久しぶりに顔料の話になります。今日は真っ赤な絵具、ピロールレッドの話です。
Table of Contents
真っ赤な絵具、ピロールレッド
絵具を選ぶとき、1番疑問なのが「いわゆる赤って、どれ?」じゃないでしょうか?
大人っぽいダークレッドや、華やかなローズレッド、オレンジがかった朱色など、絵具の世界では赤の絵具はとてもバリエーション豊かです。
が…
どれも赤ではない感じが…?
いわゆる赤、普通の赤、真っ赤ってどれ?と思う方もいるんじゃないでしょうか。
普通の赤って言えばあれですよ。信号機の赤、郵便ポストの赤、赤十字の赤。赤ペン先生の赤。オレンジにも紫にも寄ってない、真ん中の赤!(伝わるでしょうか?)
🟥←コレ
こういう真っ赤って、12色セットや18色セットには入っていないことが多いので、意外と探すのに苦労するのですが、実はこのイメージにぴったりの絵具があります。
それが、PR254!!
うわ、出た!顔料!
顔料の中身はピロールレッド、パイロールレッドということも。
色は真っ赤です!鮮やかな色の絵具というのはたくさんありますが、これは特に真っ赤。あまり色に深みがないということもポイントだと思います。
深みとは…
たとえばローズマダー系だと濃く塗った部分はちょっと黒っぽくなってますね(これが深み)チューブから出した絵具の色もかなり黒っぽいので、初めて見たらびっくりしますよね。
赤を買ったはずなのに黒っぽい❗️
ただ、絵具を溶いていくと鮮やかな色が出てきます。
ところがピロールレッドは、見た目通り、イメージ通りの色がチューブから出てきて、塗った色も同じ色。
ピロールレッドを知ったとき、この鮮やかさとこの色味に感動したのを覚えています。
透明感はまあまあですね。半透明の表示が出ていることが多いです。塗ってみるとすごく透明でもないけれど、不透明というほどじゃないです。
彩度はかなり高いです。あらゆる赤の中で最も彩度を感じやすい色かも。あくまで単色で、濃く塗った時の所感です。
すごく赤い!
赤すぎてびっくりした!
ピロールレッド、メーカー比較
比較してみてもほぼ一緒なので比較しなくてもいいか、とも思ったのですが、一応。
名前は〇〇レッド、とメーカー名がついていることもあり、特別な印象を与えてますが、中身がピロールレッドで共通です。
一応まとめておくとこんな感じ。
ホルベイン | ピロールレッド |
ターナー | パイロールレッド |
ウィンザー&ニュートン | ウィンザーレッド |
シュミンケホラダム | スカーレットレッド |
セヌリエ | セヌリエレッド |
マイメリ | サンダルレレッド |
枯葉のイチオシはセヌリエレッド。セヌリエはたいていどの色も鮮やか&発色強めなのですが、セヌリエレッドも例外ではありません。とにかく色が濃い!濃くて鮮やか!
ピロールレッドの弱点は、色がやや浅いところだと思います。薄めるとちょっと頼りない感じ。その点セヌリエレッドは絵具自体に濃さがあるので、ややしっかり塗れる印象です。
鮮やかさと色味はどのメーカーも同じような感じかなあと思いました。
案外混色では彩度が落ちがち
ピロールレッドとPV19の比較
ピロールレッドは、そのまま塗るととても鮮やかな色なのに、意外にも混色すると鮮やかさがダウンしてしまいます。
特に鮮やかな紫を作ることが難しいことは押さえておいた方がいいポイント。
キナクリドンローズ(ホルベインではキナクリドンレッド)とピロールレッドで比べてみましょう。
ピロールレッドとウルトラマリンを混ぜても、あまり鮮やかな紫にはなりません。これはこれで使えそうですが、お花とかには彩度が足りないかな…紫を作ろうとして混ぜたら、ちょっとガッカリしそうです。
黄色系の混色は良い感じです。が、ちょっと色味が足りないので、色が薄めにまとまりがちです。他にも黄色系の混色が得意な赤はたくさんあるので、そこまで特別感はないかもしれません。
水で薄めてピンクに
ピロールレッドを水で薄めてピンクにしてみます。
ピンク色にはなるのですが、色が意外と地味です。落ち着いていて暖かい色。
なので落ち着いたピンクとして使いたいときは良いのですが、彩度が欲しい時にはちょっと物足りないかも。
可愛い色だけど、いわゆるピンク!のイメージではないかもね〜
枯葉のお気に入りは、ピロールレッドをわざとくすんだ黄色と混ぜて、落ち着いたオレンジ色として使うやり方です。
「木花咲耶姫」は、ピロールレッドを混色して、さらにくすんだピンクにして塗っています。暖かな雰囲気になるのがお気に入りです。頭の髪飾りや洋服の赤い部分はピロールレッドを濃いめに塗っています。いろいろな使い方ができていいな〜と思っています。
こちらの「梅」はさらにピロールレッドの穏やかな使い方!なんか美味しそうな色になるのがこの色のいいところ。肌の赤みの部分に使っても可愛いです。
混色に強いのはPV19のキナクリドンローズの方かも
混色に強いのはこちらの赤なので、こっちもチェックしておいてくださいね!↓
基本7色にピロールレッドではなくキナクリドンレッド(ローズ)が入っているのは、キナクリドンレッド(ローズ)の方が、混色に強いのと、薄めた時のピンク色がイメージ通りで鮮やかなためです。
ただ、あくまでも真っ赤が使いたい!というときはピロールレッドに軍配が上がるかな。
上手に使い分けしましょう!
絵の具って面白いですよね。そのまま塗ると鮮やかな色と混色に強い色が、それぞれ別だったりするんですよね。一筋縄にいかないところが面白いです。
とっても不思議だねえ
顔料の歴史(追記)
クサカベの技術部の方より、面白い顔料のお話が聞けましたので、皆様にご紹介したいと思います!
ピロールレッドの顔料PR254は、ジケトピロロピロール(Diketo-pyrrolo-pyrrole)というそうです。
ジケトピロピロ…?
意外にも新しい顔料で、生まれたのは1974年!
スイスに本社を構えていたCiba -Geigy(チバガイギー)社が、別のものを合成しようとしていたらたまたま出来てしまったのが、この真っ赤な顔料だったそう。超高性能の赤色顔料の誕生です。
偶然の産物なんですね!?
それまで、赤色有機顔料には耐候性に優れたものがなかったので、この色は画期的だったそうです。確かに、赤系、紫系は耐光性に優れた顔料がなかなかなかったと聞きます。ピロールレッドは、この色も鮮やかもすごいのですが、そして耐光性もある!
いやいや、こんなにすごい色が偶然生まれたとは…開発の人もさぞかしびっくりした
この色は瞬く間に世界中に広がり、自動車にも使われるようになったそうです。その時、ほぼ一つの色(製品)が流通したので、絵具においてもどのメーカーも差がほとんどない状況になったということです。
それで、メーカー差がないのかあ
現在では、オレンジやマルーン色などが展開されています。
シュミンケホラダムのカタログを眺めてみたら(←だいたいマニアックな色はシュミンケホラダムにあるw)ありましたありました!
あの有名なトランスペアレントオレンジやバーミリオン、ルビーレッドディープもジケトピロロピロールでした。トランスペアレントオレンジは持っているので、バーミリオンやルビーレッドディープも使ってみたくなりました。
面白い話をありがとうございました!!
顔料の成り立ちも知れると、いっそう絵具への愛が深まりますね✨
色々な赤を使ってみよう
絵具の赤はとても奥が深いです。というのも青に比べて顔料の選択肢が多いから!ホルベインも赤の絵具やたらと多くないですか?大体どのメーカーでも、赤は種類豊富で、似たような色が何色もあったりします。そのせいか、結構選びづらかったりするんですよね。
「どの赤がいいのかな〜」って。
今回ご紹介したピロールレッドは、
「真っ赤が使いたい人におすすめの赤」
です。枯葉はというと、あまり真っ赤を使うことはなく、使うとしてもダークレッドや濃いめのピンクで代用してしまうことも多いです。なので、今までピロールレッドはパレットに入れていなかったのですが、今年2022年のパレットには入れてみました。ですが、今のところ、薄めてピンクとして使っていることが多めですね〜。真っ赤にもチャレンジしたい!
どの赤がいいかは、よく使う色合いにもよりますね。
ピンクや紫系の色の方が使う人には先ほど紹介したPV19やPR122の顔料もおすすめなので、チェックしてみてください。
枯葉はPV19、PR122と揃えて、カドミウムレッドやバーミリオンなどの朱色系の絵具をセットで使うことが多いです。
が、ピロールレッドも捨て難く、素敵な色です。他にも素敵な赤がたくさんあるので、探してみてくださいね✨