透明水彩では「黒は使ってはいけません」という風に書いてある技法書が多いです。確かに黒は、取り入れることが難しい色で、絵の暗い部分も濃いグレーやこげ茶で表現した方がなじみやすいこともあります。
ただ、いずれは黒系の絵具も一本は必要になってくることが多いです。今回は、黒い絵具の種類とおすすめのものについて説明します。
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黒の絵具は必要なのか?
黒が必要かどうかについての私の考えは、この記事に書いていますので、参考までに↓
結論からいってしまうと、黒の絵具は、混色してダークカラーを作るために必要です。
透明水彩の絵に「真っ黒」を取り入れることは難しいです、私も何度かチャレンジしていますが、やっぱり黒の部分だけ浮きやすいです。周りの繊細なにじみとも合わせるのは難度が高いと感じました。それについては上の記事を参照してくださいね。
ただ、ネイビーやダークグリーン、焦げ茶、ダークグレーなど、黒に近い暗い色を作りたい時には、どうしても黒の絵具を混ぜないと作れないのです。
なので、1色くらいは、パレットに入れておくことになるのかな、と思っています。
黒は、使うのが難しいけど、パレットの中にはあった方がいいんだね
(初心者の場合は、黒にはあまり頼らない方がいいかもしれません。理由は、影の色を黒以外の色でつける練習をした方がいいからです。こちらもいずれ記事にしたいと思っています。)
初心者の時は、黒以外の色で、暗い色を作る練習もしてみよう!
今回は、その中でもおすすめの黒(グレー)の絵具と、一般的な黒絵具の特徴についてお話ししていきたいと思います。
おすすめ黒の絵具(色味のあるグレー)
色のついたグレーが使いやすくおすすめです。
- ペインズグレー
- ニュートラルチント
ペインズグレー
ペインズグレーの色味
こちらはおすすめNo.1の黒絵具です。黒というより、かなり濃いめのグレーです。
ペインズグレーの特徴は青味がかっているということです。
青という色がついているので、一般的な黒よりも暗さ、鈍さを感じにくいです。
なので、少し薄めに溶いてグレーとして使っても、他の色となじみやすく、鈍さを感じさせにくいです。これが一般的な黒でグレーを作って色を塗ると、色味が全くないので、かなり渋い感じがしてしまいます。
真っ黒よりも、他の色と馴染ませやすいよ
重ねて塗って、影色にするのも悪くありません。緑、青、紫の影ならいいと思います。少し、冷たく硬い雰囲気にはなります。
また、混色の時もとてもよい仕事をします。特に青、紫、赤、緑との相性がよいです。なので、濃いネイビー、ダークグリーン、深い紫などと作りたいと思っているときは、とても重宝します。あまり色が渋くなることなく、深い色を作ることができます。
ペインズグレーのメーカー比較
ペインズグレーは混合色なので、メーカーによって色味が異なります。
ホルベイン…あまり青味が強くないが、クセがないので初心者にも使いやすいおすすめのペインズグレー
W&N…青味がかなり強い。ここまでくるとインディゴでもいいかも?と思うくらい。でも色々な使い道ができる。
シュミンケ…「シュミンケペインズグレー」は発色強めの普通の黒で、「シュミンケペインズグレーブルーイッシュ」が青味のグレー(←画像はこれ)あまり色が強くないので、重ね塗りにもよい。
ターナー…程よい青味。こちらも初心者におすすめ。
マイメリ…黒が入っていない不思議なペインズグレー。なんとインディゴ 顔料とのこと。色味は強くないので、重ね塗りにむく。
クサカベ…黒ではなくグレーの色味で、色が淡い。なので、黒の代わりに使うことはできない。重ね塗りに良さそう。
色はちょっとずつ違うのですが、まずはお手頃なブランドで買ってみるのがおすすめ。というのも、ペインズグレーのような暗い色は、実際に絵の中に使われると色の違いが分かりにくいからです。
どれでも同じように使うことができます。
ニュートラルチント
ニュートラルチントの色味
次におすすめなのが、ニュートラルチントです。こちらは、紫がかったグレーです。(ニュートラルという名前がついていますが、あまりニュートラルではないのが面白い)
ペインズグレーが青味がかって冷たいグレーなのに対し、ニュートラルチントは少し暖かさのあるグレーです。
紫がかった優しいグレー✨
こちらも色のついたグレーなので、一般的な黒と比べて、暗さや鈍さを感じさせにくいです。
薄めてグレーにすると、他の色となじみやすく、優しい感じになります。
また、混色や重ね塗りにも向いています。紫、青、赤、茶色との相性がよいです。緑の影として使うと落ち着いた感じになります。全体的に暖色との相性がいいかな、と思うのですが、青や緑にも合う色調です。
ニュートラルチントのメーカー比較
ニュートラルチントも混合色なので、メーカーによって色味が違います。黒に青、紫、赤などが混ぜられていて独特の色調になっています。
ただ、ニュートラルチントの色は、ペインズグレーよりも、さらにメーカー差があります。こちらは色を確認してから買うのをおすすめします。
ホルベイン…青紫がかった黒。黄色やオレンジと合わせるのもきれい。好きな色味です。
W&N…他のニュートラルチントと比べて、色味がありません。クセがない。
シュミンケ…個性の強いニュートラルチント。赤紫がかった不思議な色味。今一番気になっている色。
ターナー…紫がかっている。こちらもクセがなく使いやすい色味です。
マイメリ…マイメリは全色単一顔料であるため、こちらは普通の黒顔料。なので赤みや紫みはありません。
特にシュミンケホラダムのニュートラルチントは独特の色で、赤みが強いです。
シュミンケのニュートラルチント欲しい!!
紫がかったグレーであるという点では同じなので、どれを買っても重宝すると思います。個人的な考えですが、ペインズグレーとニュートラルチントは、どちらか1色あれば十分だと思います。
よく見かける黒絵具(色味のない黒)
アイボリーブラック
こちらは、12色セットにも入っていることが多い黒です。色はニュートラルで、色味がありません。普通の黒です。
透明度は、半透明くらいのことが多く、上から重ね塗りするときにも使うことができます。色があまり強くないので、ランプブラックよりも混色向きです。
物によっては、塗りムラが出るものもあります。
ランプブラック
アイボリーブラックよりも濃さがあります。不透明であることが多いです。しっかり黒として濃く塗りたいときには、アイボリーブラックよりもランプブラックの方が向いているかも。
色はやはりニュートラルな、色味のない黒です。
余談ですが、透明水彩の黒はそこまで強くないので、本当に真っ黒にしたいときにはアクリル絵具を使う方が良いこともあります。
終わりに
黒は、画風によってはなくても構わない色だと思います。三原色混ぜて作ることもできます。
「絵に黒を使ってはいけない」というのは、教本でも先生からも聞いたことがあるという方が多いと思います。もちろん黒を絵に使うことは、間違いでもありませんし、使ってもよいのです。ただ、真っ黒を絵の中に取り入れるのは「難易度が高い」ということは念頭に入れたほうがいいかなと思います。
黒の代わりに、深い青や紫、ブルーグレー、焦げ茶色を使うこともできて、そのほうが、絵全体をまとめやすいことも多いです。
特に透明水彩の場合は、油彩やアクリルと比べても、色が淡くつき、絵具の厚みもないので、強い黒とつりあいをとるには色彩のテクニックが必要となってきます。
今回、ペインズグレーやニュートラルチントをおすすめだといったのは、黒の代用としてのブルーグレーや深い紫と色が似ているからです。薄めると、わずかですが、青や紫の色がついているので、重たくなりすぎないです。ペインズグレーがおすすめな理由は他にもあるのですが、それはまた別記事でご紹介します。
初心者にはペインズグレーが使いやすいと思うよ
私の場合は、ペインズグレーを黒絵具として使うことが多いですが、インディゴをパレットにいれる時だけは、ペインズグレーと色味が似ていて用途がかぶってしまうので、代わりにニュートラルチントをパレットに入れています。
「透明水彩の黒と白は必要ない」という教本や先生も多いので、使って良いのか迷う方も多いです。どちらも使い道はありますので、下の記事で使い方をまとめています↓