絵のタイトル。つけるのが得意な方もいれば、毎回毎回悩む…という方もいるのでは?そんな絵のタイトルについて、語ってみたいと思います。
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意外と印象に残る絵のタイトルについて
展覧会を見に行くたびに、絵はもちろんですが、意外と印象に残るのが絵のタイトル。
タイトルって作家さんのセンスというか世界観が出るなあと興味深く見ています。
タイトルのおかげで絵の世界が何倍にも広がっていくこともあるし、相乗効果で心に残り続けることもあります。
今までよかったなあと思う絵にはとてもいい題がつけられていてやっぱり記憶に残りやすいのです。
タイトルはとても大事だと思っているので、自分の作品につけるときは、けっこう考えています。
もちろん「無題」や「A、B、C」「1」「2」「3」のような記号番号のタイトルではいけないというわけではないのですが、やっぱり「ことば」のタイトルがついていないのはもったいないと感じるようになりました。
いままで、ドローイングには記号や番号をつけて展覧会に出していましたが、最近どんな小さな作品でもタイトルをつけることにしています。
やっぱりタイトルがある方が自分の世界観が打ち出しやすい!
そこで絵のタイトルをつけるときに考えていることをまとめてみたいと思います。
タイトルって何だろう?
タイトルは絵のテーマではないかと思っています。
単純に、絵に何が描かれているかの説明であることもありますが、もっと深いその絵の主題「テーマ」であることもありますね。
タイトルは絵だけでは読み解くことができない部分に関する文字の情報です。
作家さんは全ての場面で全ての人に絵の作品解説をできないですよね。基本は絵だけを見てもらうのですが、その時に唯一の文字情報がタイトル、題名です。
上の絵も「幸福の王子」というタイトルがないと、何を描いたものなのか全く分からないですよね。
見ている人からすると、その絵を読み解く唯一の手がかりという感じかな。
タイトルのつけ方で絵の意味合いがガラッと変わってきてしまうこともあります。
タイトルいつつける?
タイトルはどのタイミングでつけるのでしょうか?枯葉の場合は色々です。
パターン1:描く前からしっかり決まっている
こういうときはだいたいどんな絵にするか、構図などもしっかり決まっていることが多いです。落書きラフ(と私が勝手に呼んでいるノートに殴り書きしたラフ画)にタイトルが一緒に描かれてます。こういう感じの絵をこういう風に描こう、という方向性がはっきり決まってます。大抵最後までブレません。
パターン2:描いている途中に決まる
描きながらタイトルはふっと決まることもあります。こちらは描きながら絵の方向性が見えてきたことが多いです。このパターンも多いですね。タイトルは直感的に決まるので、「なんとなくコレ!いやコレしかない!」という言葉が浮かんだら、それがそのままタイトルになります。
タイトルは色味にも左右されることもありますね〜。
パターン3:途中で違うタイトルに変更になる
これは描きながらテーマが少し変わったり、語感がしっくりこなくなったりして、途中で絵のタイトルを変更したパターンです。語感は結構大事です。直感なので、何となくこっちの方がいいかも、と思うこともあります
この絵はもともと「色彩の魔術」というタイトルがついていました(左下の文字、うっすら見えるでしょうか)ただ、女王が持っているのが筆であることが、はっきり分かりにくいのでタイトルを「魔法の絵筆」に変えました。絵の意味合いも微妙に変わってきますよね。
パターン4:描きあがってから決める
なんでなのか分かりませんが、なかなかタイトルが決まらないこともあります。作品の大きさやクオリティとは関係ないと思うのですが…。なかなか思いつかないときはアイディア帳から探すこともあります(後述します)
↑なんでかタイトルをつけるのに苦労した作品。
面白いなあと思うのは、しっかりコンセプトが決まっている絵には、最初からタイトルも決まっていることです。たいてい作品作りがしっかりできているときほどタイトルも明確です。探り探り描いた絵にはなかなかタイトルは思いつかないことが多いです。
ただ、どっちのスタイルの制作も大事にしてます。
タイトルのつけかた、ことばの選び方
絵のタイトルをつけるときに意識していることは3つあります。
難しい言葉を使わない
抽象的すぎるタイトルにしない
絵から離れない
難しい言葉を使わない
これはブログで文章を書くときにも意識しています。難しい言葉を使うとカッコ良く見えるのですが、タイトルはじっくり読みこむものではないので、老若男女どんな人にも伝わりやすい言葉を選ぶようにしています。
もっと具体的にいうと、難しい漢字を使わない、読みに迷うような漢字を使わない、なるべく日本語のタイトルにするなどです。中学生くらいの子が理解できるものくらいを基準に考えて難しいかも?と思ったらふりがなをふったり、思いきってひらがな表記にしています。
私も木花咲耶姫はコノハナサクヤヒメとふひがなをふったりしています。
「在りか」を「ありか」、「細波」を「さざなみ」、「帳」と「とばり」にしたり。「茨姫」も「いばらひめ」としています。
読めるかどうか、というより「ぱっと見て、音で想像しやすいか」
ということを意識してます
漢字の方が雰囲気が伝わることもあるので、難しいところですが…。
英語のタイトルもよく見かけますが、意外と英文字は日本語に比べて目に入りにくく、簡単な単語でもわりと目がスルーしてしまうことが多いらしいです。私は英語の題名をつけたいときは同じ意味の日本語のタイトルも一緒につけることにしています。
タイトルはじっくり読みこむものではなく、パッと見て直感で感じるものなので、とにかく分かりやすくシンプルに。
抽象的すぎるタイトルにしない
抽象的な言葉を使うと絵の印象が寝ぼけること多いです。「どうとでも取れる言葉」は私は個人的に避けています。
よくタイトルで使われているのは「約束」「秘密」「夢」「想い」「innocence」など。(けっこう同じタイトルの絵を見かけます)こういう言葉は具体性に欠けるので、どうとでも解釈できて、タイトルとしては使い勝手がいいのかも。
が、個人的にはもう一工夫欲しい!
私は「〇〇の約束」や「〇〇の夢」など少し具体的にすることにしてます。
あとあまり範囲の広すぎる言葉もタイトルとして機能しにくいです。タイトルは差別化というかラベルの役割も果たすので。たとえば「海」「花」「空」では指す範囲が広すぎて、分かりにくさがあります。
「春の海」や「約束の花」「曇天の空」など、他の単語と組み合わせればイメージが絞られて、個性が出ますしコンセプトが伝わりやすいです。
「空」とか「花」とかタイトルだけではイメージしにくいかも…
もう少し具体的にしてみるのがおすすめです!
個人的にはシンプルなタイトルが好きなのですが、それがあまりに抽象的でぼんやりしてないか、もやっとしていないかは意識しています。
絵から離れない
絵の内容とあまり離れないことも意識しています。絵の内容とタイトルが離れると、ちょっとミステリアスにはなったりストーリーが生まれることがあり、それも悪くないのですが、やっぱり程度問題だと感じます。
抽象的な作品やシュールレアリスム的な絵には、全く絵の内容と関連のないタイトルがつけられたりして、謎めいて難解ですが…
個人的にはおすすめしない…
ウン、なんか難しい感じがしちゃうもんね…
自分のことでいうと、タイトルと絵が一致しにくく、自分でもタイトルを思い出せないことが多いです。
絵に描かれている内容と合っている、シンプルなタイトルの方が長い期間覚えていられて、定着しやすいです。(活動年数が多くなり、作品枚数が増えると、絵のタイトルが思い出せないはよくあります)
タイトルが登場人物の内面を言及するようなものや、セリフの一部のようなタイトルも、素敵ですが、やっぱり絵の内容とぴったり一致しにくいことも多いです。全ての絵をこのタイプのタイトルにすると管理が難しくなりそうです。たとえば「私を忘れないで」「さよならと言わないで」のような感じ。
タイトルは直感なので絶対にこれがいい!この言葉が浮かんだ!という場合はそれで良いと思ってます。が、少し時間を置いて、これは絵にフィットしてるかな?というのはじっくり考えています。
名詞?orぶったぎり系?
タイトルにも色々パターンがありますが、主にこんな感じなのではないでしょうか?
めいし?
ぶったぎり?
名詞形
タイトルをものの名前にするパターンです。具体的にいうと「〇〇」「〇〇の〇〇」「〇〇と〇〇」「〇〇する〇〇」のような感じですね。一番よく使っているパターンです。
「〇〇」は「回転木馬」「舟歌」「いばらひめ」「夜想曲」のような感じ。もっともシンプルなパターン。シンプルなので、選ぶ言葉があまり一般的すぎないことを注意してます。
「〇〇の〇〇」は一番多いかも。「記憶の果て」「星の歌声」「白亜の夢」「砂の城」「早春の息吹」「さざなみの調べ」「星のありか」「魔法の絵筆」など。このパターンは逆に2つの単語が両方とも分かりやすい言葉になるように意識しています。
「〇〇と〇〇」はあまりないのですが、「月と海」「猫と少女」2つのモチーフが並列になるイメージですね。
「〇〇する〇〇」も少ないですが、「眠れる森」「眠れる人魚」「忘らるる町」「輝く島」「終わらない夢」「忘れえぬ記憶」など。
文章ぶったぎり系
文章をぶったぎった感じのタイトルですね。
「また会う日まで」「夢を抱いて」「私を忘れないで」「私の名を呼んで」「流れ星をひろう」「月明かりに誘われて」「まだ見ぬ海をめざして」「月をさがして」
など。。よりストーリーの一部であることが感じられるタイトルですが、センスが必要というか難しい!と毎回思います。
なぜか、自分でつけたタイトルなのに、思い出せないことが多いです。すべてのタイトルをこのパターンにはしないほうがいいかもと思っています。こういうタイトルは英語に訳すのは難しいですしね。
絵のタイトルで絵のイメージも変わる?
絵のタイトルで絵のイメージも変わってきますよ。ほんのちょっとのことですが、どこに注目させるかが変わってきます。
絵の中のメインディッシュはどこなのか?焦点をあてる場所が変わってきます。
この絵は最初「夜のとばり」と「月を探して」の2つのタイトルで迷っていました。
結局フォロワーさまたちのご意見を参考にして「月をさがして」となりましたが、それぞれのタイトルで絵の見え方も少し変わってくると思いませんか?
他の人のつけたタイトルを使ったらダメか?
タイトルは少なからず他の人とかぶってしまうことがあります。そもそもタイトルにできるような言葉は限られているので、似たようなタイトルになってしまうことはよくあります。
実は映画・楽曲・本の題名は著作権が適用されないのです。絵のタイトルについても同様かと思います。
そうなんだ!知らなかった!
短い言葉の表現に著作権を認めてしまうと、後世の人の創作活動に支障が出るため、そうなっているみたいですね。なるほど!あまり気にせずつけていいんですね。
そういえば、私もクラシック音楽のタイトルをそのまま絵のタイトルにつけてることとかありますね〜。とくに問題ないようで安心しました!
ただ、やっぱり創作的なタイトル(作家さん独特の言葉運び)をそのまま、自分の作品につけてしまったりすると、トラブルになる可能性もあるのではないかと思うので、^そのあたりはご注意を。
最近感じた日本語の奥深さ
最近はあえて日本語のタイトルをつけることが多いです。
やっぱり日本語は同じような意味でも単語のバリエーションが多く、カタカナ表記をふくめると同じものでもいろいろな言い方があったりします。で、それぞれにすこしずつ違ったニュアンスがあったりします。本当に奥深い!
例えば流れ星ということばですが、「流れ星」としたときと「流星」としたときでは、使われている漢字は同じですが、音の響きが「ながれぼし」と「りゅうせい」で全然違います。
「ながれぼし」というと柔らかく優しいイメージですが、「りゅうせい」となるともっと硬質でかっこいいイメージです。言葉によって、イメージが変わるなあと思います。
これは枯葉の描いた「流れ星をひろう」という作品ですが、やっぱり女の子(子供)がメインの絵だったら断然「ながれぼし」の方がふさわしい感じがするのです。
「流星」をタイトルに使った絵は、少年が馬に乗って空を駆ける絵にしようと思っています(これから描く)
流れ星をひらがな表記にして「ながれぼし」とすることもできて、そうするとさらにバリエーションが増える感じです。
他にも色々あります✨
「月の光」つきのひかり→「月光」げっこう こちらも使われている漢字が同じなのに、音が全く違うせいかイメージが変わりますよね。
「ガラス」→「硝子」 こちらは読みが同じですが、漢字表記にすると随分と印象が違います。硝子はあまり見慣れてなくて、ぱっとは音変換できないのがミソです(こういうのをあえてつけるのもいいかも)
「回転木馬」も「カルーセル」でも「メリーゴーランド」と表記でき、それぞれに微妙に違ったニュアンスがあります。外国語=そのまま日本語で通じる外来語も多いのですよね。
「雨」だけでも調べてみると「風雨」「雷雨」「霧雨」「春雨」「長雨」「大雨」「梅雨」「小雨」「五月雨」「時雨」「桜雨」「白雨」「氷雨」「寒雨」「慈雨」「霖雨」「冷雨」「暴風雨」「天気雨」「通り雨」などなど、あふれるように言葉が出てきます。
これらはほんの一例ですが、タイトルを考えていると、日本語はバリエーション豊かで、知れば知るほど奥が深い!語感も豊かで、絵の微妙なイメージにぴったりのものを見つけることができるのではないか…と色々考えてしまいます。
なので最近は日本語の響きを大事にしたいな、と思ってます。
(英語の訳はあとで考える〜)
絵のタイトルのアイディア帳をつけよう
でもなかなか絵のタイトルが思いつかない…
という方にはアイディア帳をつけることをおすすめします。さきほどお話ししたように、小説や音楽のタイトルを使うことは問題ないので、「いいな」と思ったものがあったら、メモしておきましょう。
私もモレスキンのノートにことば集めをしています。タイトルに「よさそう!」と思った言葉をひたすら書き留めています。実際に使えそうかどうかは置いておいて、とにかくメモメモ。
描いてみたいモチーフを書き並べてみるのもいいですね。花の名前を調べてみるとか。花を調べたついでに花言葉を調べるとか。タイトルに直結しなくてもいいので、気になるものを並べていくだけでも何かのヒントになります。
日本語の季節の言葉なんかも参考になりますよ!美しい言葉がいっぱい。
ノートに書き留めた言葉から、作品にタイトルをつけることもあるし、逆に書き留めた言葉から構図を思いつくこともあります。とにかく「言葉を集めていく」のは、何かのヒントになると思いますね〜。
ことば集め!
楽しそうだからやってみよ〜。
「何を描いたらいいかわからない」というタイプの人の処方箋にもなると思います。
センスを磨くのは「好きなものを集める」ことから。
そしてタイトルを考えるのは、作品の「テーマ」を考えていくことと直結しています。絵を描いたら、絵のタイトルについても考えてみてください〜!
今回色々なことを書いていますが、あくまで枯葉個人の考えなので、参考までに。意外なタイトルや複雑なタイトルが効果的な場面もあると思います。自分が他の人の作品を見るときにも「タイトル」と「絵の内容」の関係に注目してみると、何か収穫があるかもしれません♪