透明水彩は、他の画材にはない、独特の技法がいくつかあります。見ただけで、「あ、水彩画だ!」と分かりますよね。
今回は、初心者に向けて、透明水彩の代表的な技法を7つ、お伝えしたいと思います。
Table of Contents
ウォッシュ(wash)
平塗りです。基本的な技法です。同じ色で、変化をつけず、ムラなく塗っていきます。
簡単そうに見えて意外と難しいよ
何てことはないのですが、同じ濃度で、ムラなく塗っていくことは意外と難しいです。途中で水が多くなったりするとバックラン(カリフラワー状のシミができる)がおき、ムラができてしまいます。
筆に含ませた水が多くなりすぎないように調節しながら、手早く塗るのがコツです。
ウェット イン ウェット(wet in wet)
にじみの技法です。
たっぷりの水、もしくは水に溶いた絵具を塗って、それが乾かないうちに、また絵具をのせる。すると絵具がにじみながら広がります。これがウェットインウェットです。(ウェットオンウェットということもあります。)
描き手がコントロールするというより、偶然の要素もありますが、慣れてくると偶然性もうまく付き合えるようになってきます。この技法が一番透明水彩らしいかもしれません。アクリル絵具や不透明水彩も、にじみをつくることはできるのですが、透明水彩のようにはいきません。
絵具に含まれる顔料の粒子の大きさや、水分量、紙など、色々な要素の影響を受けるので、とても奥が深いです。
水をコントロールするのは難しい!
でも楽しい♪
水の上にウェットインウェット
じんわりとにじんで、境界がボケたように描くことができます。
絵具の上にウェットインウェット
絵具で塗った上に、さらに絵具をにじませます。1色で濃淡をつけたり、何色かにじませて複雑な色合いを表現することもできます。色々な表現をすることができる技法です。
ウェットインウェットについて詳しく解説した記事です。もっと知りたいという方はご覧ください。
重ね塗り
絵具を塗り重ねる技法のことです。ウェットオンドライということもあります。透明水彩は絵具に透明性があるため、色を塗り重ねると、下に塗った色が透けて見えます。
こちらも、透明水彩らしい技法です。
ウォッシュで塗った上に、乾いてから、さらにウォッシュすることをいいます。
上の画像では、葉っぱの重なり合いが透けているように見えますが、これが透明水彩の重ね塗りの技法の特徴です。
①同じ色を重ね塗り
重ね塗りも同じ色を重ねるのと、別の色を重ねるのではかなり印象が違います。違った技法としてつか分けてみましょう。
まず同じ色を重ねてみます。
色が重なった部分は、色が濃くなります。同じ色を重ねて塗れば、色を変えずに濃くすることだけができます。
影の表現などにも使えますし、単純に色の濃さが足りなかったときに色を加えることができます。
2回、3回と重ねるうちに色が濃くなります
②違う色を重ね塗り
今度は違う色を重ねてみます。
下に塗った色とは別の色を重ねることで、新しい色を作ることができます。
例えば青の上に黄色を重ね塗りすれば、重なった部分は緑に見えます。
重なった部分はグリーンに見えます。
うまく重ね塗りするには、先に塗ったものが、完全に乾いてから、静かに次の色を置くのがコツ。
ただ、重ね塗りがうまくいくには他にもいくつか条件があります。
なかなかうまくいかないことも多いので、下の記事を読んでみてね。
重ね塗りがうまくいかない人のために、解決法を別記事で紹介しています↓
重ね塗りは、混色と比較されることも多いので、透明水彩における重ね塗りの役割をまとめました。
グラデーション
透明水彩ではウォッシュしながら、色を少しずつ変化させていく技法です。
一見簡単そうな技法に見えますが、透明水彩でグラデーションを作るのは、意外と難しいです。
大きな平筆や刷毛があった方がいいです。小さな筆では、途中で絵具が乾いてしまうので、うまくいきません。
①1色でグラデーション
グラデーションの技法も絵具を1色だけ使うのか、2色以上使うのか、で難易度も違いますし、印象も違います。
まずは1色だけで作るグラデーションの技法をご紹介します。
絵具が1色の場合は、紙の地の色を生かして、絵具の濃淡だけでグラデーションを作ります。
濃度を変えてグラデーションを作っています。
ちなみに、グラデーションはムラになりがちな絵具とムラになりにくい絵具があります。1色試してみて塗りにくいと思ったら、諦めずに別の色を試してみてください。色が明るめの色の方が綺麗にグラデーションを作りやすいです。
ちなみにこれから紹介する2色以上で作るグラデーションよりも、この1色でグラデーションの方が簡単です。まずはここから試してみてください。
②2色以上でグラデーション
今度は2色以上で色を変化させるグラデーションを作ってみます。
2色のグラデーションに挑戦する場合、写真のように、黄色〜オレンジ、黄色〜ピンクがわりと簡単にできるので、最初の練習におすすめです。黄色はカドミウムイエローを使うとムラなく塗れます。
グラデーションも、中々難しい技法です。
どうしてもグラデーションにこだわる場合は、不透明水彩の方がやりやすいです。
透明水彩ではキレイにグラデーションは練習が必要だよ。
下の記事も読んでみて!!
リフティング
リフティングは塗ったところの色をふきとる技法です。
透明水彩の技法というと「塗る」ことばかりに気を取られがちですが、この「拭き取る」技法もなかなか奥が深く、表現の幅を広げてくれるので、おすすめです。
絵具が乾いたあとに、濡らした筆、スポンジや、ティッシュ、綿棒などでふきとります。
絵具がまだ濡れているうちに、綿棒やティッシュ、乾いた筆で、吸い取って色を取ると、ソフトなハイライトになります。
絵具が半乾きの状態でふきとっています
私はやったことがないのですが、紙やすりやナイフで削りとることもできるようです。
リフティングは、失敗したところを修正したり、部分的に明るくするときに使います。
ですが、使い方次第で、色々な表現ができます。
もちろん、ハイライトを白い絵の具で描いてもいいのです。でもリフティングで、絵具を取って作ったハイライトは、とても透明水彩らしい柔らかさがあり、私はとても好きです。
色々な可能性のある技法だよ♪
水彩紙によってリフティングをしやすい紙、しにくい紙があります。
水彩紙の持つ特徴の中でも「リフティングで色を抜きやすい」と「重ね塗りしやすい」の要素は両立しにくいです。リフティングのしやすい水彩紙は、重ね塗りがあまり得意ではなく、重ね塗りがしっかりできる水彩紙は、リフティングで色を抜きにくいのです。どちらを重視するかは、描き手次第でしょう。
また絵具によっても、使われている顔料によって、染みつくものと染みつかないものがあるので、リフティングのしやすさは変わってきます。
紙、絵具、によって違うんだねえ
ドライブラシ
乾いた筆に絵具をつけて、こする技法です。
荒々しく、力強いタッチにしたいとき、使います。ウェットインウェットのような、水をたっぷり使った技法とは対照的な技法です。
地面や石など、ゴツゴツしたものを表現したり、髪の毛の流れや、草、動物の毛並みなど、ドライブラシで色々なものが表現できるので、試してみてください。
私は、岩や木の幹、古い建物など、ちょっとゴツゴツしたものを表現するとき、使っています。
ドライブラシは主に、「ふさふさ」「ゴツゴツ」「パサパサ」など、質感の表現に向いている技法です。筆の動かし方によっても、表現できるものは変わってきます。
自然のものを描くときには便利な技法だね!
スパッタリング
筆をはじいて、紙の上に絵具を散らす技法です。
細く硬い筆だと、細かい斑点となり、太い筆ではじくと大きな飛まつになります。歯ブラシに絵具をつけて、指ではじくと、さらに細かい飛沫になります。
スプレーボトルやエアブラシに絵具を入れて吹き付けるやり方もあるそうです(私は試したことがありません)
指ではなく、スパッタリング用の金網を使ったりすることもできます。私はよく定規のフチを使って、飛沫を飛ばしています。
飛ばす飛沫は、不透明水彩の白だとこんな感じ
色の絵の具だとこんな感じです。
また、マスキングインクをスパッタリングで飛ばしておいて、紙の地を白く斑点状に残すこともできます。絵具の白を飛ばすのとは違った雰囲気になります。
スパッタリングはとても緊張するよ
透明水彩の技法の中でも、特に偶然性が高い技法で、飛ばした飛沫が、思いもよらないところへ飛ぶことがあるからです。
透明水彩はやり直しが効かないので、最後のスパッタリングはいつも慎重にやっています。
最後に
いかがでしたか?
透明水彩には魅力的な技法がたくさんあります。
他にもあるのですが、今回は代表的なものだけを集めてみました。
最初はどれも意外とむずかしい!
焦らず、ちょっとずつ練習してみてね
最初は水加減が難しいので、キレイにムラなく塗るのも難しかったりします。
塗り方のコツはこちらにもまとめています↓
コツは筆に水をつけすぎないことです。タオルなどで水の量を調整して、かすれないけれど、しっかり、色がのるくらいの濃度だとちょうどいいです。
今回は代表的なものだけ集めましたが、透明水彩のテクニックはもっとたくさんあります。この記事は他の技法も紹介しています↓
その他の詳しいテクニック↓