと思います。
転写をする方法(チャコペーパーやトレース台を使う方法もとても便利です。)水彩で描くならぜひ知っておきたいですよね。転写を利用すると、ラフを好きなだけ練ることができますし、複雑な構図のものにもチャレンジできるので、確実に表現の幅を広げることができます。
もし初期投資をしてもよいと思えるならトレース台がおすすめ!なぞりやすいです。
手軽に転写をしたいならチャコペーパー。水張りしたあとのパネルやブロック水彩紙にも転写が可能です。
どちらもおすすめなのでぜひ記事の中でチェックしてみてくださいね。
それぞれの方法を比較したハブ記事になっています。こちらも参考までに✨























