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[水彩紙レビュー]ウォーターフォードについて

今回はウォーターフォードという水彩紙についてお話したいと思います。

比較的メジャーな水彩紙なので、聞いたことがある方も多いかもしれません。

ウォーターフォードとは

ウォーターフォードとは透明水彩の本場イギリスの水彩紙です。

コットンパルプ100%の水彩紙なので、コットン紙のカテゴリにはいります。

この紙は色が2種類あります「ナチュラルホワイト(クリーム色)」と「ホワイト(白)」

どちらも使ったことがありますが、単なる色ちがいかと思ったら、使い心地が微妙に違います。

「ナチュラル」と「ホワイト」の違い

どういう違いかというと、乾くスピードです。「ナチュラルホワイト」の方が、ゆっくり乾きます。

「ホワイト」は若干ムラになりがちです。ちょっとコツがいるのです。

色は「ホワイト」の方が色が鮮やかに見えます。「ナチュラル」は落ち着いてシックに見えます。

初心者は「ナチュラル」の方が、扱いやすいのでおすすめです。

後述しますが、発色にも差があります。

ウォーターフォードの特徴


素材コットンパルプ100%
紙の色ホワイト:純白
ナチュラル:濃いめのクリーム色
発色ホワイト:鮮やか
ナチュラル:かなり落ち着いている
地の滑らかさ荒目:凹凸大きめ
中目:凹凸大きめ
細目:滑らか
にじみ大きく広がる
乾きのスピードゆっくり。焦らずじっくり作業ができる。浸透にも時間がかかる。
重ね塗り重ね塗りしやすい。しっかり定着するので重ねても下の色は溶けない。
リフティング乾いたあとは、ほとんどリフティングできない。
マスキング表面が強いので、マスキングOK
価格コットン100%で、輸入紙なのでお値段高め。
その他以前に比べると風邪をひきやすくなった。表面の荒さも長い時間をかけて変更になっている模様

ウォーターフォードの種類

私が水彩を始めた20年前は、ウォーターフォードといえば、ナチュラルの中目しかありませんでした。そのため、ウォーターフォードといえば、「ナチュラル中目」のイメージで固定されていたのですが、その後少しずつ種類が増えてきました。

今はウォーターフォードは、紙色は「ナチュラル」と「ホワイト」の2色、そして紙目もそそれぞれ荒目、中目、細目の3種類があります。

あとでラインナップの項目で詳しく説明しますが、荒目と細目は「ホワイト」のみでの展開がメイン、中目は「ホワイト」「ナチュラル」両方で展開あり、となっていてなかなかややこしいです。

とりあえず中目を手に取る機会が多いので中目のレビューをメインにしていき、そのあとに細目、荒目のレビューも載せます。

ウォーターフォード、中目のレビュー

まず、一番利用者が多いと思われる中目からご紹介します。中目は、「ホワイト」「ナチュラル」の2色が展開されています。中目は、ブックとブロック、両方売っています。

ウォーターフォード ナチュラル
ウォーターフォード ホワイト

重ね塗りにめっぽう強い

一番特徴的なのは、絵具の定着の良さです。色をのせて乾いた後は、しっかり定着して動きません。

なので、重ね塗りはとてもきれいにできます(水彩紙の中でもトップクラス)そして、何度も重ね塗りができます。

上の画像を見ると、赤の上にレモン色を重ねているのですが、レモン色の方に赤の絵具が全く溶け出していない事がわかります。

その代わり、色を取るリフティングという技法ができません。いくら色をこすっても色が取れません。なので、少し修正したい、と思った時もできないことが多いです。輪郭をぼやけさせることもできません。上の段の右から2番目の細い青の線がリフティングを試しています。

ひよこ
ひよこ

確かに絵具が取れていないね〜

染みこみがゆっくりで、きれいなにじみができる

絵具が染み込んでいくスピードがゆっくりです。なので、にじみは大きめに広がり、とてもきれいにできますが。絵具が広がっていきやすいので、変化をつけて塗ったつもりのところが気づくと平坦な塗りになっていることがあります。

染みこみがゆっくりなので、水をたっぷり使う作業は、とても余裕があります。広範囲のグラデーションもきれいにできるので、とても重宝します。

ひよこ
ひよこ

ウォーターフォードのにじみはかなりキレイ!!

発色は「ナチュラル」と「ホワイト」で差がある

ホワイトはかなり鮮やかな色合いですが、ナチュラルの方は落ち着いた発色です。

特に、赤と青は鮮やかさに差が出やすいです。

ただ、全体に色を塗っていくと、そこまで差は感じません。

発色に関しては、好みもあるので、どちらが優れているとも言えないです。白地を生かすような作品や、鮮やかな色やパステルカラーだとホワイトが向いています。ナチュラルの方は色彩に深みが出て、まとまりやすいので初心者さんにもおすすめです。

かれは
かれは

ウォーターフォードのナチュラルは色彩にまとまりが出ます!

あとは色だけでなく、乾きの速さが少し違います。ホワイトの方が速く乾く傾向があります。なので、じっくり制作したいときやにじみを大きく広げたいときにはナチュラルの方が使いやすいと感じることが多いです。

紙目の変化

昔のウォーターフォード(15年くらい前)は、表面が硬く、凹凸も大きかったので、下書きの鉛筆がひっかかりやすくきれいに描けないのが悩みでした。筆で色をつけるときは快適なのですが、どうも、鉛筆、色鉛筆、ペンとの相性が悪かったです。

が、最近(といっても3年くらい前から)久しぶりにウォーターフォードを購入してみたら、表面の凹凸がかなり穏やかになっていました。下書きやペン入れもしやすい!同じ紙なのに、ずいぶん表面の形状が変わったなあと感じました。最初は、万人向けになるように表面の形を変えたのかなあと思ったのですが、どうやら製造の過程で、水彩紙の表面に被せる布の布目が経年で擦り切れてなだらかになっていった、というのが真相のようです。

そうだとしたら、ロットによってまた表面の滑らかさは違うものが混入しているかもしれませんね。なぜか滑らかのものの方が、ちょっと表面は弱くて、マスキングで毛羽だったり、風邪もひきやすい気がします。この辺りは、はっきりとしたことは分からないので、もしちょっとロット差を感じたら「そういうことか!」と思ってもらえたらよいかと思います。

ウォーターフォード中目の作例

↑こちらがやや大きめF10くらいの作例です。背景の大きな部分にグラデーションで塗ったりすることができました。色を重ねても汚くならないので、じっくり大作を描きたいときにはおすすめです。本当によい水彩紙です。ナチュラルを使っていますが、作品が大きいこともあり、紙の色は特に気になりません。白く残した洋服の部分もあまり眩しくなくてかえって良い感じでした。

忘却の呪文

↑上の2作もウォーターフォード、中目、ナチュラルですね。しっかり色が載せられます。粒状化色との相性もよく、色も馴染みやすかったです。ただ、背景を白で残す場合はホワイトの方が額装しやすいことが分かりました。

ナチュラルの濃いめの紙色は暖かい色とも相性よいですね。

↑ウォーターフォード、ホワイト中目の作例です。スキャンでは読み取れていませんが、バラの濃いめのピンク色がかなり鮮やかに表現できています。ピンクや紫、青を生かすならホワイトの方が向いています。塗り残した白い地も冴えた印象です。

ウォーターフォード細目のレビュー

ウォーターフォードの細目は、中目とは全く違った印象の水彩紙です。そもそも細目の水彩紙は苦手だったのですが、ウォーターフォードの細目はわりと気に入っていて、小作品やドローイング作品でたくさん使っています。

滑らかな紙の表面

細目の水彩紙の表面は滑らかです。細目だから当然なのですが…

そのため、滑りが良く、鉛筆や色鉛筆で滑らかな線をひくことができます。ミリペンとも相性がよくて、きれいな細い線を一定の太さで描くことができます。

繊細な画風の人には、とてもおすすめです。

乾くのはそこそこ速いがにじみもつくれる

細目の水彩紙はどれも乾くのが速くて、塗るのが難しいという印象ではないでしょうか?そう、細目の水彩紙をきれいに着彩するのはとっても難しい!

ところが、さすがのウォーターフォード!細目は中目や荒目よりも速く乾きますが、よその細目に比べると、まだ待ってくれます。なので、細めだけどそこそこきれいににじみが広がりきれいに塗れます。

なので細目苦手な人にも挑戦してほしいですね。

重ね塗りもできる

重ね塗りも得意です。乾いたものは、上から塗っても色が溶けにくいので、きれいに重ねられます。リフティングはやっぱり苦手ですね!

ウォーターフォード細目の作例

とにかく紙の目を全く感じないので、究極までに滑らかに見えるところがお気に入りです。やっぱり色の淡い部分に紙の凹凸を感じやすいので、少し暗く感じてしまうことが多かったのですが、ウォーターフォード細目を使うと、色の淡いところが発光しているように感じます。肌も陶器みたいできれいに見えます。

人物の顔が大きめになるドローイング作品や小作品でも重宝します。逆にF4以上のサイズだったら、滑らかすぎて間延びするので、もう少し紙目があった方がいいですね。

個人的な感想

ウォーターフォードは、透明水彩らしい技法が使いやすい水彩紙です。特に大きめな紙を買っています。

重ね塗りや、ウェットインウェットといった「いかにも透明水彩」なテクニックが、使いやすい!紙です。

特に重ね塗りは、この水彩紙が一番むいています。とてもきれいに色を重ねることができます。

ただ、リフトができないので、ソフトな表現はあまりできません。

少し絵が固くなりがちです。

色も、濃い目にのりますし、どんどん重ねられるので、あっという間に重厚感のある色合いになります。

力強い表現にしたい、重厚な雰囲気、ハードエッジの絵、端正な雰囲気にしたい、という人にはとてもよい水彩紙で、おすすめです。

何度も色が重ねられるし、背景の大きな部分にきれいにグラデーションがかけられたりします。

しっかりコントラストをつけたり、複雑な物を描いたりする時に、とても良いです。

特に「ナチュラル」はクラシックな感じや重厚な雰囲気を出すのにぴったりで、気に入っています。

「ナチュラル」と「ホワイト」で描き心地は違いますし、紙目でも全く違うので、それぞれ使い比べるのをおすすめします。