水彩の中でもっともクセが強く、買ってみたものの、使い道がよく分からない個性的な色。それがポタピ(ポッターズピンク)。どこかの記事に書いたのですが、一応まとめておきます。
Table of Contents
ポッタースピンクとは
ウィンザー&ニュートンのおすすめ記事で紹介したり、たびたびTwitterXでは取り上げたり、スペースでお話ししたり、と自分的になじみが深い色。あちこちで、よく語っている色なのですが、バラバラで参照しにくいので1つの記事にまとめておきます。
ポッターズピンク!ポーターズピンクだったり、ポターズピンクだったり。読み方色々なのですが、とにかくPotter’s Pinkです。
もしかしたらはじめて聞くという方もいるかもしれません。こちらの色はホルベインやクサカベなど日本のメーカーがあまり取り扱わない色のため、多くは海外のメーカーで見かける色となっています。
顔料はPR233。ポッターズピンクは顔料としての歴史は古いです。18世紀のイギリスの陶芸家によって発見された色だったため、陶芸家(Potter)のピンク(Pink)と名付けられました。
ポッターさんのピンク!
こちらのサイトに顔料の解説がありました↓
色は渋みのあるピンク。ピンク、というには色が渋いのですが、でもピンクです。
ポッターズピンクの特徴
とにかく粒子が粗い!
粒子の粗い色というのは色々ありますが、ポッターズピンクはその中でもかなり粒子が粗い色です。全ての色の中で最も粒子が粗い色と言ってもいいのかもしれません。ものすごい粒子感です。
なので、あまり色はつきません。そして当然ですが、塗るときにムラができます。普通の絵具だと思って塗ると、平坦に色がつかないので戸惑います。
ドットシートについていたポッターズピンクをはじめて塗ったとき、とてもびっくりしました。とにかくざらざらします。このザラザラっぷりはすごくて、塗った部分を触ると手でザラザラが感じ取れるほどです。
単一顔料なのにピンク
くすみピンクです。見たら分かるよって感じかもしれませんが…
すごいのは単一顔料なのにピンク色だということです。ピンク色の顔料ってほぼ存在しなくて、このポッターズピンクだけのようです。普通はピンクといえば、赤に白が混ざるものなのですが、こちらのPR233は元からこの色なんですよね。
ちゃんと過去にはバラ色の絵具として使われていた時代があるんですよ。2
ピンクといっても、彩度の低いくすんだピンクです。赤茶色のようにも見えます。この色自体も絶妙で、色々な使い道があります。何がいいのかというと、粒状化色といえば青や緑、茶色が多いので暖色系は珍しいんです。混色の幅もぐっと広がりやすいです。
色が淡い
もともと色が淡いです。透明水彩は濃く塗ると色が黒っぽくなる色もありますが、ポッターズピンクは濃く塗っても色が深くなりません。ここが一番使いやすいポイントかもしれません。粒子感の強い色は、塗った時にまばらに色がつくことが多いので、黒っぽい粒状化色は汚れっぽく見えることも多いので、使い方を選んじゃうんですよね。
その点ポッターズピンクは色が淡く、しかもめずらしい暖色系。(赤系の粒状化色ってとっても珍しいんですよ)
混色も色々試しやすいです!これは推しポイントですね。
ポッターズピンク メーカー比較
今、手元にあるのが、ウィンザー&ニュートン、マイメリブルー、シュミンケホラダムホラダムのポッターズピンク。
色の差はこんな感じ。同じ顔料でも、いくつか色があるそうです。色の鮮やかさ、粒子の広がり方には、結構差がありました。
まず1色試してみるならウィンザー&ニュートンですね。枯葉もここから入りました。一番価格も安いですし。ちなみに作例は全てウィンザー&ニュートンのポッターズピンクです。粒子は一番暴れます。
マイメリのポッターズピンクは、ランキングにも入るほど人気色。他のポッターズピンクと比べて、色が鮮やかなのが特徴です。明るめのピンク色なので、ピンクとして使いたいならこちらがおすすめ。粒子の表れ方も穏やかで、初心者向きです。量も多いし、コスパは悪くないです。
シュミンケホラダムのポッターズピンクは色が渋め。色も比較的濃いめで、影の色にも使うことができます。粒子感は強いですが、こちらもコントロールしやすいです。
作例とメイキング
下地に使う
癖つよなポッターズピンク。どのように使うのか?
下地に使うことが一番多いですね。
この2つの記事は展覧会の宣伝のために書いた記事ですが、ポッターズピンクを使ったメイキングを載せているのでぜひ!(同時期に描いた絵なこともあって、配色の雰囲気が似てますね)
ポッターズピンクを下地に使うと、なんともいえないザラザラとした効果がアンティーク風でいい感じになるのです。他の色では代用が効かないんですよね!!
完成後はこちら↓
ポッターズピンクを使うコツは、色をつけるのに使おうとしないこと。いや、使うことはできるのですが、ポッターズピンクは色が薄くて、しかもムラになります。これはどちらかというと「独特の効果を与える絵具として考える」とよいでしょう。なので粒状化の効果をうまく活かせると古びた感じや質感を表現できます。
混色に使う
ポッターズピンクを他の色と混ぜると、必ず分離します。相手が粒子が粗い絵具であっても細かい絵具であっても絵具は混ざりません。これを生かして分離色を作るのもいいですね。ポッターズピンクとウルトラマリンディープは失敗がなくておすすめですね。
思ったより色々な色と相性がいいので、挑戦してみると楽しいと思います。ポッターズピンクはどのメーカーのものでもよく分離します。
独特の混色ができる個性的な絵具です!
注意点
乾燥させずに使うのがおすすめ!
また、使うときの注意点として、パレットに乾燥させる使い方よりも、チューブから出して柔らかいまま使う方が思いっきり使えます。乾燥させるとやや硬くなりがちです。もともと薄い色がもっと薄くなってしまいます。
定着は弱め
また、粒子が大きいせいかあまり定着はよくありません。下地とか薄めて使う分にはいいのですが、ぽってり厚めに塗ると、水で色が取れやすいです。その上に重ね塗りはしないほうがよさそうです。紙もどちらかというとコットン紙で使う方が調子良いですね。
また、着色が弱いことから、色をつけるのに絵具をたくさん消費するため、あっという間になくなります。なのでマイメリの12mlチューブでもあっという間に消費しちゃいそうです。
また全色ドットシートのわずかな量では、この色の本当のよさは分かりにくいです。ぜひチューブを購入して、使ってみてください。
終わりに
ポッターズピンクと本格的に出会ったのは、ちょうど2年前、2022年の春くらいです。それまでは全色ドットシートで出会っても「変わった色だな〜」と思うくらいで、絵に活かしてみようと思うことがなかったです。
2022年の春くらいに、公募展に出す絵と、ARTs LABoのCOLORs展に出す絵をほぼ同時期に描いていて、ポッターズピンクの使い方を閃きました!そのきっかけになったのはシュミンケホラダムのグラニュレーティングカラーのツンドラシリーズでした。
ブログのために顔料のことを研究していたからこそ、使い方を思いついたのでした💡
それ以来、私はすっかりポッターズピンクの虜です。
ポッターズピンクが、私にとって「新しい表現」を連れてきてくれました。画材をよく知ろうと試行錯誤していると、画材が「新しい表現」を連れてきてくれるということがよくあります。なので、やっぱり画材と仲良くなることは大事だな、と思います。(これが本当の意味での使いこなす、ということなのだと思います)
ポッターズピンクはすぐには使いこなせない色かもしれませんが、思いのほか「ハマる」かもしれません。それぞれの使い方を探してみてくださいね。気になる人はぜひお試しを🙏