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銀座中央ギャラリー第2回公募展「ヴァルプルギスの夜」の製作過程(水彩メイキング)を公開!(受賞しました、後日談あり)

最近嬉しかったことといえば、水彩マラソンを完走できたのと、公募展に入選して一次審査に通ったこと。とにかく作品を展示できるのが嬉しいのです。「やった、展示ができる〜〜!」ありがとうございます!嬉しいので、製作過程メイキングをお届けします!写真が多いので長いです!

追記:後日談になりますが、7月17日、作品「ヴァルプルギスの夜」は銀座中央ギャラリー賞を受賞しました。ありがとうございました。なので記事の後ろの方にそのことを追記しました。

公募展、何を描く?

今回、銀座中央ギャラリーさんの第2回公募展の一次審査を通過しました。作品をギャラリーに飾れることが嬉しいです。今回の作品、かなりこまめに写真を撮ったので、製作過程を公開してみようかと思います。

テーマ決め〜構図〜下書き〜着彩〜額装まで一連の流れを紹介します。参考にはならないと思うのですが、エンターテイメント的な感じでお楽しみください。

作品テーマは自由、サイズは4号サイズ(F4サイズ)とのこと。

最初は「鳥」と「音楽」をモチーフにした別の絵を描く予定だったのですが、唐突に「ヴァルプルギスの夜」という単語が頭から離れなくなり、このテーマで絵を描くことにしました。

ひよこ
ひよこ

何だろう?
お告げかな?

「ヴァルプルギスの夜」とは何となく耳にしたこともある方も多いかもしれません。「ワルプルギス」ともいいます。語感がキャッチーなためか、アニメやゲームなどでもよく使われていますよね。

「ヴァルプルギスの夜」とは北欧の春祭り(ちょうどゴールデンウィーク頃)の前夜祭として行われる「魔女たちの集会」なのです。

魔女をテーマにした作品をレパートリーに加えたいと思っていて。魔女というと、黒い服にとんがり帽子、ホウキに乗った魔女を思い浮かべてしまうのですが、それだとちょっとハロウィンぽいというか、仮装っぽい感じなんですよね。そういうのも大好きなのですが。

もう少しさりげなく普通の人間社会に溶け込んでいる魔女、というのが自分の中で描いてみたいものとしてありました。

と、私の魔女観は置いておいて、赤い星が光り、不思議なことが起こる、魔女たちの特別な夜というイメージを持って製作を始めました。

製作過程の写真をわりと細かく撮ってみましたので、追っていきながら製作の様子を見ていきたいと思います!!

どんな構図にする?

今回は色ラフもエスキースも作っていません(あまりじっくり考える時間がなかった)

最初はもう少し動きのある曲線的な構図を考えていましたが、公募に出すのだし、もっと強い構図…と思って、あまり余計な装飾は入れず、安定感のある三角の構図にしよう。と考えたのでした。

これは最初に考えた構図。ラフやエスキースなどではなく、ノートにざっと描いた絵メモです。絵のアイディアの種のような感じです。30秒くらいで走り書きしているので、本来お見せするようなものじゃないのですが…

最初のアイディアは追い風が吹き、煽られる感じの動きのある構図でした。顔もあんまり可愛くない…。

下地作り

下書き写真撮るの忘れました(下書きは赤紫色の色鉛筆で、水彩紙に直接描いています。頭の中でイメージは出来ているので、あとは描きながら探ります)いつもですが、透明水彩ではあまり下書きの線を描かないことが多いです。しっかり線をひくと塗り絵になってしまい、色塗りの自由度が減ってしまうからです。

下地を塗りました。背景は暗色にする予定なので、下地を塗るのは人物だけです。スピナルブラウンとポッターズピンクで下地をつくりました。これはシュミンケホラダムのツンドラオレンジが下地としてすごく便利なので、顔料の組み合わせのアイディアをもらいまいた。

最近ポッターズピンクの粒状化にはまっていて、色の組み合わせは違いますが、COLORs展の「魔法の絵筆」でも似たような下地を作ったことを、こちらの記事で紹介しました↓

(「ヴァルプルギスの夜」は「魔法の絵筆」の少し前に製作しました。)

粒状化は、ざらっとした感じや質感表現にすごく向いているので、今回もかなり思い切って色をのせています。顔だけ避けていますが、花を描く予定のヴェールの下の方など、触ってみても分かるほどにざらっざらです。

人物に色を入れていく

髪の毛やヴェール、服を塗り、ヴェールの下の方に花を描き始めました。髪の毛は珍しく黒髪。ただ黒髪を黒の絵具をべたっと塗るのではなくて、青や赤、オレンジを使ってブルーグレーの色調にしました(それぞれの色の馴染みを考えています)

目は最後に、という作家さんも多いようですが、私は早めに色を入れてしまいます。目に色を塗ると、下書きのときの表情とガラッと変わってしまうことも多いので、早めに方向付けをしたいんですよね。髪の毛が半透明のヴェールで透けている感じにします。花も少し増えました。

自分で製作過程を振り返りながら気づいたのですが、私が最初に描き込みをすすめている部分は、絵の中心になる部分(注目させたい部分)だったりしますね。

背景を塗る

まだ、人物の描写が進んでいませんが、先に背景に色を入れてしまうことに。特に色の濃い背景は、前景の人物と浮いてしまうことも多いので、馴染ませの作業が必要になります(とくに透明水彩は、絵具の質量が少ないので、濃い色と合わせると負けがちなので)なので、早めに濃い色を入れます。

これからアーチを描くので、どこにアーチのトップを持ってくるか悩みますが、この場所に決めました。マスキングをして一気に背景を塗りました。人物にマスキングはしていません。マスキングをすると、境界が不自然に浮いてしまうことが多いので、最近はあまりしなくなりました。夜空なので深い色にしましたが、真っ黒ではなく、赤みがかった紺色です。色が少し見えるように、若干ムラになるようにしあげました。(ムラなくしあげると真っ黒に見えてしまう)

マスキングテープ剥がす瞬間好き〜〜。気持ちいい。

真っ直ぐになってますね!これでOKです。次はアーチなのですが。。

よく連続したアーチを絵に描いているのですが、等間隔に配置していくのが結構面倒。長さを測って左右のバランスも整えなくてはいけないので、時間もかかる。ならば、型紙をつくってみたらいいのでは?と思い立ち、余った水彩紙とカッターで型紙づくり。

できた!アーチの型紙!!これはアーチ好きにたまらん造形。。眺めているだけで癒し。

このように型紙を作って、あてていけば、作業がグンと楽に。精度も上がります↗︎

バランスよく配置できました。我ながら天才的アイディア!!自分に便利な道具は自分で作る!!

背景アーチも粒状化色を混色してザラザラに。古い感じにしたいのです。東紅ちゃんが活躍してます。

何となく絵の全体像が見えてきました。花もだいぶ出揃いました。ただ、まだヴェールの透け感が全然ありません。人物と背景が馴染んでいないので、浮いて見えます。あと、絵の下の部分も手付かずですね。

空に星を描く

ヴェールに透け感を出し、ヴェール越しに光る月も描きました。花も少し足しました。顔も少し描き込みました。

この絵の主役??赤く光る星を描きます。ジェルメディウムとホルベイン のクロマシャインレッドで赤く光る妖しげな星です。盛るのはやってみたかったので、うまくいって嬉しいです。これだけは写真やスキャンで写らないので、実際に見ていただけると嬉しいです。

星が入りました!星の色は絵の色調に合わせています。(というより、赤い星にしたかったので、絵人物や花の色を逆算している、が正しいかな)

背景と人物をなじませつつ、細部をつめる

画面の下部も描きました。最終的にどの程度ヴェールが透けている感じにするかは悩みました。あまり透けすぎているとごちゃごちゃ見えてしまう。描ける部分を描かないのはいけないけど、描きすぎてもいけない、悩むところです。

水に映っているアーチを描きました。これで、隅から隅まで世界観が出来上がったと思います。

ヴェールの縁の飾りを、クサカベのパルプベースで盛ってみました。紙みたいにマットな質感なのが面白いなと思って。少し質感の違いがあると、目が楽しいです。月の部分もパルプベースで盛りました。

完成!

というわけで完成です。

これはスキャンした画像なので、背景の星がキラキラするところはまったく写っていません。画像で写らないなら、キラキラさせても意味ないかなとも思うのですが、実物を見た時に驚きがあったら嬉しいなと思ったりもしています。

使用水彩紙

今回使用した水彩紙は「旧ファブリアーノアルティスティコ(細目)」F4です。

ちょうど細目と中目の間くらいの紙肌で、細密な描写がしやすいのと、染みつきがよく何度重ねても大丈夫なこと、かなり濃い色も出しやすい水彩紙でした。

額装

水彩画なので額装しないといけません。

またまたファブリさん(@fhfabri)でお願いしました。

いっつも長時間迷っているので、納得いくまでお付き合いくださり感謝です。。

額はすんなり決まったのですが、マットがなかなか決まらず(夢中だったので写真撮り忘れました)

新しく作られたというシュミレーターで、シュミレーションしていただきました。ファブリさんでは実際に額縁に入れたらどんな感じかな〜のシュミレーションができます!

モニターも額装されているw

これ便利ですね。額とマットって、この四隅のサンプルをあてて考えるのですが、やっぱり一面になるとイメージも変わるので、なかなか判断の決めてがなく。。これがあるとすごくイメージしやすいです!!特に色マットを入れる時は、どんな色が絵と相性がいいか分かりやすいです。ここぞという額装ではお世話になりたいと思いました。(また詳しくご紹介したいです)

↑一緒にいた次女が「赤のマットがいい〜!」と言っていたので、赤もはめてもらいましたが、案外悪くなかったかも。ただ、絵の明暗がはっきり際立たなかったので、結局、淡いグレージュ(グレーとベージュの中間の曖昧な色)のマットに。今回初めてなのですが、切り口が黒のマットにしていただきました。

切り口が黒だと絵との境界が際立ち、締まって見えますね。額装は甘い感じにはしたくなかったので、希望通りになりました。

こういう特殊なマットは自分では思いつかないので提案していただけて、よかったです。

額に関してはひよっこで初心者なので、常に迷っています。いつもなかなか決まりません。最近は自分の経験値をあげるために、色々な額装にトライしているのですが、本当に難しいんですよね。額縁もその時で在庫があったりなかったり、ミニ額に至っては一点ものだったりして、ご縁だなあとも思います。

絵を演出する見せ方がうまくなればいいなあと、また記事でも紹介したいです。

製作過程(メイキング)を残すことについて

小作品ならメイキングも保存しやすいのですが、本格的な作品で途中経過を写真に撮るのは初めてだったので緊張しました。私は「計画通りに進める」よりも、描きながら「探る」ことが多いので、行き当たりばったりに見えてしまうのも困りものです。(この「探る」という言葉がしっくりきます)

でも、なんにせよ、色を載せてみないと分からないのです。透明水彩は偶然性の高い技法もあるので、100%のコントロールは難しいと思っていて、色をのせながらバランスを見て少しずつ描き進めています。

ひよこ
ひよこ

水彩は思ってたように
いかないことも多いね

もちろん「ざっくりしたコンセプト」はあるのですが、制作前にあまり細かく決めすぎないということも大切にしています。制作中の勘というか、感覚に頼ったほうがうまくいくことも多いからです。あまりきっちり決めすぎないほうが、制作中に多くのものが引出されるという感じがするんですね。きっちり決めてしまうと決めてしまった以上のものは出てこない。そんな感じがします。

とはいうものの、あまり行き当たりばったりでも、成功失敗の振れ幅が大きくなってしまうので、難しいところですが…。

枯葉の場合は制作前には完成後の姿はあまりはっきり見えていないことも多いです。(ぼんやりと低解像度で見えていることもある)なので、出来上がると「こんな感じになったんだ!」と人ごとのように作品を見ていて、それも作品との出会いだと思っています。

先ほどの話については、サムネイルスケッチの記事にも似たような話を書いているので、よかったら。複雑なものにはきちんとした構成が必要だし、作家さんのキャラクターによっては、きっちり決めてから計画通りに進めたいタイプの方も多いと思います。

どれが正解というのはないのですが、この辺りは色々なスタイルをやってみて掴んでいくしかないかなと思っています。

製作過程を撮っておくと、自分の制作のクセや考えていることも見返せるのでちょっと面白かったりします。無意識の行動も多いのですが、こんな風にしているんだ。と気づけることも多いです。

かれは
かれは

振り返りになるけど、
ちょっとしんどい!

でも全部の絵で製作過程を撮るのはしんどすぎますね。失敗したと思った時、前の状況がよかったりすると凹みますので😂

見えていないことがいいこともあります。

銀座中央ギャラリー第二回公募展について

展示の情報です!!

今回は銀座中央ギャラリーさんによる公募展だったので、審査がありました。今回通ったのは一次審査で2次審査はお客様による投票によって決まります。もしお時間あればぜひ見にいらしてくださいませ〜。

銀座中央ギャラリー第2回公募展

■会期:2022年7月11日(月)~7月18日(月)祝日
■審査日:7月11日(月)~7月16日(土)
■営業時間:12:00~19:00(最終日16:00)
■審査方法:現物作品をご覧になり投票形式にて審査
■入賞作品発表:7月18日(月)
■展示投票会場
 東京都中央区銀座1丁目9-8 奥野ビル
 第一会場:銀座中央ギャラリー(4階411号室)
 第二会場:ひのつみ画廊(2階210号室)
■協力:アートソムリエ山本冬彦氏、アーチストスペースF、月刊美術、ひのつみ画廊、画廊一兎庵、他
※投票用紙は各会場にてお求めください。

会期は7月11日〜18日までですが、投票ができるは11日〜16日(土)までとなっていますので、ご注意ください。

こちらは銀座中央ギャラリーのページで、他の出展者さんの作品も見れます↓

銀座中央ギャラリーさんのある「奥野ビル」は銀座でもとても面白い場所でして、昭和初期に建てられた古ーい元アパートです。すごく貴重な建物だそうで、こんな場所が残っているのがすごい。もともとはアパートだったので、居住者がおられたそうですが、今は小さなギャラリーやアンティークショップが入っています。

かれは
かれは

はじめて訪れた時はちょっと
ドキドキしました!

この記事で建物の雰囲気が分かります↓

手動ドアのエレベーターは一回は乗って欲しい…階数表示器のデザインがレトロでよき。

枯葉も過去、個展やグループ展で奥野ビルにはお世話になりました。銀座なのにわりとお手頃に展覧会を開けるのが、若い作家にとって魅力なんです。

興味がある方はお散歩がてら、ぜひ。(銀座伊東屋も近いです)

追記:銀座中央ギャラリー賞を受賞しました

この記事が投稿されたのは2022年の7月7日なのですが、7月18日に「銀座中央ギャラリー賞」を受賞しました。あろうことが18日にどうしても外せない予定を入れてしまい、授賞式には向かえなかったのですが、後で表彰状を頂きました。

後で、銀座中央ギャラリーのオーナーさんに伺ったところ、たくさん皆さんから票を頂けたとのことで「銀座中央ギャラリー賞」の授与が決まったとのことでした。確かに枯葉の場合、都内在住にも関わらず、お友達が少なすぎて(笑)自分の家族と数名の友人が投票してくれたくらいで、組織票はほぼ0の状態。なので、純粋に作品を「いいな」と思ってくださった方が投票してくださったのだと思うと、胸がいっぱいになります。

この場をお借りして、御礼申し上げます。ありがとうございました。

実はですね、今回の受賞全くの想定外でした。まず、枯葉は「枯葉庭園」というペンネームで活動しているのですが、公募展のようなオフィシャルな場では「どう受けとめられるのか??」予想がつきませんでした。なのでふざけたペンネームだということで一次審査が通らなくても不思議じゃないなあと思っていたんです。

実は10年ほど前(活動休止に入る前)は本名で活動しており、「枯葉庭園」はウェブサイトの名前だったのですが、活動再開するにあたって本名よりも「枯葉庭園」の方が認知されていたので、そのまま作家名として使うことにしました。(枯葉さん、と呼んでくださる方が多いです)

そういう経緯もあって、「どうなんだろう?」と思っていましたが、受賞できたということは、名前とかではなくて、審査員の方も作品そのものを見てくださったんだ!と思いました。嬉しかったですし、安心もしました(そして枯葉庭園という独特のペンネームを覚えてくださった方が多かったです)

もう一つは「水彩作品で受賞できるのか?」ということ。やっぱり、油彩や日本画の方が本格的な絵画だ!と受けとめられることが多く、水彩作品は(悔しいですが)軽く見られてしまうことが多いです。絵の価格も結構違います。なので、今回の公募展も心の中では「水彩作品で受賞は難しいのでは…」と思っていました。

蓋を開けてみたら、鉛筆の作品も版画の作品も受賞されていたので、絵を見る方は「そこまで画材に優劣をつけて見ていない」ということを感じました。「水彩でもこんな作品が描けるんだ」と思ってもらえたら嬉しいと思い、それも自分の目標のひとつになりました。

各賞の入賞者と作品はこちらで見れます↓

銀座中央ギャラリー第二回公募展 各賞

先日、9月5日〜10日に、同じ銀座中央ギャラリーでATCサイズ展がありました。

その時に、「7月の公募展の作品が印象に残って」とおっしゃって来てくださった方が多かったのです!とても嬉しかったです。たくさん褒めていただいたので、すっかり照れてしまい、そわそわしてしまいました。「ヴァルプルギスの夜」をお迎えくださった方ともお会いすることができ、また頑張ろうと思えました。

不思議ですが、今回はヴァルプルギスの魔女がたくさんの出会いを導いてくれたんだと思います。たくさんのご縁に感謝し、また絵を描き続けていこうと思えました。

ありがとうございました。