ときどきTwitterで紹介している、アイディアスケッチの話。思ったより反響が大きかったので、記事にまとめてみることにしました。
Table of Contents
アイディア出しについて
今回は制作における意外な難所(?)アイディア出しについて書いてみたいと思います。
この記事はこのツイートがもとになっています↓思ったより反応をいただけたので詳しく書いてみよう!と。
ギャラリーにて
「枯葉さんは、作品を制作するのと、アイディアを出すのどちらに時間がかかりますか?」
というご質問を受けました。
自分のことをよくよく考えてみたら、アイディアはノートにたくさん描き溜めているので、そこから自分の描きたいものや展覧会に合わせて選んで描いていることが多いのです。なので改めて、アイディアを出すことにエネルギーを使うことがあまりありません。
つまり、
展覧会が決まる→アイディア出し→制作
ではなくて
普段からアイディア出し→展覧会が決まる→溜めたアイディアから選ぶ→制作
の流れが多いです。
で、今回はアイディアの出し方や保存の仕方、ラフスケッチなどについて語ってみたいと思います。
簡単そうでむずかしい…
アイディア出し💧
「アイディア出すのが苦手😂」という方にも参考になれば嬉しいです。
アイディアは気まぐれである
まず、アイディアは気まぐれです。
「何か思いつこう!」なんて気構えた瞬間、アイディアはどこかに行ってしまいます。
色々考えてみましたが、適度に緊張感があり忙しく、それでいて、適度にリラックスしているときにアイディアはやってきてくれることが多いです。
何かを思いつく、というのは能動的な行動ではないので、自然に発生する感じですね。
具体的に、どんな時にアイディアがやってきやすいかというと…
1人で散歩しているとき、音楽を耳にしたとき、シャワーを浴びているときなどですね。なぜか、私の場合は、シャワーをあびているときと、食器を洗っているときは、とても何かを思いつきやすいです(水の音が関係しているのかもですね…)あと、ノートに適当なラクガキをしているとき、これも新しいアイディアを思いつきやすいです。適度に脳がリラックスしているんでしょうね。
リラックス、リラックス♪
逆にダメなときは、心配事で頭がいっぱい、体調が悪いとき、疲れているときなどです。そういうときは別のことで頭がいっぱいなせいか、新しいアイディアが降りてきてくれることはありません。ちゃんと休んでコンディションを整えるのも大事みたいです。
アイディアを思いつくときのコンディションとして、適度にリラックスしているというのはとても大事なのかもしれません。
アイディアの保存はスピード重視
何かを思いつくときは「ビビビッ⚡️」とくることが多いです。
そんなときは迷わずノートに絵メモをつけます。どうしても、絵メモを取ることができないシチュエーションの場合は、後で思い出せるような関連する言葉をスマホのメモに書き留めます。
アイディアをメモにするときには勢いが大事です。ビビビッ⚡️のアイディアは実は弱々しいもので、しかも断片的です。時間が経ったり、別のことで頭がいっぱいになるとすぐに消えてしまいます。
私のラフはとっっても雑ですが、印象が消えないうちに、1〜2分でざっと描いているからです。自分で見返してわかる程度にしています。丁寧に細部まで詰めていると肝心のアイディアの印象が消えてしまうからです。ここはものすごくスピードを大事にしています。
あとで見返したときに、そのビビビッ⚡️の印象を思い出せる程度には、描いているつもりですが、あとで見返してあまりに雑すぎてよく分からないものもあります。
絵メモのメリット
このようにアイディアを、メモに残して保存しておくのにはメリットがあります。
それはアイディアの長期保存ができるということ。
メモに残したアイディアは種のようなもの。種は長期保存ができますよね。同じようにこのくらいのざっくりした絵メモならば、アイディアを長期保存しても大丈夫なんです。
昔に思いついたアイディアを何年か経ってから、作品に仕上げることもあります。
いつ描いてもOK!
紙に描いた下書きならば早めに色をつけていった方がいいですが(紙の状態も悪くなりますし、新鮮味がなくなってしまいますしね)アイディア自体は、時間を置いてしまっても大丈夫です。
むしろ時間の経過で熟成されるものもあります。
もう一つのメリットはアイディアをまとめて保存しておくことによって、「構想する」という工程をカットできるということです。特に作品をすぐに作らなくてはいけない時に助かります。
今まで思いついたアイディアの中から、企画に合いそうなものをチョイスすればよいのですから、だいぶ楽です。もちろん依頼を頂いたものに関しては、一から構想しますし、アイディアメモになかったものをアドリブで描いていくこともありますが、「溜めているアイディアがある」とかなり気持ちに余裕が生まれます。
アイディアはノートに保存する!
アイディアはどうやって保存していくかについてですが、これはデジタルアナログ色々な方法がありそうですが、私の場合は往来のように、ノートにざっとメモです。
もちろんチラシの裏でもいいですが、散逸しないという意味ではノートが使いやすいです。
私が使っているこのノート、じつはアイディアを溜める専用のものではありません。
個人的にはあまりアイディア帳というものはおすすめしません。アイディア専用にノートを作ってしまうと「いいアイディアを出さなくてはならない」という気持ちになってしまい、なかなかノートやメモが捗らないと思うからです。過去そのようなノートも作りましたが、無意識に変なプレッシャーがかかったのか、数ページ書いただけでほぼ真っ白でした。
アイディア帳3日坊主…💦
ノートにはブログのネタや育児日記、買い物メモなど、雑多に、そしてかなり気軽に色々なことを書きこんでいます。その中で、絵メモも一緒に描くのです。ノートは雑記帳で頭の整理をするのに使っていますが、その中に絵のアイディアも順不同に保存しています。後で見返したり、探したりが大変なのですが、後でまとめてスマホのカメラで写真に撮ったりしています。どうせ1冊のノートに絵のアイディアは20〜30くらいしかないので。(使えないものもありますし…)
先ほども言いましたが、アイディアって「思いつこう!」と思って思いつくのではなく、何気ない日常の中でふっと沸いてくるものだと思うのです。絵のアイディアも日々のメモの延長線上に置いておく方が、なぜだかうまくいく感じですね。
あまり今までアイディア帳がうまく活用できなかったという方は、専用のノートではなく、手帳や私のような雑記帳とアイディア帳を一緒にしてみるといいかもしれません。
愛用しているノート
参考までに使っているノートはこれです!(質問あったので✨)↓
アピカのプレミアムCDノート。サイズはA5です。小さすぎず大きすぎずカバンにも入りやすいので、A5サイズが気に入っています。無地を選んでいるのは絵を描くことも多いからですね。
ノートにしてはちょっとお高いですが、これを愛用しているのには理由があります。このノートは普通のノートに比べると、紙も分厚く、ペンで描いた文字や絵が裏写りしにくいのです。絵メモは雑ではありますが、私にとってはとても大事なもの。雑記メモが絵を描いた面に裏写りしているとテンションが下がります。なので、色々なノートを使ってみて、最終的にこのノートに落ち着きました。
ちょっとプレミアムなノートをあえて雑なメモに使うというのも、ちょっとした贅沢に感じたりしてますね!
ちなみにこのプレミアムCDノートにMDノートの透明カバーをかけています↓透明カバーの内側に好きな模様の紙をはさんで、目印にしています。
カバーに使う紙を選ぶのも楽しみの一つになってます!
ラフから作品へ(実例)
ラフ画からどんな作品になったのか…具体例が欲しいですよね。
探してみたら色々ありました!
見てみたい✨
ラフと完成した作品を並べてご紹介します。たくさんあるので覚悟してー!
「星のありか」
ラフでは手袋をはめている設定でしたね。暗くなってしまうと思い素手に変えました。表情もやさしくしました。
「魔法の絵筆」
「月光のセレナーデ」
「銀の夢」
これは2019年のアイディアのようですね。実際に作品に描いたのは2021年でした。3年越しのアイディアです。
真四角の絵にするつもりでしたが、色々な都合で横長の絵になりました。
「永い夢」
色々なポーズで考えましたが、左下のスケッチがしっくりきました。
「夜の水族館」
かばんを持つ手が逆になってますね!今気がつきました。
「花咲く魔法」
巨大なメジロを描くつもりだったみたいですね笑
「おやすみ月よ」
タイトルの案もメモされてますね。最初は英語の題名も考えていました。
「双子の星」
ラフの方が幼いですね。どうも大人びた感じになってしまいます。
「星の軌跡」
遠景に街を描くつもりでしたが、蛇足だと思いやめました。シンプルに。
流れ星の軌跡だけキラキラさせるのは、また後で考えたアイディアでした。
「真夜中の演奏会」
「泡沫」
「月明のアルテミス」
ラフでは猟犬がいました。アルテミスもこちらを向いていましたが、視線は向こう側にしました。
「夜空への願いごと」
あとで王冠や花を足しました。
「約束の地」
正方形の構図から横長にしました。
「空の果て」
こちらは昨年の個展のメインビジュアル。空に浮かぶ廃墟は、ノートのアイディアから生まれました。こちらは最初から色のイメージもありました。
いかがだったでしょうか!?
気が向いたらまたつけたしするかもしれません!
ラフと本番絵の関係
お気づきになられた方もいると思うのですが、ラフは整合性無視で描かれている分、線に勢いがあるんですよね。それを作品にすると、ちょっとおとなしくなってしまう、ということはあると思います。ラフのような勢いのある線が、本番でも描けるといいのですが…。このあたりはまだまだ追求の余地があると思ってます。
ちなみにラフの時点では色はついていません。色のイメージは全くないんですね。なので、作品にするときに、使う絵具や配色を改めて考えます。
色つきラフの話はこちら↓
「アイディア(何を描くか)」と「色彩」は自分の中では、まったく別の要素だったりします。
色は後で決めるよ〜!
そこで画材ブログの知識が生きるね!
アイディアは種だと言いましたが、そこから芽が出て、葉をしげらせて作品になるのだと思っています。使い物にならないようなアイディアもあるのですが、とりあえずたくさん出していくのがいいですね。
おわりに
作家さんの中でも、「現実のものを忠実に描く作家さん」と「自由に自分の想像を絵にする作家さん」といるのではないでしょうか?枯葉は完全に後者のタイプ。なので、「創作的な作品のアイディア」というのが、作品の中でもとても大事な要素になってきます。
なので、日常のメモと一緒に、絵のアイディアもメモしていくのがとても大事な行為だと思っています。いつもいつも何かをひらめく💡わけではなく、波もあります。コントロールできないからこそ、そこには「マメに記録していく!」という意識が必要だったりします。
不思議なもので色々なアイディアを描きとめていくうちに、連鎖的に次のアイディアが生まれたりします。アイディアがアイディアを呼ぶ、みたいな…。
なので何も思いつかないな〜というときは、何でもいいので、「いいな」と思ったものを自分の手でメモしていくといいと思います。とにかく手を動かしていくと、何かが出てくると思いますよ。
またノートの活用法については別の記事で詳しく紹介できたらと思います。このノートからブログのアイディアなども生まれています。