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筆づくりの魂!!名村大成堂のインタビューと筆について考えたこと(PR記事)

名村大成堂へのインタビュー

8月30日、ホネ山さんに誘っていただき、筆メーカー名村大成堂に行って、インタビューと工場見学をさせていただきました!

今まで質問箱を設置していて、色々質問を募集してきたのですが(もう100件以上になる)その中で、筆の質問は案外多かったのです。枯葉は、作家ではありますが、画材の専門家ではないので、その質問にユーザーサイドの目線でしかお答えできていなかったので、今回積年の疑問を解決したいという気持ちがありまして!名村さんに色々聞いて参りました。

その延長でとても深い話が聞くことができたので!ぜひ皆さんに最後まで読んでほしいと思います!

これを読むとますます筆が欲しくなっちゃう…はず。

ひよこ
ひよこ

楽しみ〜!

①動物毛の斑点や色のついた毛について

まず1つめの質問です。

枯葉 獣毛筆の中に斑点や色のついた毛が入っていることがありますが、正体はなんですか?カビだと心配する方もいるのですが…これは毛の個性?

名村さん 特に白い毛の羊毛や豚毛で目立ちやすいのですが、黒い毛や斑点のついた毛が混じることがありますが、これは毛の個性です。特に描き味に影響しないです!

問題ないんですね!よかった、あくまで毛の個性とのことでした!まあ、相手は動物ですからね。たまに黒い毛や模様のついた毛が混じることもありますよね。時折赤い毛が混じることも(製造段階で弾くようにしてるがそれでも毛量の多い刷毛などには混じることも)あるそうです。赤い毛は、ちょっとドキッとしそうですが、いずれも描き心地には特に影響しないとのことで、安心しました。

ひよこ
ひよこ

よかった!安心✨

②ぴよっと出た毛について

枯葉 時々筆から、1本だけピヨっと毛が出てしまっていることがあるのですが、この「ピヨ毛」はどう対処するのが正しいのでしょう?(枯葉は、よく抜いてしまうのですが、それだと緩くなってしまって余計に抜けやすくなるから切ったほうがいいのだ、とか色々な話を聞きますね)

名村さん これは時々お問い合わせがありますね。うまく抜けないこともありますし、ナイロンだと引っ張ると伸びてしまって余計に描き味に影響することもあります。

外に飛び出している毛については、根元をすくうようにして、カッターで切る

のがいいです。

かれは
かれは

根元をすくうようにして…
カッターで切る?

ひよこ
ひよこ

名村さん!
やってみてくれた✨

名村さん、実演してくださいました!

すごい!一発解決しました。ありがとうございます!!

このピヨ毛、本当にちょっとなんですけど、そこに絵具がついて微妙に暴れるんですよね。他の部分は特に問題ないので、地味に困っていました。いや、対処の仕方がわかってよかったです!

ちなみに、外側でなく中の方にあるピヨ毛の場合は、深追いせず先に出ないくらいの長さで切ってあげると、描き味に干渉しないそうですよ。(できれば斜めに削ぐように)

③ダメになってしまった筆について

枯葉 ダメになってしまった筆についても質問が多く、伺いたいです。私の愛用の東紅なんですが、気づいたらかなり短くなっていました。これは何が起こっているんですか?毛が切れている?

名村さん 切れているのではなくて、これは毛が磨耗しています(キャンバスに描く場合、切れることもあるが、ほとんどの場合少しずつ摩耗している)

枯葉 磨耗しているのですね!これは先が細い筆の方がなりやすかったりしますか?

名村さん というより、筆の素材にもよりますし、(天然毛の中でも柔らかい羊が磨耗しやすい)支持体(紙やキャンバスのこと)にもよりますね。キャンバスなど固いものの上で使った方がすり減りやすいです。また岩絵具など、使う絵具にもよります。あとは塗り方ですかね。ゴシゴシ擦るような塗り方だとすり減りやすいです。

枯葉 (こするような塗り方‥ドキッ‥🙄)これはもう元には戻せないですよね💦

名村さん これに関しては戻せないですね。いや、伸びてきたらホラーですよね笑

第2の使い道があるといいのですが。先の尖った筆は細かい描画に適していますが、先が丸くなった筆にも何かできることがあるかもしれません。あとは、同じ筆を連続で使わないで、ローテーションしていくと寿命も伸びやすいですよ。また、ダメになる前に、同じ筆を何本か同時並行で使っていくといいかもしれません。急に変えてしまうと描き味も変わってしまいますからね。


なるほど。ある程度使っていたら先が丸くなったり、短くなったりは仕方のないことのようですが、捨てるのも忍びないので、ぼかし用にとっておこうかな。まとまらない、という変化の場合はブラシソフターや熱湯につけることで、きれいな形に戻ることもあります。ただ、摩耗はどうしようもないですね。

かれは
かれは

同じ筆をローテーションしようかな…

枯葉は先が尖らないなあと感じたら、そろそろ替え時だと思ってます。

④獣毛のそれぞれの特性について

枯葉 獣毛のそれぞれの特性を知りたいです。例えば特選東紅なら芯にイタチ、周りを羊毛が覆っているとのことですが、それは理由があって選ばれているのだと思うので、それを知りたいです。他の筆を選ぶときに役に立つとも思いました。

名村さん 原毛の性質については以前Twitter(X)にまとめたものがありました。


※と、回答いただいたので、後日それを調べてみました。togetterにの方にまとまっていました。

https://min.togetter.com/id/namurataiseido?sort=2&page=2

これは分かりやすいので、また記事にまとめてみてもいいかもしれませんね。


名村さん 特選東紅について言えば、明確でして。

芯のイタチは、描画用、シャープかつ張りがある。外側の羊毛は柔らかく、コシはないけれど水含みがいいので、タンクの役割ですね。羊毛が外側にあることで、筆を横にして塗った時に、綺麗に紙に吸いつくという役割もあります。

枯葉 まさにハイブリットな筆なんですね!!こういう筆って絶対に西洋筆にはないので、もっと色々な人に知ってほしいなって思いました!

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※特選東紅の話をたくさんしているのですが、これは枯葉の推し筆だからです。今回の話を伺って、ますます推し続けようと思いました。すごく使いやすいんですよ〜!!

⑤混合毛と日本独自の筆の製法について

(ここからややディープなお話になりました。ちょっと込み入っているので少しまとめてお送りします。)

枯葉 まず日本画筆は岩絵具が重たいので、それを吸いつきやすくしている、と聞いたのですが、そうなんですか?

名村さん 日本画筆は天然毛です。毛もみ(灰でもむ)することによって、わざと毛のキューティクルを傷つけて、顔料を入りやすくしています。キューティクルがあると弾いてしまうので、加工をしているんですね。

ナイロン筆も新しいものが出てきているのですが、今の時点で東紅のような筆はナイロン単体では作れないですね。

ひよこ
ひよこ

キューティクルをわざと傷つけてるんだ!
びっくり!

(そこから混毛の話へ。)

名村さん では、ナイロンと天然毛を合わせて東紅タイプの筆が作れるか?というとそれも難しいのです。(東紅は芯がイタチ、外毛が羊毛)なぜかというと毛としての質が違うので、筆の形に仕上げることができても、一体感が出ないこともあるのです。また磨耗しないということもあったりしますね。なので筆として成立しないという可能性もあります。

枯葉 (ここで、枯葉は持参したホルベインのSQセーブルを指して)この筆はナイロンとりす毛の混合とのことですが、これは違うのですか?

名村さん それはナイロンと天然毛がまんべんなく均等に混ぜられた筆です。そういう筆は名村にもたくさんあります。例えば、アルキオネ。これはナイロンと牛耳毛の混合です。筆を作る前に、異なる毛が均等に混ぜられているので、2つの毛の特性が混ざった筆となっています。

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枯葉 なるほど!東紅のような筆は芯にイタチ、外の毛が羊毛のように分かれている、これは天然毛同士でないとできない。均等に混ぜるやり方だったら、ナイロン➕獣毛というくみ合わせはさほどハードルが高くなく、様々な筆でそれが採用されているのだということですね。確かに考えてみたら混合毛の筆ってたくさんありますね!

(ここから筆の製造の話になりました。)

名村さん 日本では、根元を起点として、さまざまな長さの毛を混ぜて、山形の筆をつくるやり方で筆を作ってきました。今では、全ての筆がこの作り方ではないですが、特に混合毛の場合はこの作り方です。根元を起点にすることによって、長い毛も短い毛も筆の中に入れることができるのです。

枯葉 根元を起点としないやり方もあるんですか?

名村さん 西洋の筆の作り方は毛先を型にはめて成型するやり方です。こちらは単一の毛で作っていて、長さも同じのため、やや毛先が分厚くなってしまいます。(和筆のように短い毛を根元で接着することはできません)

このやり方だと製造は難しくないので、大量生産することができます。

日本の根元を起点に色々長さの毛を混ぜていく作り方には、いくつかのとても優れた点があります。

①短い毛も素材にできて、大きく毛を切ることなく無駄を出さずに済む。(貴重な原毛は無駄にしない✨)

②毛先が薄くシャープになるので、実際のサイズ以上に細かなコントロールが利く筆になる

③1種の原毛に頼らず色々な毛を混ぜ込むことができるので、毛の質が変わっても配合を変えることによって、品質を保てる

特に3つ目は、昨今原毛の量や質が落ちてきていて、品質を保つのが難しくなっているので、とても大事なポイントなのです。原毛の状況が変わっても、毛の種類や長さを工夫してカバーできるので、筆トータルで見たときの使いやすさやクオリティが下がらないということです。

枯葉 ほ〜、毛の質によって配合を変えたりするわけですね!奥が深いです。

名村さん そもそも日本は資源に乏しい国です。魚を食べる文化で、あまり獣(筆の原料になる豚や馬、羊など)を利用するという習慣がなかったので、動物の毛も調達が難しかったという歴史があります。だからこそ、毛を混合して使うことや、根元を起点にして長さの違う毛を入れることで、毛を無駄にしない、など筆を作る技術の方が発展したのです。ただその分筆を作るのに、かなり高い技術が必要になるため、職人の熟練度は必要になります。

日本国内でもこのように手間のかかる筆の製造を行なっているところは少なくなりました。職人の育成も大変ですしね。なぜこんな面倒なことをやっているかというと、名村はこれをプライドでやっているのです。

枯葉 は〜〜っ。すごいお話でした!混合筆をもっと使ってみたいって気持ちになりました。

(本当はもっとくわしくお話してくださったのですが、読みやすいようにまとめてさせていただきました。)

いかがだったでしょうか??

枯葉は、すごく感動してしまいました。何気なく使っていた筆ですが、かなり職人技で作られているのだな!と。前々から、輸入物の水彩筆よりも、名村大成堂の水彩筆や日本画筆の方が、ハイブリットな感じはしていましたが、そこには想像以上の思いがありましたね。

ひよこ
ひよこ

名村さんの筆作りへの思いがスゴイ…

色々な伝統や技術の賜物なんだなと改めて思いました。日本は資源不足だったから、だからこそ技術の方が進歩した、というのにも考えさせられました。これからも、ずっとずっと同じ製法で筆を作ってほしいです!

このあと工場見学もさせていただきましたが、こちらはまやさんの記事で。

筆が1本1本手作りされているのにも驚きました。もう少し機械的に作っているのだと思っていたので。いやはや…すごいですね。

終わりに

今回は、最後に書きたいことが多いです。

選ぶのが難しい筆

まず、絵を描いてみたい!と思った人が、一番最初に意識するのが絵具のことなんじゃないでしょうか?次が描き心地を左右する紙かな、と思います。枯葉もそうでした。実を言うとブログを始めるまでは、安めのナイロン筆と安めのコリンスキーくらいしか試したことがなかったのです。ある程度慣れてくると、正直なところ安めのナイロン筆でも描けてしまう。

筆は正直、店頭で見てもどれを選んだらいいのか、よくわからないんですよね、のりづけされていると全部同じに見えてしまいません?価格もお手頃なものから、目が飛び出そうなものなで、本当にさまざまですが、その価格差の理由もよくわかりません。絵具などは色の違いで、直感的に買うことができるのですが、筆はお店で選ぶのが本当に難しいです。

技術は筆についてくる

枯葉は名村さんのX(Twitter)の投稿で、色々な筆の存在をしり、高い筆やちょっと変わった筆もお試しするようになりました。時には用途に合った筆を名村さんが教えてくれることもありました。

それまで「安いナイロン筆でも描けるさ〜」と思っていたのですが、色々な筆も使うようになったら、ちょっとびっくりするようなことが起こりました。それは…

今まで、”できないと思いこんでいた塗り”ができるようになった、ということ。

例えば…

塗りの境界を見せずに少しずつぼかしていく塗り方(今まではティッシュで拭ってた)

色を濃くのせる塗り方、

下の色を溶かさず美しく重ね塗りをする、

均等に小さな点を打っていく、

糸のような細い線をひく、

筆を持ち替えずに広いところと細かい部分をすばやく塗る…

などここには書ききれないのですが、筆と一緒に「技術」も手に入れてしまったんです。今まで自分の腕が悪くて、できないのだと思ってましたが、それぞれの技法に合った筆があったんです。360°世界が変わりました。

良く筆の相性がいいとか悪いとか言うのを耳にしますが、どちらかというと、筆の方にそれにあった技法がくっついてくるイメージです。なので、色々な筆を試しながら練習した方が早く技術が身につきます。今までの描き方に慣れている人も別の筆を試してみると新しいことができるようになるかも。

ひよこ
ひよこ

筆と技法はすっごく
関係あるんだね

かれは
かれは

それぞれ筆に得意な技法があるよ

もちろん安い筆に慣れていて、特に不自由ない人もいると思います。でも筆が新しい世界を広げてくれるということも知ってほしいな。

名村さんはX(Twitter)で色々な筆をわかりやすく紹介しているので、ぜひのぞいて欲しいと思います。(枯葉激推しの特選東紅も名村さんの投稿から)そして、使っている人の声が気になるなら、枯葉の記事も読んでみて欲しいです。もちろん全部ではないですが、今まで買ったものはほぼ記事を書いてます。もちろん合う合わないもあるのですが、最初使いにくくてもだんだん馴染んでくることもありますし、自分の腕が上がることもあるので、ぜひ使い込んでほしいな!と。

また画材店の方、記事読んでたら、リクエストなんですが、筆のお試しコーナー作って欲しいです!!お試しできると納得感が生まれやすいです!

筆を大事に使おうと思った

あと個人的なことなのですが、もう少し枯葉は筆を大事に使おうと思いました。1日中絵を描いている日は、5時間くらい筆が絵具に浸かりっぱなしで、かなり酷使してるな、と。ひどい時は、筆を洗うのを忘れて寝てしまったりするので。ちゃんとお手入れして、長持ちさせたいな、と思いました。ちょっと筆がかわいそうでした。名村さんは「使ってなんぼですよ」とおっしゃってくださったけど、それにしてももう少し念入りにお手入れしないと。同じ筆を酷使しないでローテーションしよ〜と思いました。

今までよりも筆に愛が湧きそうです。

筆のことに興味出てきた!という方いたら嬉しいです!

またレビュー書きたい筆が行列して待っているので、お楽しみに!

今回はありがとうございました!!