今回は意外と知らない水彩紙の話です。コットン紙とパルプ紙の違いについて、と水彩紙の重要性についてお話しします。
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水彩紙の真実
透明水彩の中で、水彩紙はとてもとても大切です。一番大切と言ってもいいと思います。
透明水彩の画材の中で大切な順に描いていくと…こんな感じになります。
1位 水彩紙
2位 筆
3位 絵具
第1位が水彩紙なんだ。
ちょっと意外!
なぜかというと、色々ある透明水彩の技法の中で、うまくできる水彩紙とうまくできない水彩紙があるからなのです。
よく「重ね塗りがうまくできない」とか、「ウェットインウェットがうまくいかない」という悩みがあると思うのですが、これは100%、水彩紙が原因です。
ちなみに、水彩紙のことは、とても大切なことなのに、技法書にはほとんど書かれていません。
(ほとんどの技法書には紙のことは1ページくらいしか割かれていなくて、たいてい「水彩紙には色々あって、それぞれ描き心地が違います。ぜひ色々試してみてください」としか書かれていません。)
私もあらゆる技法書を見てみましたが、紙について書かれているのは1冊だけでした(でも、絵具を乗せた時の比較画像がない)
あまりに情報が少ないので、自分で色々な種類の水彩紙を買ってみて、試したものをこのブログに載せることにしました。
まず、画用紙ではなく水彩紙を
まず、絵具で絵を描こうと思った人が思い浮かべるのが、こちらの図案シリーズではないでしょうか。マルマンの図案シリーズやHOMOスケッチブックも、とても良い商品で、お手頃な価格の割には紙もしっかりしていて、適度な凹凸もあり、これはこれで活躍の場が広いです。しかし、中身は画用紙なので限界があります。
やっぱり水を使ったにじみや美しい透明感、絵具の発色を生かすのは、やっぱり水彩紙!水彩紙には、絵の具がすぐに染みこんでしまわないように、にじみどめ(サイジング)がほどこしてあります。そのおかげで、ウェットインウェットなど、水をたっぷり使う技法が使えるのです。
初心者であっても、ぜひ水彩紙を使って欲しいです。絵具はお手頃なものでも構いません。
水彩紙にも色々なものがあるので、これから種類をご紹介しますね。
水彩紙には大きく分けて2種類ある
水彩紙には色々な素材のものがあります。大きく分けて2種類あります。コットン紙とパルプ紙です。またコットン紙とパルプ紙を混ぜて作られている紙もあるので、厳密には3種類ですね。
- コットンパルプ紙(コットン紙と呼びます)
- 木材パルプ紙(パルプ紙と呼びます)
- パルプ+コットンの混合紙(①と②を混ぜて作られたもの)
その中でも①コットン紙と②パルプ紙の違いについて説明します。
①コットンパルプ紙(コットン紙)
綿の繊維で作られた水彩紙のことをコットンパルプといいます。このコットンパルプ100%の紙のことを「コットン紙」と呼んだりしています。コットン紙といったら、普通はコットンパルプ100%の紙のことを指します。
コットン紙の特徴はこんな感じ。
- 絵の具がゆっくり乾く(ウェットインウェット、グラデーションなど、表面がぬれている間に行う技法がやりやすい)
- 絵の具の定着がいい(重ね塗りができる)
- 発色はやや落ち着いている
- 表面が強い(マスキングOK)
- 高価
後で改めて紹介しますが、一言で言ってしまうと、「高価だけど抜群に描きやすい」のがコットン紙です。絵具のにじみ方や定着の強さなど、何をとってもコットン紙の圧勝です。デメリットは価格でしょうね。このブログを始めた頃と比べてもどんどん価格が上がっていて、ますます手を出しにくくなっています。が、コットン紙を使うと絵具を美しく使うことができ、絵の仕上がりも違ってきます。
コットン紙についてもっと詳しく知りたい方はこちら↓
コットン紙の代表的ブランド
アルシュ(最も高価で有名)ウォーターフォード、ファブリアーノ・アルティスティコ、ラングトンプレステージ、ランプライト
②木材パルプ紙(パルプ紙)
木材の繊維から、作られている紙を木材パルプ紙といいます。私たちがよく使うノートにも使われている材料です。コットンパルプと区別してパルプ紙と呼んだりしています。
- 水含みが少なく絵の具が速く乾く(手早く一気に塗らないといけない、グラデーションの技法は難易度が上がる)
- 絵の具の定着弱い。(重ね塗りすると、下の色が溶ける。その代わり、ふきとれる)
- 発色がいい。明るめ
- 強度はまちまち、弱いものも。
- 表面の凹凸が穏やか。下書きがしやすい。色鉛筆やペンなどの併用しやすい
- 安い
パルプ紙は安価なのがメリットです。まさに気軽に描くのにうってつけ。ただ、絵具の乾きが速くて、ムラができたり、にじみもあまり広がらなかったりします。その特性をちゃんと理解していれば、パルプ紙も案外悪くありません。
パルプ紙の代表的ブランド
アルビレオ、マーメイド、ヴィフアール、ラングトン、モンバルキャンソン
③コットン+パルプ紙
コットン紙とパルプ紙の混合タイプです。
コットン紙とパルプ紙の中間のような使い心地です。水彩紙によってコットン紙が含まれる比率が違うので、描き心地も紙ごとに違います。コットン紙に近い特性を持つ紙もあれば、パルプに近い特性のものもあります。
コットン+パルプ混合紙はコットン100%の紙に比べると、手頃な値段ですので、初心者にもおすすめです。
特にホワイトワトソンはクセがなく、初心者向けです。ホワイトアイビスはかなりコットン紙に近い使い心地で、ワトソンと値段が同じくらいなので、高コスパです。ただ、ちょっと風邪ひきやすいです。
コットン+パルプ混合紙の代表的ブランド
ワトソン、クレスター、ワーグマン、ホワイトアイビス
コットン紙の方が、高機能!?
「コットン紙の方がいいのかな」と思った方!そうなんです。確かに高機能なのはコットン紙の方です。
ただ、パルプ紙にもメリットはあります。
パルプのほうが、紙のあたりが柔らかいので、色鉛筆を併用する場合は、描きやすいです。下書きの線を描いたり、ペンでアウトラインをひく場合も描きやすいです。
色は、パルプ紙の方が、鮮やかだったりもします。乾く前と後で色が変わりにくいのです。コットン紙は、絵具を紙の奥の方にギュッと吸い込んでしまうらしく、色はちょっと落ち着いた感じになります。
また、パルプ紙は重ね塗りができないぶん、修正はしやすいというメリットもあります。
でも透明水彩の技法をしっかり使いたいというときには、コットン紙の方が適しているという面があります。
しかしコットン紙にはさらにデメリットがあります。高価です。パルプ紙の3〜5倍の価格です。最近では原料の高騰や世界情勢などさまざまな事情もあり、どんどん価格が上がっています。コットン紙は輸入に頼っているということもあって、価格が高くなりやすいのです。
透明水彩は、アクリルや油彩とは違い、塗りつぶして違う絵を描いたり、修正ができません。1枚1枚が消耗品です。そして技法に慣れるために、練習が必要です。つまり、たくさん紙を使うんです。なので、全ての紙を高価な紙にするのは、中々難しい場合もあると思います。
うまく使いわけできるといいのかな?
価格とのバランスを考えつつ、徐々にコットン紙にもトライしていくのがよいのだと思います。コットン紙もそれぞれ少しづつ描き心地が違うので、色々試して、自分の画風に合うものを選んでいくといいと思います。
まとめ
- 水彩紙は大きく分けて「コットン紙」「パルプ紙」の2タイプがある
- コットン紙は、高価だけど、にじみや重ね塗りなど、透明水彩の技法がやりやすい
- パルプ紙は、安価だけど、にじみや重ね塗りはしにくい(その分修正はできる)
- コットン➕パルプはどちらかというとパルプ紙よりの特性だけれど、手頃で初心者むけ
- 初心者であっても、にじみや重ね塗りで悩んでいる人は、コットン紙にどんどんチャレンジしたほうがいい。
この後、各紙の詳しいレビューと比較画像を載せようと思いますので、水彩紙選びの参考にされてください。
すでに絵を描かれている方で、「にじみがキレイにでないな」とか「重ね塗りすると下の色が溶けちゃう」ということで悩んでいる方は、コットン紙を買ってみてください。悩みが一発で解決すると思います。
初心者で、これから絵を描いてみよう!という方でも、少し慣れてきたらコットン水彩紙も試してみると、透明水彩らしい技法を生かした絵を楽しめると思います。
水彩紙のレビュー(リンク先に詳しい説明をのせてます)
コットン紙
ファブリアーノ・アルティスティコ
アヴァロン
キャンソン・ヘリテージ
コットン+パルプ紙
ワーグマン
クレスター
パルプ紙
アルビレオ
ヴィフアール
シリウス
マーメイド
ラングトン
モンバルキャンソン