2023年6月、初めて絵画をお迎えしたので、そのことを記録しておきたいと思いました。絵をお迎えしてもらいたいと思う作家さんにも、これからお迎えしてみたいと思っている方にも読んでいただけたら嬉しいです。
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今までのこと
2023年6月、銀座中央ギャラリーさんで、作品をお迎えしました。
今まで作家もののガラス工芸や食器などはお迎えしたことがあるのですが、絵画は初めてです。これからも作品をお迎えすることはあると思うのですが、「初めて絵画をお迎えした」という経験は1回限りなので、そこで私が考えたこと、感じたことを記録しておこうと思います。
絵をお迎えしたんだ!
今まで色々な展示に参加し、色々な展示を見に行きましたが、「素敵」「すごい」と思う作品はたくさんありますが、「お持ち帰りしたい」と思う作品に出会うことはあまりありませんでした。枯葉はわりと作品を分析的に見てしまう傾向があるので「こういう表現は参考になるな」や「この表現は〇〇が生かされているな」のように、作品を解析してしまうことが多く、「好き」「いいな」のセンサーが鈍っていたような感じもします。
もう少し純粋な目で作品を見たい…
とはいうものの、今まで「お迎えしたいな」と思う作品と出会うこともありました。
でも、「同業の自分が買うのはルール違反なのでは…」となんとなく遠慮してしまうことが多かったです(特に同じ展示に出ている時が難しい、タイミングが)最終日に残っていたらお迎えしようと思うのですが、大抵そういう作品は誰かにサッとお迎えされていくので、最終日どころか初日になくなってく(涙)
作家がお迎えするのはルール違反じゃないよ!
また、すごく気に入ったけど明らかに予算オーバーという作品もあります(実はいまだに迷ってる)もちろん作品に見合う値段ではないといっているのではありません!単純に自分の予算を超えているだけです。
というあれこれもあって、意外と作品を買うに至らなかった…。作家生活長いのに。
(よくよく考えたら結構作家さんも作品買っていますよね!!自分の作品も結構作家さんにもお迎えされているんです。どのくらいの頻度で買われるかは、かなり作家さんによっても違いますけど。ぐぬぬ、私も何か買いたい…)
今回の経緯
今回お迎えさせていただいた熊谷さんとのご縁は、去年のATC展でお隣に飾らせていただいたことでした。その時から素敵な作品を作られる作家さんだな〜と思って印象に残っていました。
熊谷さんの作品はクレヨンスクラッチという技法で書かれています。
クレヨンスクラッチとは、小さい時に1回はやったことがあるであろう、あれです。カラフルにベタ塗りした後に、黒のクレヨンを塗って、そのあとに爪楊枝でひっかいていくと…。下に塗ったカラフルな色が出てくるあれです。誰でも、一回くらいは遊んだことがあるのでは?
知ってる!
アクリル絵具で塗った上に黒のクレヨンを塗って削っているそうです。作品すごく素敵なんですが、写真だとちょっと暗く写ってしまうんですよね。実物は黒の部分にも色の部分にも独特の艶もあって華やかです。
そう、それはちょうど銀座中央ギャラリーのミニ額まつりの前日でした。寝る直前にTwitterをなんとなく見ていたところ、ぱっと熊谷さんの作品が目につきました。無意識にいいねを押したところまでは覚えていますが、そのあと寝落ちしました笑
枯葉、結構眠りにつく直前に、直感的な行動をしていることが多いです。
そして、その夜、なんとも不思議な夢をみました。この作品をお迎えする夢です。
その次の日が展覧会初日。「なんだろう?これは予知夢か?正夢か?」と胸がざわざわし、急に作品をお迎えしたいと思いました。(もはや作品をお迎えしなくては、という謎の使命感)
その日は予定がつまっていたのですが、合間の時間を縫ってギャラリーまで行ってきました。
ギャラリー到着!左上の作品です。パッと目につきますね(私だけ??)
実物、写真よりもさらに素敵でした!
ちょうどぴよこさんに遭遇(ぴよこさんのブログ大好き)
一応ギャラリー内を巡回して、他の作品も拝見しました。他にも素敵な作品たくさんあったのですが…
でも私の心は決まってる!
価格が分からずに伺ったのですが、現場で予算内に収まることを確認して、お迎えさせていただきました!!お会計を済ませた瞬間、多幸感に包まれました。作品を受け取りに行く1週間後が楽しみ。早く1週間過ぎれ〜〜。
作品を受け取ってみて
1週間後、作品を受け取りました。1週間で作品に対する気持ちが薄くなるかな?と思ったのですが、そんなことはなかったです。とても楽しみにしていました。
家にあけてオープン!!
やっぱり素敵!とてもいい買い物をしました(私、さすが)
お気に入りポイントをあげていきますね。熊谷さんの作品はクレヨンの黒に繊細なスクラッチが施されています。ベースはクレヨンの黒なので、色は全体的に暗めです。ですが、この作品は切り抜かれているので、背景とのコントラストがはっきりしていて、とてもこの黒の色彩が映えるんです。この葉っぱのギザギザしたエッジの感じ、とてもよいです!そして少し浮いているので、影が背景に写っているのもしゃれています。光源がどちらにあるかによって影の表情も変わります。
そして大好きな紫陽花の花!「テーブルランジア」は小さめの紫陽花の品種なんですね。ということはこの黒猫の妖精はすごく小さい…。こんなサイズ感を感じられるところもいいですね。ちょっとファンタジーな要素も枯葉好みです。
家ではギャラリーのように直接ライトがあたらないので、少し見え方は違いますね。とりあえずリビングに飾って、そのうち自分の作業机に引越ししようと思います。暗いところでランプの光にあてたい。色々な楽しみ方ができるのも、お迎えした人の特権ですからね。
作品をお迎えしてみてどんな気持ちになったか
ここ、重要ですよね。
ホネ山さんの記事にも触発されています。
自分とご縁がある!と思った
今まで描く専門で、絵を購入したことがなかったので、正直絵を買う人の気持ちは分かりませんでした。想像するしかなかったです。今回やっと分かった気がします。まだ1枚目ですけど、でもこの1枚目というのが重要な気がしてます。
静かな興奮と多幸感、これでした。
はじめて作品買われる方が、すごくすごく時間をかけて決断されていて、「確かに安い買い物じゃないものね」と思っていたのですが、どうやらそれだけじゃないなと。(1枚目を買う方はすごく迷われて、いったん家に帰られてもう一度会場にいらしたり、会期が終わってから「やっぱり」と連絡くださる方が、すごく多いです。そして2枚目以降はわりとあっさり決断されるケースが多いです)
迷う人が多いんだね。
「絵を買うのはハードルの高い行為」なんですよね。
(同じ価格でも家電とかだったらそこまで迷わないと思います。)
「作品を買うことで、自分にはない新しい価値のものを、自分の生活に取り入れる」かどうかを迷うんだと思います。
正直絵を買ったことのなかった私にとっても、「絵を買うのは少しハードルの高い行為」でした。
今回、お迎えに踏み切ったのは、SNSでちらっと見かけた(たぶん数秒しか見ていない)だけの作品が、夢にまで出てくるほど深く脳裏に刻まれてしまったらしいということに気づいたからです。なんとなく自分と特別な縁がある!と思ってしまったんですね。
何か自分の中にある好みや価値観が作品と合致した時に、そのハードルを超えるんだな〜と思いました。今回私はそのハードルを超えたので、次は気軽な感じで作品を購入する気がします。
以前にこんなツイートをしました(もう表示されないので文字情報だけ)
お迎えの理由を伺っていると「家族に似てる」「昔の彼女に似てる」「自分の誕生花や誕生石が描かれてた」など、その方と個人的な何かが、購入の一押しになっていることが多い気がしています。 過去に「作品がお迎えする人を選ぶ」と仰っていた方がいて、なるほど、と思いましたね。
また、「単純に作品として好き」というのと「お迎えして所有したい」というのはまた少し別の感情だとも思いました。手元に置いて飾りたいな〜というもの。作品としてよいというのとはまた別に、どこか自分にとってよいものを手元においていつでも眺めたいという感じなんですよね。
いいと思ったものを推せる喜び
また、絵をお迎えした時に何とも言えない多幸感がありました。うまく言葉では表せないんですが。もちろん希望の作品を買えたという嬉しさもあるのですが、これはどちらかというと作家さんを心から応援する気持ちなのかもしれません。
こういう考え方はよくないの重々承知ですが、今まで作家さんは自分のライバルだと思っていました。やっぱり自分の作品ではなく別の作家さんの作品が選ばれると、いいなあとちょっぴり妬ましく思ったり、いい作品を作られる作家には「ぐぬぬ」と闘争心が湧くことも。
強い気もちも大事だけど…。
でも今回買う側に回ってみて、「作家さんを心から応援する立場」に立ったことで、見方がガラッと変わりました。作家同士切磋琢磨する立場でもあるし、応援する立場でもいいんだなって。いや、当たり前だけど、作家だけど、別の作家さん推してもいいのか。
ちょっぴり黒い気持ちから、びっくりするほど解放された自分がいました。
これは大好きな画材をレビューして、みなさんに紹介する時と同じ幸せな気持ちなんです。
これを今回体験できて本当によかったな!と思いました。
絵を購入したことのない作家さんに
うん、絵はお迎えしてみることをおすすめします。というより、お迎えしたくなるような作品を探してみた方がいいという感じかな。
私もそこそこ作家生活してたけど、購入する方の気持ちは想像上のものでした。「なんとなくこんな感じかな〜」と思っていましたが、ちょっと想像とは違ったものでした。もちろん絵を購入されるかた一人一人によってちがうんでしょうけど。
絵を制作していく上で「お迎えする人の気持ちを知る」のは大事なことのような気がしました。これは価格面や絵の見せ方、梱包、お礼状など、どういうふうにしてもらった自分が嬉しいか?というのも参考になると思います。(値段で悩む人も、他の人の作品を購入する立場になると、適切な価格が見えやすいかも)
また、作家は作品を「優れているか、そうでないか」みたいな尺度で測りがちなんですが、「欲しいか、そうでないか」という価値観も知った方がいいと思いました。「欲しいかどうか」で考えるとまた違った世界が見えてきます。
1枚くらいお気に入りを見つけて、お迎えしてみてもよいと思いました。最初の1枚はミニ原画が手頃でいいと思いますけど、F4くらいになるともっと絵のエネルギーが違うんでしょうね。
そして欲しいと思った時が吉日!
その作家さんはどんどん出世して価格が上がって買えなくなるかもしれない(よくある)
その作家さんは作風ががらっと変わってしまうかもしれない(よくある)
その作家さんは手頃なミニ作品は作らなくなるかもしれない(ミニサイズはコスパが悪いしね)
その作家さんは筆を折ってしまうかもしれない(忙しくて中断した作家さんも、作品が売れたという実績があれば戻ってくることが多い)
ずっと今と同じ状況が続くとは限らないので、なので今!推すことが大事なんですよね。
応援しよう!!
そして、本当に心から気に入った作品がいいです!!コレクターの方もおっしゃってましたが、付き合いだから、知り合いだから、お世話になったから、人気だから、で買うもんじゃないと!私も同意です。自分の心の声に従って、心から気に入ったものがお迎えできると、何かが変わってくる、そんな感じがしました。
ギャラリーのオーナーさんは「作品をお迎えする作家さんは伸びる!」とおっしゃってました。なんでかな〜と考えていましたが、それは自分とは別の価値感を認めることができるから、ということなのかな、と考えています。枯葉は自分の作品が大好きな画家なんですが、でもちょっと自分にはない価値観をいい形で取り入れて変化していきたいと思いました。私も伸びていきたいです。
そして、いつも自分の作品を求めてくださる方も改めてありがたいなと思いました。やっぱり応援してくださる人がいないと、続けていくのは難しいです。
またお気に入りが見つかったらお迎えしたいなと思いました。今度は〇〇さんにオーダーしてみたいな、〇〇さんの大きな作品が欲しいな…。夢膨らむ…。
キリがないやつ…