今回は透明水彩の代替品としてのアクリル絵具について語ってみたいと思います。アクリル絵具は、色々な種類がありますが、「こういう風に使いたい」というはっきりした目的がないと選びにくい画材でもあります。
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アクリル絵具が透明水彩風に使える?
透明水彩はとても気軽に扱える画材ですが、描いていくと意外に難しい画材でもあります。
重ね塗りがうまくできなかったり、技法も紙に影響を受けやすいです。
なので、紙や絵具の予備知識が必要になってくることも多いです。
悩みを解決するのが、アクリル絵具です。
アクリルというと厚塗りをイメージしてしまうかもしれませんが、実は透明水彩風に使えるアクリル絵具もあります。
アクリルでも透明水彩風の絵が描けるんだね
アクリル絵具のすごいところは、乾くと完全に耐水性になるということ。上から、色を塗っても、絶対に下の色は溶けません。なので、何度でも重ね塗りをすることができるのです。
どの種類が、透明水彩風に使うのに適している?
このようなチューブに入っているタイプのアクリル絵具が一般的です。一番お店で見かけやすく、一般的なタイプです。アクリルの分類でも書いているのですが、マヨネーズくらいの硬さです。
これは一番よく見かけるタイプ
これでも、透明水彩風に描くことはできるのですが、ちょっと硬いかな…!水で薄めなくてはいけないので、色も淡くなりがちです。
もっとサラッとしたものが売っていて、それが、フルイドタイプ(ソースくらい)とインクタイプ(しょうゆ)です。
透明水彩風の絵を描くのには、フルイドタイプとインクタイプがおすすめです。
フルイドタイプは数年前は、数社から販売されていたのですが、急激に廃盤、取り扱い終了が決まり、今はホルベイン一択になっています(涙)アクリル絵具は、あまり使い方の情報が出回らないので、とても使いやすいのにも関わらず、手に取る方が少ないのだと思います。特に、フルイドとインクに関しては、ほとんど情報がないです。
インクタイプはホルベインとリキテックスのものがあります。
透明水彩風に使えるアクリル絵具をいくつかご紹介し、アクリルで描いた透明水彩風の絵も描いてみたいと思います。
リキテックスリキッド(インクタイプ)
リキテックスのリキテックスリキッドです。
全30色 700円
液体状のアクリルでさらさらしています。普通のアクリル絵具は、硬めなので透明水彩のように薄塗りするにはかなり水を加えなくてはいけません。なので、色もメディウムも薄くなります。こちらのリキッド状のアクリルは、もともとインクのような液状の絵具なので、水で薄める必要がありません。なので、とても濃い色も使うことができます。
塗った感じはかなり透明水彩に近いね
透明水彩のように、にじみをつくったり、色を変化させることもできます。透明感があるので、重ね塗りもきれいにできます。
乾くと耐水性になるので、重ね塗りを楽しめます。しっかり乾いてから重ねます。
ただ、紙によってはにじみどめが弱い紙では滲んでしまったりすることもありますので、紙選びは慎重に。
あとは下の方で紹介するフルイドタイプに比べてエッジが出来やすいです。さらさらで、水彩に似ている分、扱いが難しい一面もあります。
色は鮮やかで、混色しても色が濁りにくいです。もちろん渋い色も作れますが、かなり鮮やかにも塗ることができます。
このリキテックスリキッドは色数が少ないです(全30色)
でも透明水彩に比べて、色が濁りにくいので、色数は少なくても混色でたくさん色が作れます。
ボトルはカラーインクのようにスポイト式で、スポイトで絵具をとり、パレットにうつします。かなりさらさらした液体なので、平たい紙パレットだと流れてしまいます。梅皿のようなお皿型のパレットがあるといいかもしれません。
かなり透明感がありますので、カラーインクのイメージに近いかもしれません。
ホルベインアクリリックインク
ホルベインアクリリックインク
全49色 850〜1850円
リキテックスリキッドと同じく、さらさらのタイプのアクリル絵具です。粘度は同じくらいだと思います。こちらも薄めずに使うことができるので、色や溶剤を薄めることなく、濃いまま塗ることができます。
透明水彩のようなにじみを作ることができます。はじめから色のついた絵具なので、絵具を垂らしたりすることもできます。もちろん重ね塗りもOKです。
とくに、このアクリリックインクはつけペンにつけたり、エアブラシに使用したり、空のペンに充填してマーカーに使用することもできるようになっています。4役くらいこなし、多彩な使い方ができます。
マーカーやペンに使えるのは便利だね!
ボトルは先端をねじって半回転させると、絵具を出すことができます。絵具を出す時にはボトルを逆さまにして出します。ドレッシングボトルをイメージするといいかもしれません。ワンタッチで使えるので、手が汚れませんし、かなり使いやすいです。時々、入口が絵具で固まってしまいますが、アクリルはフィルム状に固まるので、手で簡単に取れます。問題なし!
ボトルが開けやすく、使いやすいよ。
でもサイズが大きくて…
小さいものもあるといいなあ〜
難点はボトルが大きすぎて収納に困ることです。容量も、多いので値段も高いです。
半分くらいでいいのにな〜とよく思います。
試しに使ってみたいという時には、5色のプライマリーセットや3色のトライアルセットがおすすめです。通常のボトルは100mlですが、セット商品は30mlで、ちょうどいいです。30mlでバラ売りもして欲しいな。
ホルベインアクリリックフルイド
次に紹介するのは、ホルベインのフルイドです。
全60色
上記に紹介したインクタイプのものに比べると、少し粘度があります。ちょうどとんかつソースくらいでしょうか。
インクタイプほどさらさらしていないので、紙パレットでも充分使いやすいです。紙パレットが使えると、混色はとても楽だし、きれいに出来ます。
薄めて、透明水彩風にも使えますが、少し厚塗りすることもできます。にじみも作れます。どちらかというとフラットにベタ塗りしていく方が得意かもしれません。
色々な種類の表現をすることができます。重ね塗りももちろんできます。
どのような紙の上にも塗ることができ、扱いが楽です。薄めてもエッジが出来たりもしないので、仕上がりがきれいですし、安定しています。
蓋を開けて逆さにすると絵具を出すことができます。出しやすいです。
インクタイプよりどろっとしているので、扱いが楽かもしれないね
透明水彩と全く同じものが描けるわけではないですが、かなり肉迫すると思います。重ね塗りが何度でも出来ること、色が鮮やかであることは大きなメリットです。
私はゴールデンのフルイドをよく使っていましたが、日本での取り扱いはなくなるようです。あとはホルベイン一択。そこそこ色数もあるので、楽しめそうです。
この絵はゴールデンのフルイドタイプのアクリル絵具で描いています。そこそこ水彩らしさが出ていると思うのですがいかがでしょうか。乾くのが早いので、複雑に滲ませたりするのは難しいです。
どういうところが優れている?
鮮やかな色合いで表現できる
アクリルは色味が強いので、色をしっかり塗りたいタイプの人や、色鮮やかに表現したい人は、透明水彩よりも気にいるかもしれません。
混色見本も作ってみましたが、透明水彩よりも色が濁りにくいです。発色も全ての色が明るめでした。
写真では分かりにくいですが、肉眼だと、アクリルの方が鮮やかであることが、はっきり分かります。同じ顔料ですが、単色でも混色でもかなり鮮やかさがキープされています。
へえ〜
アクリルの方が色が鮮やかなんだ!
また、透明水彩ほど、顔料ごとの特性が感じられませんでした。なので、そこまで細かく考えなくても、色味だけで絵具を選ぶことができて気楽です。
明るい色が好きな方におすすめ!
紙に影響されない(安い紙でOK)
あとはどの紙にも同じような描き心地で描けるのも魅力です。安い紙でも表面強度さえあれば問題なしです。
アクリル絵具は接着力があるのでどこにでも描くことができます。透明水彩の場合は、紙によって描き心地が左右されますし(高い紙の方が使い心地がいい)絵具も顔料によってかなり差がでます。色々な意味で繊細な画材なのですね。
安い紙でも同じように描ける、というのはかなりメリットではないでしょうか…!
安い紙にたくさん練習したい人には
アクリルは経済的でおすすめだよ
重ね塗りに強い
アクリルは一度乾くと、耐水性になり、もう水で溶けることはありません。なので、上から色を重ねても、したの色が動いてしまうことはありません。重ね塗りにはかなり強いです。その反面、修正したり、エッジをぼかしたりということもできないです。
何度も重ねたいというときや、シャープに仕上げたい時に向いています。
アクリルの短所
乾くと固まってしまい、水で溶かすことができないので、紙パレットを使用することになります。絵具も、使うたびにチューブから出さなくてはいけないです。透明水彩に慣れてしまうと、この準備の作業が、とても面倒に感じます。
透明水彩は、パレットに出してある色、例えば24色を同時に絵に使うことができますが、アクリルの場合は全ての絵具をパレットに出す訳にはいかないので、必要な色だけ出します。混色で色を作る作業がメインになります。
そして乾くのが早いので、途中で作業を中断すると、その間にパレットの絵具が乾いてしまいます。
透明水彩を使い慣れていると、この辺りが煩わしく感じます。絵を描く時に、まとまった時間が取れる人であれば問題ないのですが、あいた時間に少しづつ制作するスタイルの人には使いづらさを感じてしまうかもしれません。
あと、筆についたアクリル絵具も固まりやすく、水で流しても少し残ってしまうので、傷みが激しいです。あまり高価な筆はやめたほうがいいです。特殊加工のナイロン筆がおすすめです。
試してみる価値あり!
透明水彩とアクリル、どちらが使いやすいかは人によると思いますが、透明水彩しか描いたことのない人はアクリルで描いてみるのもアリだと思います。透明水彩の弱点をカバーしますので。
アクリルでもかなり透明水彩風の絵を描くことができます。
画材そのものにあまり
こだわりがない人にはいいかもしれないね
透明水彩とアクリルを併用できるか、ということについてはまた別の記事に書こうと思います。
最近画材はどんどん進化して、画材同士の垣根はあまりなくなってきていると思います。顔料は同じようなもので、あとはメディウムの違いかな、という気もします。あとはどういう表現を目指すのか?
新しい発見があったら、また記事にしようと思いますのでお楽しみに〜。