今回は、アクリル絵具と水彩絵具を比較してみようと思います。水彩絵具とは透明水彩のことも指すし、不透明水彩のことも指します。
このサイトは、主に透明水彩についてフォーカスしているので、アクリル絵具が透明水彩の代用品として使えるのか?という点にも焦点をあてたいと思います。
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アクリル絵具と水彩の違い(成分)
絵具は「顔料」という色の粉と「メディウム」という顔料を紙などに固着させるもの、2つの物質が混ぜられてできています。

アクリル絵具も、水彩絵具も「顔料」は実は同じようなものが使われています。
違うのは「メディウム」です。

アクリル絵具の場合はアクリル樹脂、透明水彩の場合はアラビアゴム、がメディウムとして使われています。

顔料は同じで、ちがうのはメディウムなんだ!
ですので、アクリル絵具と水彩絵具は全く別の画材ということになります。

両方とも、「水に溶かして使える絵具」という共通点はあるんだけどね
なので、アクリル絵具と水彩絵具は混ぜて使うことができません。
(乾いてから、重ねる分には問題ないです。)
アクリル絵具と水彩絵具の違い(特性)
1.耐水性
アクリル絵具は一度乾くと、水に溶けません。
水にといて使う絵具なのに、乾くともう水に溶けない、なんて魔法のようですが、この特性が、普通の水彩絵具と一番違うところです。
乾いた後に、何度も色を重ねることができます。
その代わり、修正もできないです。一度乾いてしまうと取れないので。よく注意しながら描きすすめていきます。

そして服に絵具がつくと取れません。

ぎゃ〜〜
羽毛についたアクリルが取れない!
普通の水彩絵具は耐水性はありません。なので、色を塗った後に、色を重ねると下の色が溶けてしまうことが多いです。そのかわり、修正したり、リフティングの技法をすることができむす。
ただ、水彩紙によっては、色を重ねられるものもあります。かなり紙に左右されるのが透明水彩の特徴です。
2.接着性
アクリル絵具は何の上にでも描けます。
紙でもキャンバスでも、板、布、石など、絵具がくっつきやすい性質を持つので、色々なものに絵が描けてしまいます。また絵具自体のひび割れしにくい(ニューンと伸びる)ので、曲面にも絵具をのせやすいです。

こんな画材は他にはありません!
これはアクリル絵具の優れた特徴の一つです。
ただ、つるつるしたプラスチックなどには描けません。
一方水彩絵具は、紙の上にしか描けません。
そして描き心地は紙の種類にも左右されます。
3.速乾性
アクリル絵具は乾くのが早いです。これは水彩との比較というより、油彩と比べて、の特徴になるかもしれません。
とにかく乾燥が遅い油彩と比べ、アクリルは乾くのが早く、どんどん重ね塗りができます。スピード感を持って制作できます。
ですが、そのかわり、グラデーションやムラなく塗るなど、じっくり仕上げたい時には「早く乾く」という特性が仇となります。水彩の代わりに使う場合でも、早く乾いてしまうので、ウェットインウェットでにじみが大きく広がらなかったりします。
が、アクリルはメディウムも豊富なので、「リターディングメディウム」という乾燥を遅らせるメディウムで、乾く時間を操作できます。
4.耐光性
アクリル絵具は色あせしにくいです。
水彩絵具も、画材店に売っているようなものであれば、そう簡単に色あせしたりしません。
が、例えば、野外で飾るとか、室内でも日が差し込むような場所に飾りたい、という場合は、アクリル絵具の方が色あせには強いです。
私も自分で描いた水彩画を、西日が差し込む部屋2年ほど飾っていたことがありましたが、少し色あせしてしまいました。
アクリル絵具は不透明水彩の代わりになる?
水彩絵具は透明水彩と不透明水彩の2種類に分けられますが、その中でも「不透明水彩の代わりになるか?」お話ししたいと思います。
ちなみに不透明水彩とガッシュは同じものです。
結論からいうと、
アクリル絵具は不透明水彩の代わりに使うことができる
不透明水彩の代わりに使う場合、かなり使いやすいです。
先ほどお話しした通り、アクリル絵具は、乾くと水に溶けないという性質があります。なので何度も色を重ねられます。これによって、修正をしたり、細かいところを後から描き足すことが、圧倒的にやりやすいです。
不透明水彩は、色を重ねると、下の色が動いてしまうことがあるので、なるべく、色を重ねない描き方の方が(塗り絵のような感じ)いいと思います。
なので、不透明水彩を使っていて、描きづらさを感じる場合は、アクリル絵具を使ってみることをお進めします。
アクリル絵具は透明水彩の代わりとして使えるか?

アクリル絵具で透明水彩風の絵が描けたら便利そう♪
透明水彩は絵具に透明性があるので、色のついたセロファンを重ねたような表現ができて、とてもきれいです。


にじませたり、ぼかしたり、重ねたり…
透明水彩らしい表現だよね
このような絵をアクリル絵具で描くことができるか?というと…
アクリル絵具で透明水彩風の絵は描けるけど、全く同じではない
という感じです。
アクリル絵具は一度乾くと水で溶けない性質があるので、何度も色を重ねることができます。上から色を塗っても下の色がにじんだりしません。つまりアクリル絵具は重ね塗りに強いです。ただ、重ねすぎると、分厚くなり透明水彩風にはなりません。
あと、アクリル絵具では、「透明水彩ほど、にじみがきれいに広がらない」です。そしてぼかしやリフティングのテクニックもほとんどできません。

全く同じというわけにはいかないか〜
なので、全く同じようなものができるわけではありません(ただ、作品として仕上がってしまうとあまり見分けがつかない)

オススメのアクリル絵具
あと、アクリル絵具を「透明水彩のように使いたい」場合、一般的なチューブのアクリル絵具よりも
粘度が低い(サラサラしている)アクリル絵具がおすすめです。
ホルベインアクリリックインクや、リキテックスのリキッドタイプなんかがおすすめです。
ホルベインのアクリリックカラーインクはボトルが大きいのがちょっと難点ですかね。場所とる!上のセットはお試しサイズで小さくておすすめです。
リキテックスリキッドはサイズも小さく保管しやすいですね。私も7色持ってます。
これらはカラーインクほどの粘度なので、慣れない人には扱いが難しいかもしれません。私には混色がちょっと難しかったです。こっち↓のフルイドタイプくらいが使いやすいかも…
一般的なチューブタイプと比べると色数が少なかったりするのですが、アクリル絵具は混色で色が濁りにくいので、少ない色数でも十分絵が描けます。
まとめ
- アクリル絵具と水彩絵具は、メディウムが違うので基本別物。
- アクリル絵具は、水彩絵具に比べて、耐水性、接着性、耐光性などすぐれた特徴がある
- アクリル絵具は、不透明水彩の代用品として、とてもいい!
- アクリル絵具は、透明水彩の代用品として使えるけど、全く同じにはならない(でも可能性あり!)
アクリル絵具は、とても優秀な画材です。ただ、優秀すぎて、できることが多すぎます(笑)
使う側が、ちゃんと目的意識を持っていないと、どこから手をつけていいか分からないし、迷走しがちです。
アクリル絵具は、今まで不透明水彩やポスターカラーで描いていたような、マットで厚塗りのイラストも描けるし、もっと厚塗りの油彩風の絵も描けます。最近は、インクタイプも増えて、透明水彩風、カラーインク風の透明感あふれる絵も描けるようになってきました。メディウムも種類が豊富なので、盛り上げたり、艶を出したり、ざらざらにしたり、とにかく「なんでもできる」のがアクリル絵具です。
ですが、「なんでもできる」からこそ「こんな絵を描きたい」というビジョンがないと、難しい画材でもあります。
他のジャンルと違い、アクリルの技法書やマニュアルがあまりありません(作れたら面白いな)
「アクリル作家」と名乗る人があまりいないのも、画材で表現できる幅が広すぎるからです。
今、水彩を使っている作家さんの中には、おそらく「アクリル絵具の方が向いている人」も必ずいるはずです。描きあがったものの見た目は、そこまで差がありません。それなのに、アクリル絵具にはメリットがいっぱいあります。気になる人はぜひ、アクリル絵具にもトライしてみてください!