本サイトはアフィリエイトやPRが含まれていることがあります。

顔料の基礎知識 メーカーのカタログから読み解く顔料のこと!(2025,2月追記)

今回は絵具の顔料のお話です(2021,02,25)

カタログからわかる顔料のこと

皆さんのお手元には、絵具のメーカーカタログはありますか?

私は三度の飯より絵具のメーカーカタログが好きです。これが手元にあるだけで幸せな気持ちになります。

かなり、読みこんでいるので、ボロボロになっています。

この絵具のカタログ、メーカーによって違うのですが、単に絵具のラインナップだけでなく、顔料の情報なども載っているので、実はとても便利です。

私も、ブログやTwitterで色々な画材の情報を発信していますが、情報源は、絵具のカタログが多いです。絵具のカタログの情報を整理して、比較したり、自分の経験と照らし合わせて記事を作ったりしています。

なので今回はメーカーカタログから読み解く、顔料のお話をしたいと思っています。最後に、カタログにはのっていない、塗ってみないと分からない、顔料のプチ知識をのせています。

ひよこ
ひよこ

顔料?
なんか難しそう…

かれは
かれは

難しそうに思えちゃうかもだけど、
顔料のことが分かるとすごく便利なのよ

顔料とはなんぞや

絵具は何で出来てる?

大手のメーカーは使用している顔料を公開しています。

顔料とは色のついた粉で、絵の具に色をつけている要素です。顔料は粉の状態で、これだけでは、紙にくっつかないので、メディウムを混ぜて、絵具を作っています。絵具は、顔料+メディウム(顔料を紙にくっつけるベタベタした糊状のもの)で出来ています。

顔料はこのような瓶で売られていて、買うこともできます。このままではサラサラで、紙にくっつけることができません。ドロっとしたアラビアゴムと混ぜることで、水彩絵具になります。

混ぜれば、水彩絵具になります。(実際には色々な添加剤が加わり、しっかり機械で練ったものが絵具になるんです)

メディウムは、アラビアゴムがメインで、メーカーによって少し違いはありますが、それほど差があるものでもありません。

絵具に、「どのような顔料が使われているのか」というのがとても大事です。

なぜかというと、この顔料によって、色だけでなく性質も決まるからです。

顔料の番号

顔料はPB29のようにPの文字の後にアルファベットと数字が続いた文字列で示されています。

・はじめのPはpigmentの略です。pigment(ピグメント)は英語で「顔料」の意味です。

・次に続くアルファベットは、大まかな色の区分です。BはBlueの略なので、青のグループです。PRが赤、POはオレンジ、PYは黄色、PGは緑、PBは青、PVは紫、PBrが茶色、PBkが黒の顔料を表しています。

・次に続く数字が、それぞれの顔料に充てられた番号です。

例えば、よく見かけるのはPB29、これはウルトラマリン顔料です。他にもPB15フタロブルー、PB28コバルトブルーなどがあります。

PRは赤系の顔料。PR122とかPR254のような感じです。

お手持ちのチューブを見てみてください。びっくりするくらい小さく書いてあることが多いです。日本で流通しているほとんどのメーカーでチューブに顔料の記載があります。

基本的に、顔料の番号が同じであれば、使われている顔料が同じだということなので、絵具の名前が違っても同じ色です。絵具の名前はメーカーによって、違う名前がつけられていることも多いのですが、同じ顔料であれば、基本的には同じ色です。

カタログだとこんな感じに顔料が書いてあることが多い

ただ、顔料によっては、色の幅があることもあり、いくつか別の色味を持っていることもあります。また、メーカーによっても同じ顔料でも少し色が違うこともあります。

ですが、基本的には同じ顔料であれば「同じ色」という認識で間違いないです。

例えばホルベインのビリジャンヒューはPG7(フタログリーン)の顔料で、鮮やかな緑色です。ウィンザー&ニュートンでは、”ウィンザーグリーン ブルーシェード“というシュミンケホラダムでは”フタログリーン“という名前です。メーカーごとに名前は違いますが、全て同じ色です。

ひよこ
ひよこ

ちがう名前だから、別の色だと思ってた!

かれは
かれは

顔料を見てみると同じ色だということが分かるよ

顔料によって色々な性格がある

実は、顔料は色の要素だけではなく、他にも透明度や粒子の細かさ、着色力など、さまざまな要素を持っているのです。同じような色でも、顔料が違えば、違う性質を持っていたりします。

例えば、同じ青であっても、フタロブルー(PB15:3)とセルリアンブルー(PB35)では全然違います。

フタロブルー(PB15:3)は粒子が細かく、透明度が高く染みつきが強い顔料ですが、セルリアンブルー(PB35)は粒子が荒く、半透明、染みつきが弱い顔料です。

この、顔料による特性の違いは、とても大事だったりします。それぞれ、その顔料の特性が、技法への向き不向きに影響するからです。なので、使っている絵具がどのような性質の顔料で構成されているのか、チェックできると、今後の絵具選びに大いに役立つのです。

かれは
かれは

粒子の大きさによって、にじみの広がりやすさが違ったりするよ

ひよこ
ひよこ

透明度は重ね塗りの時に見え方が違ったりするしね

顔料については、絵具のチューブにも書いてあったりするのですが、カタログは自分の持っていない絵具の顔料も一覧でチェックできるのであると便利です。メーカーホームページやオンラインショップでも見られます。

できれば、複数のメーカーのカタログがあると、比べやすくて便利です。特に同じ色を被り買いするのはもったいないので、同じ顔料のものをチェックしておくといいです。(逆に、同じ色を色々なメーカーで揃えたい時も!)このサイトにも代表的な色の知識をまとめているので、色ごとにチェックして見てください。

顔料でチェックする項目

単一顔料か混合顔料か

まず顔料でチェックするのは、単一顔料か、混合顔料か、です。

  • 単一顔料は1つだけの顔料で構成されている絵具
  • 混合顔料は複数の顔料を混ぜて作られている絵具

こちらの黄緑を見てください↓どちらもくすんだ黄緑なのですが、左のオキサイドオブクロミウムはPG17のみ1つだけの顔料、右のサップグリーンはPY150、PG7、PR122の3つの顔料で構成されています。オキサイドオブクロミウムは単一顔料、サップグリーンは混合顔料の絵具となります。

必ずしも単一顔料が優れている、というわけではないけれど、顔料ごとに特性が異なるので、単一顔料の絵具の方が、その特性を理解しやすい、というメリットがあります。

あと、よく言われているのは、単一顔料同士の方が混色したとき彩度が落ちにくい、ということです。これは、選ぶ絵具の組み合わせにもよるのですが、一番色が濁らないのは、確かにもっとも鮮やかな単一顔料同士の組み合わせになります。

ただ、オキサイドオブクロミウムのように、もともと濁った色の顔料も存在するので、一概に混色で色が濁りにくいとは言えません。

混合顔料も便利で有能なことはあります。

初心者には、赤、黄色、緑、青は単一顔料の絵具を中心にそろえていくのがおすすめです。

かれは
かれは

いずれも鮮やかな色を選ぶのがポイントです

ひよこ
ひよこ

何を買ったらいいかわからないときは基本7色の記事も見てみよう

透明度

次にチェックするのは顔料の透明度です。これはカタログに書いていることが多いです。絵具のチューブに記載されていることもあります。

透明色、半透明色、半不透明色、不透明色とランク分けされています。

⬜︎のマークで表現されていることが多いので注目してみてください。

誤解されていることが多いのですが、透明水彩の不透明色というのは、そこまで不透明ではないです。透明水彩の不透明色といえば、カドミウムイエローがありますが、不透明水彩のクロームイエローに比べると、全然透明感があります。

不透明色をかたくなに避けられる方もいるのですが、透明水彩では不透明であるという要素を、そこまで気にしなくても大丈夫です。

透明水彩における不透明色は、「しっかりムラなく塗ることができる、混色で負けない、発色が強く鮮やか」などメリットもあるんです。特に不透明の黄色であるカドミウムイエローなどは、黄色という本来なら弱い色なのに強さがあり、発色が強いので、重宝する色だったりします。

不透明色の方が、重ね塗りした時に下に塗った色は透けにくいので、色を重ねて見せたい時には透明色の方が生きてくることあります。

もちろんケースバイケースです。

透明色も不透明色もどちらも使ってみるのがおすすめです!

かれは
かれは

カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムレッドライト、ベネチアンレッド、コバルトターコイズ、などの不透明色は特にお気に入り。
どの色も、画面に強さを加えてくれるよ♪

ただ、白が入ったパステルカラーは、不透明色の中でもまた違った特徴があるので、こちらの記事を読んでみてください。

Gカラー(粒子の荒い色)

粒子の荒い色にGマークがついていることがあります。グラニュレーションカラーや粒状化色と呼んでいます。

このように粒子の荒い色を指します!

塗ってみると紙目のくぼみに絵具が溜まって、紙の凹凸がはっきり表れています。大きめの粒子が点々と見えたりもします。

粒子の荒い絵具は、あまり混色に向いていません。他の絵具と混ざりきらず、分離してしまうからです。特に粒子の細かい絵具と混ぜたときに分離しやすいです。

逆に分離色を作りたいときには重宝します。最近はあえて分離させるというのも1つの技法として浸透してきています。

Stカラー(粒子が細かい色)

Gカラー(グラニュレーションカラー)とは反対に粒子の細かい色にもStマークがついていることがあります。これはステインカラーといいます。

こちらは粒子が細かいので、紙に色が染みつきやすく、色を取ろうと思っても取れないこともあります。

キナクリドン顔料(赤系が多い)やフタロシアニン顔料(青、緑)などが、その代表ですが、その中でも染みつきやすさには差があります。

特に染みつきやすいステインカラーとして、以下のようなものがあります。

キナクリドンローズ、ピロールレッド、ペリレンレッド、ペリレンマルーン、ペリレングリーン、プルシャンブルー、マリンブルー、ベネチアンレッド(酸化鉄系PR101)、ランプブラック

例外的なものとして、粒子が荒めで、重たいのにステインカラーでもあるのが、カドミウムレッドとカドミウムイエローです。よく着色します。

この中で特に扱いが難しいのが、プルシャンブルーとベネチアンレッドをはじめとした酸化鉄系の赤茶色です。よくパレットの中で色を薄めてからのせないと、ガツンと色が染みます。

こちらの表示も、はっきり明記しているメーカーもありますが、書いていないメーカーも多いです。

耐光性

耐光性の要素は、作品を長期保存する、展示する、販売する際に、とても気にしなければならないポイントです。特に作品を販売する場合は、注意が必要です。購入した作品を飾っていたら、1年後に色あせしていた、では洒落になりません。

なので、絵具の耐光性の表示をしっかりチェックすることが大切です。

特に赤系は耐光性があまり高くない顔料もあるので、チェックが必要です。

オペラは、鮮やかな赤で、重宝する色味ですが、耐光性がかなり低く、1週間ほど窓に貼っておいただけでかなり色味が落ちましたので、販売する作品には注意が必要です。

対光性については詳しくまとめた記事があるので、こちらをご覧ください。

顔料の特性その他(実際に塗らないと分からない)

色の幅が広い色と狭い色がある。

色の幅は濃淡で表せる色の幅のことです。濃い部分と淡い部分のギャップです。

例えばプルシャンブルーは色の幅が広いです。濃い部分から淡い部分まで表せる色がとても広いことが分かりますか?

一方セルリアンブルーは色の幅が狭いです。もともと淡い色の顔料なのです、白が入っているわけではありません。

同じ青ですが、元々の色の濃さが違うので、
表せる色の幅がちがう

深い色みを持つ色の見分けかたは、チューブから出した色で判断できます。鮮やかな色なのにチューブから黒っぽい色が出てくる色は深みのある色、明るい色の絵具が出てきて、そのままの色の発色だったら色幅のせまい色です。

それが実際に絵を使うときにどのような影響があるのかというと…

色幅の広い色は

  • 一色で様々な色調を持っていて、一人何役もこなす
  • その代わり濃度の調節が難しく、淡い色を塗るときムラになったりする

色幅の狭い色は

  • 表せる色の種類は少ない
  • そのかわり、同じ色で均一に塗りやすい

という特色があります。白が混ざったパステルカラーは、今お話しした色よりさらに、色幅の狭い色に入ると思います。均一に塗りやすいけれど、用途も限られるというのが特徴ですね。

濃い部分と薄い部分で色調が変わる色がある

濃い部分と淡い部分で色調が変わる色、というのは意外と多いです。

淡く塗ると鮮やかなのに、濃く塗ると鈍い色、という不思議な色もあります。濃い部分と淡い部分で色調が明らかに違うのです。

これは透明感が強すぎる色に多いです。初めて塗ったときは不思議すぎて、とても驚きました。

例えばトランスペアレントイエロー。

淡い部分は結構ドギツイ鮮やかな黄色。でも濃く塗ると黄土色。

ひよこ
ひよこ

ええっ!?
なんかカレー粉みたいな色だね…

グリーンゴールドも似ています。濃い部分はオリーブ色なんですが、薄めるとレモンイエローになります。

また、赤はどの色も一見同じ色に見えることが多いです。しっかり濃く塗ってみるとあまり色の差が感じられません。

ひよこ
ひよこ

あれ、どれも同じ赤では…?

かれは
かれは

水を加えて薄めてみると…

しかし、水を加えて薄めてみると、結構雰囲気のちがう色だということが分かります。意外と紫っぽかったり、鮮やかに見えるのに薄めると渋みがある赤もあります。(右から2番目はスキャンで色が飛んでますが、もっともっと鮮やかで明るい色です)

ひよこ
ひよこ

ほんとだ〜!
水を加えてみると全然ちがうピンクになった!

なので、濃い部分だけでは色調が判断できない色は、透明水彩では特に多いです。以外と奥が深い、顔料の世界です。

プルシャンブルーも濃い部分は渋みのある紺色なのですが、薄めていくと意外と明るい水色になります。

プルシャンブルーも薄めていくと意外と明るい水色に

色調が変わる色は塗ってみるまで分かりません

これはカタログや店の色見本だけでは分かりにくいことが多いので、実際に塗って確かめてみてくださいね。

まとめ

というわけで、顔料による色の特性について、思いつくままに語ってみました。

顔料のことはマニアックな知識だと思われてしまいがちですが、これが分かるとかなり絵具選びが楽になります。顔料のことが分かると、こんないいことがあります。

  • 絵具の被り買いを防げる
  • 絵具を選ぶのが楽しくなる
  • 自分のしたい技法に合わせた絵具選びができる

自分の表現に合わせた絵具が選べるのはテクニックにも影響があるので、とっても大事なんです。このサイトにも顔料について解説しているページがたくさんあるので、ぜひ参考にしてみてください。