今回は、額装について思いついたことをお話ししてみたいと思います。「自分の絵を額装してみたい」「展覧会に出展するから額装したい」「ドローイングを買ったから、額装したい」という方、必見です!
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額装について
今回はややクリエイターさん目線で額装についてお話しします。絵を買うコレクターさんの参考にもなると思いますので、額装に興味のある方は最後まで読んでいただければと思います。

額ってどこで買えるの?

画材店の額装フロアや、額縁店で買えるよ。
ネットでも売っているので、色々探せます!
額縁がどこで買えるか?ということも時々質問いただくのですが、
①画材屋さん(大きめの画材屋さんには額も売っています)
②額縁屋さん(だいぶ数が減っていますが、まだ額専門店もあります)
③ネットショップ(実物を見れないのが難点ですが、どこからでも買える)
という感じです。ネット検索してみて近くに額縁屋さんがありそうだったら、ぜひ足を運んでみてください。もしない場合はネットショップが便利です。
額装が必要な理由
まず、絵を飾る時に、額装はとても大事です。特に水彩画のような紙に描く絵の場合、紙のまま飾ることはできません。額装が必要な理由は3つあります。
①展示会場で飾りやすいように
展示会場にもよりますが、ピクチャーレールを使った展示の場合、ピクチャーレール からぶら下がっているワイヤーにフックがついているので、そのフックに額を引っ掛ける形で、額を飾ります。壁に直接フックを打ちつけて飾れる会場もあります。自宅だと、壁にフックを打ちつけて絵を飾る人が多いのではないかと思います。

額に入っていないと飾れないのね
なので、絵はフックにぶら下げる形にしなくてはいけません。紙をぺらっと1枚壁に貼ることはできないので、額装することが基本となります。(油彩やアクリルの場合は、額装しないでパネルのまま飾っていることもあります。)

②作品保護のため
また、紙のままでは汚れてしまうので、額装は作品保護の意味もあります。額縁の表面にはアクリル板がついています。このアクリル板には、作品を汚れからガードするという役割と、あとは作品が褪色する原因となる太陽光をシャットアウトする役割があります。


そのままでは汚れちゃいそう
でとても怖いです!
③見栄えをよくするため
もちろん作品だけでも素晴らしいのですが、作品を額装するとぐっと見栄えがします。額装してみると驚くほど、豪華な感じがしますし、選んだ額によっても作品の見せ方を変えることができます。

描いた絵を額装してみよう
描いた絵を額装してみましょう。
まず、額縁には
- 規格額
- オーダー額
の2種類があります。
規格額とは決まったサイズで作られた額です。サイズが決まっていので、自由はきかないのですが、安いです。
一方オーダー額は、自分の好きな額を選んで、好きなサイズに作ってもらう額です。規格額に比べて選べるデザインの種類が豊富で、高級感のあるものも多いです。が、価格はかなり高めになります。同じくらいのデザイン、サイズでも、規格額の3〜4倍くらいになります。なので、こだわりたい時は、オーダー額になります。

規格額の方がお手軽なので、はじめて額装する方は、規格額の中から選んでみましょう。
規格額を使う(マットありの場合)
まず規格額についてお話しします。
サイズ選び
まず紙のサイズと額の規格サイズは同じではありません。

紙のサイズ規格は、よく書類などで使われるA、B規格(A4とかB5のようなサイズ)もありますが、多くがF規格です。スケッチブックにはF4とかF6の表記がありますよね。
額のサイズ規格は、スケッチブックで使われるF規格ともA B規格とも、サイズも縦横比率もちがう独特のサイズ規格です。
なので、描いた絵を規格サイズの額におさめる時は、絵のサイズよりもひとまわり大きい額を選び、絵と額との隙間をマットで埋めることが必要になります。
どのサイズの紙にどの額サイズが合うのかは、下の記事を参考にしてみてください↓
マットとは?
マットとはこういうものです。マットは厚紙に窓枠を開けたものですが、かなり厚みがあるものです(2~5mm)

これは額屋さんで注文すると、絵と額のサイズに合わせて作ってくれます。
マット単品だけ、注文することも可能です。
マットの外寸は額に入っているガラス板(アクリル)のサイズよりも少し小さいサイズで、内寸は絵のサイズになります。(これは額屋さんが計って調整してくれます)
注意点としては、マットの内寸よりも、紙のサイズが少し大きくないといけないということです。紙の縁ギリギリまで絵を描くのはあまり望ましいことではなく、少し余白を残しておく方がベターです。そして枠よりも少し大きめに色を塗っておくと微調整の時にも融通がききやすくなります。

裏は紙の端っこまで絵が書かれていない場合は、マットにテープ留めが一般的です。自分で留めるときにはピタックを額縁店で一緒に買い求めておくといいです。アマゾンでも買えます(こんなに大容量じゃなくていいんだけど💧)
絵を留めるテープはマスキングテープでも大丈夫ですが、長いこと貼っていると変色して、紙に染み出すことがあるそうです。なので、額用のテープを使うことが多いです。変色しにくく、接着力は強力で絵がズレたりしません。私はこちらを愛用しています。
縦横比の注意点
規格の額と描いた絵の縦横比が合わないことがあります。
どういうことかというと横のマット幅が2cmずつなのに、縦のマット幅が4cmになってしまうという場合です。こんな感じ↓

紙の縦横比と額縁の縦横比は同じではないので、こういうことがよく起こります。縦のマット幅と横のマット幅がちがうことはよくあるので、少しならあまり気にしなくてもよいです。


が、マット幅は縦と横で等間隔な方が、見た目の収まりがよいのは間違いありません。なので、入れるのサイズが決まっている場合は、最初から縦横比を計算して絵のサイズを設定した方がいいです。
作品額装のことを考えて、先に描く作品のサイズを決めたい方はこちらの記事を。
規格額を使う(マットなしの場合)
マットを使わないで額にぴったりのサイズで絵を描くこともできます。
これはどちらかというとミニ原画など小さい原画を展示するときに向いた方法だと思います。
額のサイズに合わせて絵を描く
この場合は絵のサイズを、額のガラス板(orアクリル板)のサイズに合わせておきます。額に入れるのに必要なサイズは、実際に表から見えるサイズよりも四方+5mmくらいは余裕が必要です。(逆にいうと紙のはじっこ5mmは額に隠れる)

実際に絵が見えるサイズと紙のサイズを確認しておく
のが大切です。何事も余裕があった方が安心なので、大きめの紙に絵を描いて、後で必要なサイズに切り出す、絵も大切なものは絵の縁に描かない、少し広めに色を塗っておく、がいいかと思います。

額を買っておいてから、
それに合わせて絵を描く方
が安全かも!
最近A4サイズ、B5サイズなどの紙のサイズに合わせた額縁も出てきています。まだ一般的ではないので種類は少ないですが。そういうサイズの額だと、A4、B5の紙をそのまま額装することができます。
マットを使用しない場合の注意点
額屋さんで聞いた話ですが、「額装はマットを入れるのがおすすめ」とのことでした。マットを入れないデメリットは2つ。
①額とマットが接するので、絵が見づらい
そうなんですよ。やっぱり額って模様がついていたり、金や銀などメタリックカラーも多いので、マットがないとちょっと絵が見えにくいんですよ。
特にデコラティブな額を使用する時は、額の色やデザインがダイレクトに絵に影響を与えます。額の印象が強すぎて、絵の色合いと相殺してしまい、ごちゃついて見えることがあります。


↑このくらい小さければそこまで気にならないですが、サイズが大きくなると額縁の面積が増えるので、割とごちゃごちゃ感が出てしまうことも。
マットなし額装は、マットを使用する時以上に、額と絵の相性が大切になります。
私はマットなしで額装するときは、額はかなりシンプルにしています。

または余白の多い作品だとマットなしでも映えます。


②直接絵がアクリル板に接しない方が、作品保護によい
マットを入れるとアクリル板と作品に少し空間ができます。これが作品保護には大事だそうで。
少し空間が入ることで、作品が湿気たりするのを防ぐそうです。なので、見栄えからマットなしを希望するお客さんにも、端っこの見えないとことに細いマットやクッションをいれて、アクリル板と作品をくっつけない工夫をしたりするそうです。
あとはマットなしの場合、ガラス面(アクリル面)と絵が接触するため、キラキラのパール絵具や色鉛筆、パステルの粉がガラス面にくっつくことがあります。

マットは見た目だけじゃなくて、作品保護の役にも立ってるんだね!
マットには、見た目の問題だけでなく、作品の保護の役割もあるため、特にこだわりがなければマットをしくのがおすすめです。額屋さんは「額はマットとセット」とおっしゃってました。
額をオーダーする
額はそもそも「オーダー額がメイン」であるため、予算が許すなら、圧倒的にオーダーがおすすめです。
①絵の縦横比が特殊で、規格額でサイズが合わない
②規格額のデザインでは、合うものがない
③高級感を出したい
こんな時はオーダー額にしてみましょう。
まず、作品サイズや縦横比が特殊で、規格額に合わせられない時です。マットをつけて無理やり合わせてしまってもいいのですが、理想をいうならオーダーで、ぴったりのサイズの額を作るのがベストです。
こちらの作品は縦横比が微妙で、規格額には合いませんでした。特に背景の窓枠と額縁の縦横比がぴったり合っていた方が素敵だと思ったので、オーダーしました。

また、縦長の額や正方形の額などもオーダーがおすすめです。規格もないわけではないのですが、やっぱり種類はかなり少ないです。作品に合わせたこだわりの額にしたい時は、オーダーの方がいいですね。
オーダー額にはもう一つメリットがあります。それは、たくさんの種類の額から選べると言うことです。規格額だけでは、デザインが限られてくるため、いまひとつしっくりくるものがないこともあります。オーダーモールディングは種類も多く、高級感があるものも多いため、「デザインにこだわるならオーダー額」というのも頭に入れておくといいと思います。

ただオーダー額は価格が高めです。同じデザインの場合、同じようなサイズであっても規格額に比べて3〜4倍近い価格になるため、あらかじめ価格のクラスを額屋さんに教えてもらい、予算内の額から好みのものを選ぶ方がいいかもしれません!

先に予算を伝えておく方がいいかも!
こちらの記事もご覧ください。
マットの役割

もうちょっとマットのこと知りたいな!
マットの話が出ましたが、もう少し詳しく。
マットの役割
マットの役割をおさらいしてみます。
- 作品のサイズと額のサイズの差を埋める
- 作品が見やすくなる
- 作品が豪華に見える
- 作品保護
額屋さんがたくさん説明してくださってるページを発見!
マットの種類と加工
白マット
一番スタンダードなのは、白いマットです。これは全ての基本です。額縁屋さんに行くと、「どれにしますか?」と色々な色のマットを見せてくれるのですが、基本は白いマットです。
ただ、同じ白であっても、真っ白、クリームっぽい白、凹凸があるもの、など色々な白があり、色も質感もさまざまです。
私が最もよく使うのは、白い水彩紙のマットです。適度に凹凸があり、純白よりも少し温かみがあるものです。具体的にはオリオンのワーグマンやミューズのワトソンなどです。私は水彩画なので、同じ水彩紙のマットは相性がいいと感じることが多いです。

色は、真っ白とクリームの中間くらいのオフホワイトが一番万能で、どの作品にも合いやすいのですが、絵によっては純白がいいこともあるし、少し色のついたクリーム色がしっくりくることもあります。
色マット
色マットにする時はどの色がいいか、額の店員さんに相談してみましょう。絵を引き立てる色を提案してくれます。
私は色マットはどういうときに使ったらいいのか分からなかったのですが、最近はチャレンジするようにしています。

↑このようなマットのサンプルがあるので、色々あててみて検討します。ちなみにこの色マットの種類は額屋さんによってもかなり違います。こだわりたい時には、色マットの種類が多く選べる額屋さんに行くことにしています。
いくつか色マット額装の例をご紹介します。
①グレー系
白の次にしっくりくるのがグレー系。白マットでは眩しく感じる時に。


黒額+グレーだとコントラストが強くなりすぎなくていい感じ。


淡いグリーンのマットも、絵の内容によってはいいですね。とくに余白が多いと、作品の色を補完する効果があります。


紺色のマットは、かなり色々な絵と相性がよいです。特にクラシックなイメージの額装とよく合います。黒よりはソフトな印象です。ただ、ちょっと印象は強くなるので、作品は選びます。


色マットは、絵の色との相性次第ですが、ぴったりマッチしていると特別感が出ます。ただ、難易度はあがるので慎重に。
ダブルマット
ダブルマットは最近よくやるようになった加工です。とても素敵だったので、すごくおすすめです!
額装が立体的になるので、間違いなく豪華な感じにはなります。
ダブルマットには色々はパターンがあって、同色マットを重ねるもの、別色のマット重ねるものがあります。
①同色のマットを重ねたもの
「白いマットを2枚重ねたい」と額縁店で伝えると、「あんまり意味ないですよ」と言われることもありますが…
意味ありますよ!!(断言)階段みたいになってとってもよき…。重ねる幅でもイメージが変わります。ただ、マット幅は少し広めに取るのがおすすめです。


②少しだけ色が違うダブルマット
同じような色のマットを重ねているのですが、微妙に色が違います。左がクリーム色+純白、右が白+ベージュです。


③全く別の色のマットを重ねる
全く別の色w
別の色を重ねるときは、手前のマットを白、奥にくるマットを色つきのものにして差し色にすることが多いです。その場合は、カラーマットにするよりも、微妙に色を効かせられて洒落た雰囲気です。
私は手前のマットをグレー、内側に純白のマット、というパターンも時々やっています。


ダブルマットは、マットがやや幅広でないとできない加工です。マットの代金はマット2枚分になるのですが、それ相応の価値があると感じてます。
こちらもおすすめ!
ライナー(金縁加工)
マットの内側に入れる金属をライナーと呼びます。
内側のカット部分に金や銀の装飾を施します。こちらもかなり豪華な感じになります。色は金と銀で、光沢のある金やマットな金などお店によっても、手持ちのライナーは違います。



1枚目が銀、2、3枚目が金のライナーです。これが一番シンプルタイプですね。ライナーには、マットの切り口を隠すという効果もあって、特に色マットでは白い切り口がのぞくのが気になるのですが、ライナー加工をすると切り口が金属で隠れて美しく見えます。特にマットがスエードのときライナーもセットで考えておくといいですね。
フィレライナーともよびます。
溝加工
窓の外側に溝の加工を入れるもの。ちょっとニュアンスが加わって、立体的な表情になります。ダブルマットほどではないけれど、さりげなくアクセントになります。特に色マットだと、溝部分が白になるので目立ちます。


特殊な形の窓
あとは円や楕円の形など、四角以外の形に、窓の部分を切り抜いてくれる額縁店もあります。
色々あるのですが、絵で使いやすいのは、丸、楕円、アーチの3つです。こちらはマットを先にカットして、それに合わせて絵を描きます。


フォトフレームのように複数の窓を切り抜くこともできるそう。 ATCサイズの絵を2枚並べて1つの額に収めている絵を見たことがありますが、これもとても素敵でした。アイディア次第で、個性的な額装ができると思います。
額にセット仕方
額屋さんにお願いする時は、額に入れてもらえます。
額だけ自分で買った場合は、こんな感じでセットします。

絵が紙の中心にしか描いていないので問題なし
額を裏返して、台座をどけたら、ガラス(アクリル)、マット、絵の順番でセットします。
先ほどご紹介したピタックをマットに貼ります。コーナーを4隅に貼って作品が上下左右に動かないように固定します。もしくは、テープをしっかり貼って固定します。
アクリル板はほこりを寄せやすく、また傷もつきやすいので要注意です。アクリル板のシートを剥がすのは、最後の最後がおすすめです。指紋がつかないよう、サイドを持ちます。もし指紋がついてしまったら、メガネ拭きでふくのがおすすめです。ティッシュやタオルでふくとさらに糸くずがつくことが多いです。
ほこり対策も記事にしています。
ガラス板、マット、作品、厚み調整板、の順番に載せていき、後ろの金具で固定して完成です。フタを閉めていて、ガタガタするようだと厚みが足りていないこともあるので、厚紙を挟んだりして固定します。
フックがついていればそれに引っかけられますし、ない場合は紐を左右に渡してフックにかけられます。
ひもの結び方も記事にしました。ゆるみにくい結び方がわからない方はどうぞ。
あとはミニ額などで、後ろにフックがない場合は自分でつけないといけません。キリとドライバーで簡単につけられるので、こちらもどうぞ。
最後に
というわけで額装について説明してみました!
展覧会に出す出さないに関わらず、額装はとても作品がよく見えるので、ぜひ色々な人にチャレンジしてほしいと思います。テンション上がりますよ!

自分の絵が「ちゃんとした作品」
って感じですごく嬉しくなる♪
ドローイングなど額なしの絵を買った時も、ぜひ額装してみてほしいなと思います。お気に入りの絵の格もアップします。
最近は100均やIKEAなんかでも安い額が売られているので、最初はそれを活用してみてもいいかもですね。ただ、安い額は、ちょっとした衝撃ですぐに壊れますし、表面の面材が、アクリル板やガラスではなくPETシートだったりして、静電気で傷だらけになったり、黄ばんだりしてしまいます。
その点、額屋さんのフレームは作りがしっかりしてるので、とっても満足度は高いです。最初は規格額から試してみてください❗️
壁に飾れない人はフォトフレームなんかを利用するのもおすすめです。
色々な人に額装チャレンジしてもらえると嬉しいです🙏
額の梱包や配送についてはこちらの記事を読んでみてください↓