画材店に行くと、ずらっとチューブの絵具が並んでいますが、その横を見ると、キャラメルの箱のような絵具が並んでいる棚があったりします。これは固形の透明水彩です。
チューブと固形、どちらがいいのか?メリットとデメリットをご紹介します。
Table of Contents
チューブと固形、どちらがいいの?
透明水彩を買うとき…
チューブと固形どちらがいいのかな?
と迷われる方もいるかもしれません。
まずはチューブの絵具と固形の絵具がどんなものかご紹介したいと思います。
透明水彩 チューブタイプとは
透明水彩のチューブ型はこういったものです↓
で、パレットに絞り出して使います。乾いた後も、水のついた筆で溶かして使えるので、パレットは洗いません。
透明水彩 固形タイプとは
透明水彩の固形はこんな感じのものです↓
絵具があらかじめ箱の中に固められています。最初から乾燥した状態で売られています。これはハーフパンと呼ばれるサイズのものです。もっと大きいものもあるのですが、あまり見かけません。固形水彩といえば、ハーフパンのことを指すことが多いです。
固形水彩用のパレットが売られていて、専用のパレットにセットして使います。
どちらのタイプもメリットとデメリットがあるのですが、普通のチューブ型の絵具と固形絵具、それぞれの長所、短所をまとめてみました。
チューブの長所
パレットに出しておくと、筆で色が取りやすい
パレットにもよりますが、仕切りのあるパレットに絵の具を入れておくと、筆で取りやすいです。
使ううちにだんだん手前がけずれていきますが、それがまた使いやすいです。
スッと色が取れるので、ノンストレス。筆も傷みませんし。手前のスペースで、筆についた絵の具の量も調節できるんです。
また大きな筆を使うこともできます。
固形タイプは、ハーフパンが一般的ですが、箱状なので、真ん中に穴が空いていきます。コンパクトな分、箱の中に大きめの筆が入らないこともあります。
あとは固形は少なくなってくると絵具が取りにくいです。途中で充填もできませんしね。
全体として、筆で絵具を取りやすいのが、パレットにチューブの絵具を出した時のメリットです!
混色スペースが広い
固形タイプのパレットは、コンパクトなつくりなので、どうしても混色スペースがせまいです。
使うパレットにもよりますが、大きめのパレットであれば、混色スペースは広いです!
混色スペースが広ければ、ゆったり色を混ぜることができるので、様々な種類の色を作りやすいです。
あとは、大作でたくさん色を使いたい時は、チューブがよいです。チューブから出した柔らかい絵具の状態で、より色を濃く、しっかり使うことができます。混色して色を大量に作ることもできます。たくさん絵具を使うなら、チューブから出した絵具をそのまま使った方が、何かと快適です。
別々のパレットに色を分けられる
チューブであれば、いくつかのパレットに同じ色を出して分けることができます。
例えば、お気に入りのフタロブルーの絵の具を、メインの大きなパレット、携帯用の小さなパレットそれぞれに半分づつ入れておく。そんなことができるのが、チューブの良いところです。
またお友達に絵具をおすそ分けしたり、交換したりしたくなることもあるかもしれません。チューブは好きな量だけ出すことができるので、交流面のメリットもありますね!
チューブの短所(追記2024)
劣化が早い
枯葉は1年に1度、年末にパレットを空にして掃除しています。その習慣が10年ほど続いているので、そこで気づいたことがありました。
それは「チューブから外に出した絵具は、1年経つとかなり劣化している」ということです。もともとチューブの絵具は固形絵具とちがって、外に出した状態で長く保存することを想定していません。実は固形絵具と成分も少し違うそうです。
なので、色によっては、乾燥に耐えられずひび割れてしまったり、埃がつもったり、劣化してしまいます。これは言いづらいのですが、発色が悪くなる絵具もあります。
なので、チューブの弱点は、一度出してしまうと「劣化しやすい」ということです。
そのため、あまり絵具をたくさん使わない方には、使う分だけ絵具を出す方が快適かもしれません。
これは、メーカーや使っている顔料によっても違うので、「絵具による」のですが…
固形タイプの長所
コンパクトで持ち運びができる
とにかくコンパクトです。驚くほど小さいものもあります。元々外で描くため、携帯用に作られたものだと思います。
ですが、チューブタイプのものでも、小さなパレットを買って、乾燥させたあと持ち運び用にすることができます。
持ち運び以外のメリットもあります。固形水彩は全体的に作りがコンパクトで、箱状なので、管理がしやすいです。絵具の数がとても増えてきてしまった場合は、パレットに入りきらないことも多く、ハーフパンに入れてしまった方が、たくさんの絵具を効率よく管理することができます。なので、絵具をたくさん持っている人はハーフパンで管理している方が多い印象ですね。
ハーフパンについての考察はこちら↓ハーフパンに使えるコンパクトなケースや空のハーフパンもおすすめしています。
色の順番を簡単に変えられる
これは意外に大きなメリットかもしれません。チューブタイプの場合、一度パレットを作ってしまうと、順番を変えたり、色を入れ替えたりすることが、とても難しいです。
カッターやナイフを使って出来ないこともないのですが、とにかく手間がかかります。中々はがせない色もあるし、うっかりパレットを傷つけてしまったこともあります。
私もこの作業は、一年に一度(年末)しかやりません。。
普通のパレットでは色の並べ替えは簡単にはできません…
固形水彩では色の並べ替えが簡単にできるので、試行錯誤したい人にはおすすめです。
固形水彩では、色の並べ替えが簡単にできるので、試行錯誤してみたい人にはとてもおすすめできます。
年末のパレット並べ替えの様子はこちら
固形の方が溶かしやすい
チューブから出して、乾燥させてしまうと、極端に溶けにくくなる色が存在します。特にコバルト系やテールベルト、ビリジャンがそれにあたります。酸化鉄系の色やキナクリドン系のように、あまりメーカーに関係なく溶けやすい色もあるので、全ての色が当てはまるわけではありませんが…。
一方、固形絵具はほぼ全ての色が溶けやすいです。乾燥した状態から、溶かして使うことが前提の絵具なので、溶けやすさでいうとチューブより使いやすさを感じることが多いです。
チューブのように中で固まらない
チューブは、うっかりすると、容器の中で固まってしまって、出せなくなることがあります
時間が経つにつれてチューブが硬くなって出せなくなってしまったことあります。入り口付近が固まってしまった場合、おしりの方を切ったり、おなかのあたりを割いて出せることもありますが。。
何だかかわいそうな感じもするねえ
固形水彩の場合は、最初から乾燥しているので、気長に使うことができます。そういう意味では少しずつ絵具をじっくり使う人にはおすすめです。
固形水彩の短所
固形のパン(箱)が邪魔
固形水彩は「ハーフパン」という箱に入っています。これがコンパクトで入れ替えもしやすく便利なところでもあるのですが、絵具をガシガシ使いたい時には邪魔に感じることが多いです。
大きな筆が入りづらくて、絵具が取りにくい!
また絵具の中身が減ってくると、絵具が取りにくい!
スピードと勢いが必要になる作業だと、なんだかモタモタしてしまうことが多いです。特にたくさん絵具が使いたい時や、混色で色をたくさん作りたい時は、ハーフパンでは物足りないことが多いですね。
ハーフパンは小さな筆で小さい絵を描く人向けだと感じます。
とりあえず初心者にはチューブがおすすめ
とりあえずはじめて水彩絵具を買う方にはチューブをおすすめします。やはり、絵具が取りやすいし、混色をしやすいからです。また、色が溶けにくかったら、チューブから出してそのまま使えばいいですし。
なんだかんだ色々な使い方ができて融通がきくのが、チューブの良さだと感じています。
なので、どっちがよいか分からなくて迷っているならチューブの状態で絵具をいくつか買ってみてください。
とりあえずチューブで買ってみようかな!
固形水彩を快適に使う方法(追記2024)
とはいうものの、長時間絵具をパレットに入れておくなら、やっぱり劣化の少ない固形絵具も魅力なんですよね。だけど、固形はハーフパンが邪魔だし、普通のパレットに入れることはできないし…。
固形水彩絵具はハーフパンが邪魔…
ん…?
ハーフパンから出しちゃえばいいのでは?
というわけで考えついたのがこちら↓
ハーフパンから絵具を出してしまい、それをアラビアゴムで普通のパレットの仕切りに接着するという方法です。やり方はかんたん。
買ってきたハーフパン(使用していないものがベスト)の四隅にカッターを入れ、隙間を開ける→ 一気に下から持ち上げる→パレットに、アラビアゴムを塗って接着。
これだと、溶けやすく発色もいい固形水彩を普通の絵具のように大きいパレットに入れることができます。我ながら名案。
今年はさらにハーフパンを半分にカットしてみました。ちょうどいい量が使えてさらにいい感じです。いまのところこの方法がとても気に入っているので、ぜひお試しください!!
おすすめのパレットはアルミのパレット。プラスチックパレットだと、仕切りが浅くてハーフパンを入れるのはちょっと厳しいかもですね。
主に2023年と2024年のパレット入れ替え記事で詳しく紹介しています。
色が入れ替えできるパレットも出た(追記2024)
こちらはまだ入手していないので、ご紹介だけになりますが、ホルベインからパレットの仕切りが取り外せるパレットが発売されました。
これはありそうでなかったタイプの商品。
先ほど「チューブタイプの絵具では一度色を入れてしまうと、入れ替えができずに不便である」とお話ししましたが、こちらのパレットだと絵具を入れた仕切りが取り外せます。なので入れ替え自由!並べ替えも自由!その日の気分で絵具を選ぶことも✨
これも便利でいいな〜と思いました。色の名前を書くスペースもあるようです。
こういうパレットを活用していくのもいいですね。チューブのデメリットを1つクリアにしているのが素晴らしいです👏
おわりに
久しぶりに固形水彩、チューブ絵具のことを振り返って、大量に書き足しました!伝えたいことを書けてよかった。ブログを書き始めた当初は、あまり固形水彩とチューブの水彩の特性の違いを理解していなかったこともあって、内容がちょっと浅かったかもですね。最初はチューブ水彩を中心に愛用してきましたが、最近は固形水彩を買うことも増えてきました。
試行錯誤した成果で、色々な観点からの工夫も紹介できてよかったです。先日ホルベインの方に、「固形水彩をハーフパンから出して、パレットにくっつけて使っている」話をしたら「いいアイディアですね💡」と言っていただけたので、嬉しかったです。
自分なりの使いやすいパレットを作ろう!
固形もチューブもどちらもよさがあるので、特性を知ってお好きな方を✨
また、色々な工夫や発見があったら、お伝えしたいと思います。
最後にパレットの作り方の記事も!
推しのホルベイン固形水彩の記事!使いやすい固形パレットもちょこっと紹介しています。
枯葉さん
いつもブログとTwitterを参考にさせていただいています。
私は普段W&Nコットマン固形の水彩絵具を使っています。
お値段の割に発色もよくて個人的に気に入っているのですが、よろしければ枯葉さんのレビューや感想なども聞いてみたいです。
(あと何故かインディゴだけは溶けなくてとても使えないですが…💦)
これからもブログにTwitterに楽しみにしております!
リクエストありがとうございます!
W&Nのコットマン固形の初心者セットを買った事があります。
色数少ないですけど、お得感がありますよね。
前にもリクエストを頂いた事がありました。レビュー検討しますね♪