今回は初心者に向けて、「水彩筆の選び方」の話。形、大きさ、材質の3つに注目して選んでみましょう!
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自分に合う筆を選ぶには?
画材店の筆売り場にいくとズラッと筆が並んでいますよね。大きさも材質も価格も様々ですが、どんな筆を選んだらいいか、難しいですよね。初心者だと、あまり筆にはお金をかけたくないな、と思う人が多いので、安い筆や5本セットなどを選ぶ人も多いと思います。
どうやって選んだらいいの?
一体どれを選んだらいいか迷ってしまいますよね。
それもそのはず。水彩筆を選ぶのが難しいのには理由があります。
それは筆は見た目だけで、性能がわかりにくいからです。ノリづけされている筆は、ピシッとしていてどれも同じような感じに見えます。
実際に使ってみるまでは筆のよさは分かりません!
そのくせ1本200円くらいの安い筆があるかと思えば、1本10,000円くらいする高級筆もあります。
今回はそんな水彩筆の選び方を「形、大きさ、材質」の3つの要素から考えてみたいと思います。
水彩筆の形の種類と特徴
まずは筆の形からご紹介したいと思います。この形はとても大事です。
水彩筆の形には大きく分けて2つあります。丸筆と平筆です。(もちろん他にも色々な形があります)
丸筆の特徴
丸筆は丸い筒に毛が束ねられている、一番オーソドックスなタイプです。いわゆる筆!と言う感じですよね。

丸筆の特徴は、小回りがきき、塗りやすいことです。絵を描く人ならば必ず手に入れたいオーソドックスな形の筆です。ただ、丸筆といっても先端の形状は色々あります。
先端が細く尖っているものと、丸みがあるものの違い

細く尖ったもの…細かい部分や先が尖った形状のものを描くときに適している。ただ先端が細いので、摩耗しやすく、また凸凹の大きい紙だとかすれやすい。
丸みがあるもの…境界をぼかしたり、ラフな描き味に向く。細かい塗りには適していない
平筆の特徴
平筆は平たい形をしています。広いところを一気に塗ったり、均一に絵具をのせるのに向いています。

平筆にも形状によって役割が違います。
先端が四角い平筆…オーソドックスな平筆。背景に均一に色をのせたり。グラデーションの技法に向く。四角いので画面の真ん中から塗りをスタートすると塗りあとがくっきりつく
先端が丸い平筆…フィルバートなどとよばれる。先端が丸いので平筆に比べて塗りあとが残りにくく、色々な使い方ができる。葉っぱや花びらなど丸いものを描くのに最適。
先端が細い平筆…細かい部分の塗りも同時にできる平筆。斜めにあてて細い部分を塗ったり。
平たい平筆…均一なグラデーションや均一なウォッシュに向く。スリムなので、びしょびしょになりにくくコントロールしやすい
ふんわりした平筆…水や絵具をたっぷり含むのでより広範囲を塗れる。たっぷり水を使ったにじみにも。色を濃く入れるのも得意。
刷毛…もっと大型の平筆。平筆よりも毛のボリューム感が多め。大作の背景にも。水張りや下塗りにも使える。
連筆…厳密には丸筆を5連や7連にしばって平筆のような形状にしたもの。使い方は平筆や刷毛のような感じ。より多くの絵具を含む。
水彩筆の大きさ(号数)と選び方の目安
水彩筆の大きさについて
水彩筆の軸に注目してみてください。それぞれ大きさ(筆の太さ)によって番号がふってあります。これが号数です。

8なら8号、12なら12号です。数字の大きいものほど筆も太くなり、小さいものほど細くなります。
1号より小さいものは0号とか0/2号、0/3号のような表記ですが、分母が大きくなるほどに細い筆になります。
この号数は決まった規格があるわけではないので、同じ8号でもブランドによって、サイズが違うこともあります。あくまで目安という感じです。
大きさの選び方の目安
初心者は最初に筆を選ぶときに
どの大きさの筆を選べばいいかな?
と迷うかもしれません。もちろん最適な筆のサイズは、描く絵によっても違い、ここは作家によって好みが分かれるところです。ですが、それでは参考になりませんよね。
ということで、私はとりあえず新しい筆を購入するとき「8号の丸筆」を買うことにしています。筆に関しては「大は小を兼ねる」と思ってまして。

小さい筆になればなるほど、水含みは減り、塗り心地も判別しにくいです。細い筆でできることは、細部塗りなど限られているのですが、ある程度の太さの筆は大きな塗りもできますし、ムラにもなりにくく応用がききやすいからです。
8号を買ってみて、大き過ぎたら6号、小さいと感じたら10号、と言う風に購入してみたらよいかと思います。
水彩筆の毛の種類(材質)
水彩筆には色々な材質の筆があります。実は、私が絵を描き始めた頃は、筆の材質の違いはよくわかっていませんでした。
ですが、筆の材質は使い心地を左右する大切なポイントです。
水彩筆に限らずですが、筆の材質は大きく分けて2種類です。
- 獣毛(馬、羊、いたちなどの動物の毛)
- 人工毛(ナイロンなどの合成繊維)
獣毛筆の特徴
獣毛といっても色々な種類のものがあります。水彩筆によく使われるのは、馬、羊、リス、イタチなどです。

獣毛筆の特徴は柔らかさとしなやかさがあることです。そして水含みのよさです。近年人工毛も進化してきて頑張ってはいますが、この部分がやっぱり獣毛にかないません。ただ、一方で摩耗によって筆の先端が削れやすく、形状が変わってしまうのが弱点です。
獣毛の中でも、それぞれ特性が違い、水含みや柔らかさ、コシの強さに違いがあります。値段もピンキリです。1つずつみていきましょう。

イタチ…適度な水含みと弾力を合わせもち、とても描きやすい。高級品。イタチの毛の中でも「コリンスキー」の筆は最高峰と言われるが、近年収穫量の減少などで大幅に値上がり。
リス…水含みが抜群だが、かなり柔らかい。ソフトな表現や、繊細な重ね塗り、広い面を塗るのに適する。高級品。
羊…柔らかく、水含みがよいが、コシに欠ける。まとまりがよく、先端が細くまとまる。比較的安価。
馬…柔らかく、しなやかだが、コシにかける。あまりまとまらない。安価で子供用の筆にもよく使われる。
人工毛の筆の特徴
人工毛はここ5年くらいで急激な進化をとげています。以前は、安価だけれど、クオリティはぼちぼちといったところで、獣毛筆とはかなり差がありました。が、獣毛の原料不足により値上がりなどをうけて、「特殊加工により、コリンスキーの描き心地に近づけた筆」が各メーカーから開発されています。
なので、人工毛の筆にあまりよいイメージがなかった人にもぜひ試して欲しいです。

人工毛といっても価格が高く、かなり塗り心地のよい筆も出てきています。
人工毛の筆の特徴は、弾力があり、戻りがよいことです。なので、自分の手の動きについてきやすく、コントロールがしやすいです。また弱点だった水含みも特殊な加工によって、克服されてきています。ただ、やはりしなやかさはあと一歩というところ。また、先端が、消耗によりひしゃげやすいです。
人工毛筆の種類
メーカーごとに、または種類ごとに使っている繊維が異なるのでなんとも言えないのですが、ざっと見てこんな感じかなと。
普通のナイロン筆…わりと安い筆。ちょっと硬めなものが多い。コントロールはしやすいが、重ね塗りすると下の色が剥げたり、水含みが物足りない。とりあえずの導入に。(名村大成堂のPCセーブル、CNクリスタルやホルベインのリセーブルなど)
特殊加工の人工毛…価格が高め。コリンスキーの使い心地に近づけるため、繊維に加工をほどこして、水含みをよくしている。繊維そのものがしなやかで柔らかめなものも多い。おすすめ!(名村大成堂のノルム、ラフィーネ。アルテージュのアクアレリスト100、クサカベのアクアレッロ)
人工毛+獣毛の混合筆…柔らかく水含みのいい獣毛と、弾力のある人工毛のかけあわせでいいとこどり。わりと耐久力もある。価格も高め。おすすめ!(ホルベインのブラックリセーブル、名村大成堂のアルキオネ)
初心者のための筆の選び方
ここからは筆レビューを紹介します。どんな人にどのような筆が向くのか知りたい方へ、分類してみます。
・なるべく安い筆を調達したい!
とにかく予算が限られているから、安い筆を購入したい、という場合はまず水筆と子供用の筆もチェックしてみてください。もちろんかなり技法は限界ありますが、本当にちょこっとしか描かないのなら十分です。
・お手頃で初心者にも使いやすいクセのない筆が知りたい!
そこそこのお値段で初心者にも使い心地のいい筆が知りたいならこちらの記事!クセのない描き心地なので、まだ塗り方や描き方を模索中の初心者にも最適✨
・高くてもいいからちょっといい筆使ってみたいな
せっかくなので、ちょっといい筆でスタートしたい。予算が許すならそれがベストです!そんな人にはこちらの筆を試して欲しい。
柔らかさと弾力を兼ね備え、驚異的な水含みを実現したSQブラックセーブル。先端は細いので太い筆なのに驚くほど細かくも描写できる。プロも愛用してますが、初心者にもおすすめ。
こちらは私、枯葉庭園愛用の日本画筆、特選東紅。芯は弾力のあるイタチ、周りを水含みする柔らかい羊毛が覆うハイブリットな筆。ぼかしやにじみの中でも繊細な技法に向く。筆に慣れた中級者向けかも。
こちらはアニメ背景の美術監督監修によるニッカーの筆(製造は名村大成堂)蒼鷹。こちらも柔らかい筆だが小回りもきき、万能な筆。おすすめ。
終わりに
絵具選びと比べて、筆選びは、あまり面白く感じられないかもしれません。ですが、初心者こそ筆にこだわってみて欲しいです。
「うまく重ね塗りができない」「きれいにぼかしができない」「ムラなく塗れない」
こういった悩みの原因はほとんどが、水彩紙と筆です。特に筆は、技法とセットになっており、それぞれに性質と向いていることがあります。それを理解した上で筆を選ぶと、上達もしやすいと思います。
1本でもいい筆があると楽しくなります!
とくに、8号サイズの筆は、少し値段の高いよいものを選んでみましょう。安物の筆をサイズ違いで何本も買うよりも、1本でも手にしっくりくるものがあると、持ち替えずにそれだけで快適に塗れたりします。






























すごくわかりやすいです!
いつも助かっています‼️❣️
これからも水彩画をやるときは、枯葉庭園-水彩読書さんのサイトを見て,学びます。
本当にありがとうございます😊
お役に立ててよかったです!
ぜひぜひいろいろなチャレンジをしてください♪