Gallery Hydrangea で行われる「ヴァニタスの寓話」という企画公募展に新作1枚で参加します。幅60cmに収まる作品とのことで少し大きめの作品を描きました。
その作品にまつわるストーリーを書きましたので、ご興味ある方はどうぞ。
Table of Contents
「ヴァニタスの寓話」の詳細
企画公募展「ヴァニタスの寓話」
会期:2022.06.03(金) ~ 06.12(日) ※休廊日:火・水
時間:13:00 ~ 18:30(最終日は17:00まで)
会場:gallery hydrangeaギャラリーハイドランジア(東京 曳舟)
ヴァニタスってどんなテーマだろう?
ハイドランジアさんの企画公募展にはずっと参加したいなあ、と思ってました。が、すぐ募集締切となってしまうため、今回申し込みができて、とてもとても嬉しかったのです。ただ、申し込みをする前に「どんな絵が描けそうか」「どの作品が出展できそうか」がとても大事なので、しばし考えタイム。
企画公募展のタイトルは「ヴァニタスの寓話」
ヴァニタスってなあに?
なんか聞いたことはあるなあ、って思ったんだけど…
募集要項にヴァニタス(人生の無意味さ、虚栄の儚さ)とありました。
一応調べてみました!
ヴァニタスは、ラテン語でした(ラテン語っぽい響き)
ヴァニタス(ラテン語: vanitas)とは、16〜18世紀くらいのドイツやオランダ辺りで流行した、「人生の虚しさの寓意」を表す静物画。のことだそうです。豊かさを意味する静物の中に、死を思わせる頭蓋骨(ドクロ)や腐ったフルーツなどを配置し、「虚栄のはかなさ」「人生の無意味さ」を感じさせる絵のジャンルだそう。
ん〜〜。こんな厨二風のテーマが400年くらい前のヨーロッパにも流行っていたんですねえ。こういうこと考えるのは現代人だけだと思っていましたが…時代を問わず、人々の心を打つテーマなのかもしれないです。
確かにドクロの入った静物画、見たことあります!
本当だ!ドクロがいる!
(ちょっと怖い…)
ヴァニタス「空虚」のモチーフになっているものには、頭蓋骨以外にも色々あり、腐ったフルーツやランプ、時計、楽器など…その中で貝殻というのもありました。
「貝殻」というのを見て、枯葉はとある一枚の過去作を思い出したのです。
14年くらい前なので、随分な過去作ですが、「貝殻をモチーフにした」「打ち捨てられた悲しさ」「繁栄の後の寂しさ」をテーマにした作品。この作品が企画展のコンセプトに合いそうだなあ、とぼんやり考えたのですが、問題がありました。モチーフや構成はとてもとても気に入っていのですが、何せスキルが追いつかず、うまく画面をまとめられず、ちょっと不発に終わった作品でした。しかもサイズも規程のサイズをはみ出してるし。
さすがにこれをそのまま出すことはできない…
どんな絵が気になりますよね?こんな絵です!!↓
これを今の技術でリメイク出来たらなあ〜と思いました。当時はもう1回描き直したいとは思ったんですが、それなりに時間がかかってしまったので、気力的、時間的に無理でした。
過去作のリメイクです!
でも14年も経った今なら、「いけるのでは!」と思い、サイズをひとまわり小さくして再挑戦することにしました。
セルフリメイクへの挑戦です。
gallery hydrangeaさんにも「過去作のリメイクをする」とお伝えし、展示への参加も正式に決まりました。よし頑張る!
過去作のリメイク、うまくいくのか…?
過去の自分、何が足りなかったんだろう?
16〜10年くらい前の作品は、今見ると惜しい作品が多かったです。もちろん「よくがんばった作品」もあるのです。でもそれ以上に「コンセプトやアイディアはいいのに、惜しい作品」が多いんです。でも当時は何が足りないのか、自分ではよく分からず…
最近、改めて見返してみて「色彩のコントラスト」「絵作り(構図や、情報の足し算引き算)」「人物を描くスキル」あたりかな〜〜と。
よく先輩画家さんが「人物を描くのが最も難しい」といっていたのを思い出しました。「人間は人の体や顔に注目するように出来てるから、ちょっとのズレに違和感を抱きやすい」のと「人間の骨や筋肉自体が複雑に出来ている」のが理由だそうです。
私も最後までなかなか上達しなかったのが、肝心の人物。
でもやっぱり悔しくて一時期頑張っていたこともありました。
で、今なら完全とまではいかなくても、「あの頃よりは描けるのではないかな」思ったのです。
というわけでセルフリメイクへの道が始まったのです。
構想を練った
タイトルはもともと「貝の城」でしたが、「砂の城」に変更することに。遠景のお城は崩れかかった砂の城にすることに。これは展覧会のテーマ「ヴァニタス」により近づけるためです。
描くものは決まっているため、エスキースやサムネイルスケッチは用意しませんでした。でも体の向きを反対にしようかな(本来なら頭が右のほうがしっくりくるんです。この絵はあえていつもと逆なんですよね〜)とか髪を黒髪にしようかな(黒髪にすると貝殻の淡い色と馴染まない)、とか。
ポーズを変えようかな(膝を立てるだけでかなり挑戦的になる)とか色々メモして「もっといい構図はあるかな」と確認作業をしてみました。
結論。構図は過去作とほぼ同じ感じにすることに。
でもこのほぼ同じというのが一番緊張するかもしれません。前作より微妙になってしまったら、笑えない。幸い手元に原画は見当たらない(多分実家w)ので完成までは、携帯に残された小さな画像以外は確認しないことに。
セルフリメイクで一番緊張するのが、下書きの段階。よくも悪くも、うまくいく絵は下書きがすっとスムーズに出来上がるので。だめそうならもう一度別の紙に描きなおそう。。セルフリメイクは完成品が一応存在しているので。「超えなければ」というプレッシャーはちょっとありますね。ある程度軌道に乗るまでが怖い〜〜。
制作過程はあまり撮りませんでした。制作過程をこまめに撮ってしまうと「あまり書き加えない状態の方がよかった」ことをはっきり確認できちゃうケースもあるんです。
こわ…
水彩画は基本後戻りはできないので、制作中は台無しにしてしまわないか、ビクビク怯えています。この恐怖になかなか勝てません。特に大きい作品は。。
なので、時間に余裕を持って、「だめなら描きなおせばいい」と言い聞かせています。
セルフリメイク、新作絵で変えたところ。
お城を変えました。前も砂のお城をイメージしていたのですが、モンサンミッシェルみたいだね〜と絵を見た人に言われたこともあって、もう少し曖昧なイメージにしようと思いました。
転がっている王冠や首飾りはなしにしました。今回は、あまりメルヘンなストーリー仕立てにはしたくない。
空は夜の空にしました。ここは前作の時に一番違和感があった部分です。実は、前作も夜空にしたかった記憶があるんです。水彩紙があまり重ね塗りができないものを選んでいたこともあって(画材の知識がないとこういうことが起こりがち)深い色を水彩で表現するのは無理なんだと思ってました。今回は希望する色合いから用紙も逆算して選んでいるので、理想の色が出ました。少しアクリル絵具の力も借りています。筆もしっかり広範囲をカバーできる刷毛と連筆で。(画材ブログやってて良かった)
洋服も変えました。前作は明らかに描き込みすぎていた(面白いけど)ので、少し整理しました。顔や目に視線がいくように…。洋服はいつもに増して曖昧に。泡や波を身に纏っているようなイメージで。
転がっている貝殻も少し変えました。前作は写真を見ながら想像で描いた部分もありましたが、今回は手元に貝殻がたくさんあったのでそれをモデルにしました。やっぱり実物があると全然違う。貝殻も実際置いてみると、どこのバランスで、穴がどちらを向くのか、分かります。自然に見えるポーズを取らせて描きました。当たり前のことだけど、イラストだと写真資料で済ませてしまいがちなので、実物見ると違うんだなって思いました。とってもきれいですよね。タカラガイの触り心地が最高です。
色合いも変更しました、前作はグレーを基調にしていました。ただテーマが若干暗めなので、深い闇とのコントラストで少女や貝殻の部分は暖かく発光しているような色合いにしようと思いました。明暗だけでなく、寒暖のコントラストもつけたい。
途中雨が何度もふり、紙のサイジングの調子が怪しくなってきました。「紙が風邪をひいたらアウト」なので、最後は集中して一気に描き上げました。(この時期並行して、ホルベインの水彩マラソンの作品を仕上げていました)
これが描きたかったんだ
出来上がった!
前作も「こういう絵が描きたかった」ということを自覚しました。ただ、改めてよく比べてみると、過去作もそこまで悪くはないかも??あまり濃くない空の色もこれはこれでいいかもです。水平線の位置も、落ち着きがあります。よりよくなったというより、また違った作品が生まれたという感じかもしれません。
ちょっと14年前の過去作と今回の作品を並べてみます。こんな感じ。。
やっぱり一度完成している絵って、はっきりゴールが決まっているので、迷いは少なかったです。でもやっぱり怖い!前の自分をちゃんと超えられているのか?テストされているみたいで。14年前の自分にがっかりされないように。
セルフリメイク挑戦してみて良かったと思いました。
少しは前に進んでいることがわかったし、前よりも手持ちのツール(できること)の数も増えていて、技術を意識して使えていることが確認できてよかったです。いい意味で自信になった。
他にもまたリメイクしてみようかな〜。リメイクするなら、ちょっと時間が経ったものの方が新鮮味があって良さそうです。
お疲れさま〜!
メイン作品の額装へ!
新橋のフレームファブリへ額装に。
この額縁店は、表に出ている在庫は少なめですが、気に入った額の取り寄せがお願いできるのです。カタログでも色々探してくださいます!なので、事前に自宅でメーカーさんのカタログを見て、「この額のこのサイズの取り寄せお願いします」みたいなことができます。
そして、作品に合いそうな額をめっちゃ選んでくれる。どうしよ〜〜と迷っているとスタッフの方が3つくらいパパっと選んでくれる。
「波のイメージで」と選んでくださったラーソンジュール の渋い青の額もとても良かったんだけど…
「色合いはこれが一番合いますね」と選んでくださった錆び付いたいぶし銀みたいなこのアンティーク風のフレーム!に一目惚れしまして。
ちょっと予算オーバしたんですが、これでお願いしました。
世界観にぴったりの額を選んで頂けて、とても嬉しいです。やっぱり額に入ると見え方が全然違います。
いつも額をどうしたらいいかわからないので、(シンプルなものを選びがち)色々提案してくれる額縁店、とても心強い!!
ありがとうございます。
持ち帰り可能な小作品
持ち帰り可能な小作品も2点作りました。先に額を購入。20cm四方に収まるサイズ、2点まで、という規定があったので、先に容れ物(額)の方を調達しよう。と。文房堂で、死ぬほど可愛いATC額があったので色違いを購入。
色違いの額なので対の作品を作ろうと決めました。お店で長さも測って、ギリギリですが、20cm以内に収まることを確認!!
額に入れるならATCボードである必要はないので、普通のアルシュ水彩紙に描きました。
白い額にはグリーンの絵、茶色の額には紺色の絵を入れると決めていたので、それぞれ額の色味に合わせて小さな絵を描きました。実際にみると分かりますが、すごくキラキラします。
メインの作品は少しばかり寂しいテーマなので、小作品の方は「虚飾や虚栄」をテーマにしました。それぞれ東の海と西の海に棲む魔女(妖精)で、次々に代替わりする地上の栄華や繁栄を見つめている、というストーリーです。
小さな作品にもテーマやストーリーを詰めていますので、楽しんでいただけると嬉しいです。
出来上がってみると当初予定していたのとは反対の額の方が合いそうだと思ったので、結局逆にしました。右が「東の夢」、左が「西の夢」というタイトルです。
作品解説について
書きたいことが書けてとても嬉しいです。
何度も言いますが、「作家さんは作品解説することへの賛否」や「展覧会前に作品を発表することの賛否」も時々聞くのです。なので、「あまり語らない方がいい?」とも思うのですが、「SNSで見たこの作品が見たい!」と展覧会に来ていただけることも多いですし、遠方で現地には来れない方にも「こんな活動してるよ」と知っていただきたいし、で、私は積極的に作品を事前公開しています。
作家さんの人となりが分かるの面白い♪
私は他の作家さんの「作品解説」や「作品が生まれた経緯」を聞くのが大好きなので、自分でもあれこれ語りたくなってしまいます。ミュージアムガイドも楽しく聞くタイプです。絵から何かを感じ取って欲しい、分かって欲しい、はもちろんあるのですが、「見るサイド」の立場に立ってみると「やっぱり作品にまつわるストーリー」があるともっと絵と自分とのの距離を縮められる、と思ってます。
なので、他の作家さんにもぜひ「作品のストーリー」を語って欲しいな!と。「これは〇〇を描いています」という絵の直接の説明もよいのですが、「こういう関心から絵が生まれている」や「こういう感じを狙ってこの技法を使っている」みたいな「作家さんしか語れないこと」が聞きたいです!
なかなかTwitterでは字数制限があるので、作家さんにはブログもおすすめですね!!
最後に展示のお知らせもう一度!
gallery hydrangea 企画公募展『 ヴァニタスの寓話 』
会期:会期:2022.06.03(金) ~ 06.12(日) ※休廊日:火・水
営業時間:13:00~18:30(※最終日は17:00まで)
gallery hydrangea(ギャラリー ハイドランジア)
↑ハイドランジアさんのページで出展する作家さんが見ることができます。きっと素敵な作品が並ぶのだろうな、と楽しみにしています。
〒131-0032 東京都墨田区東向島1-3-5
tel. 03-3611-0336
mail:gallery.hydrangea@gmail.com
東武スカイツリーライン曳舟駅(半蔵門線直通)西口より 徒歩9分