混色によって鮮やかな紫を作るのは難しい、と別の記事に描いたことがあったのですが、一体どう難しいのか?紫の混色のことを記事にしました!きれいな紫が作れる絵具の組み合わせも紹介します。
Table of Contents
きれいな紫は作れない?
紫は赤と青を混色して作ることができます。ですが…

あれ?思ったよりきれいな紫にならないなあ
と、思ったことありませんでしたか?
私も子供の頃からとても不思議でした。小学校の図工の時間。赤と黄色を混ぜたらオレンジ、黄色と青を混ぜたら緑になるのに、赤と青を混ぜてもあまりきれいな紫にはならない。ちょっと海老茶っぽい色になってしまって「あれ〜?」と首をかしげた記憶があります。
市販されている専門家用の透明水彩の場合、全てのメーカーが良質な顔料を使用しているので、色さえ選べば、一応紫にはなります。

ただ、混色して緑やオレンジを作る場合と比べて、少し色がしずみがちではあります。

混色できれいな紫を作るのは難しいんだねえ…
なので、鮮やかな紫が欲しい場合は、1つ紫の絵具を持っていてもいいと思います。
紫の絵具ばかり集めた記事も読んでみてください↓
ただ、やっぱりきれいな紫が混色で作れたら嬉しいですよね。なので、今回は色々な赤と青で紫を作ってみたいと思います!
基本7色で紫を作る、色を選ぶ
まず、基本7色で紫を作ってみたいと思います。

せっかくなので基本7色で、紫を作ってみよう!
絵具の名前が知りたい人は7色の記事も読んでみてね
基本7色はこんなラインナップ↓

この中で紫の混色に使えそうなのは…
マゼンタ(赤)、シアン(青)、ウルトラマリン(青)ってところでしょうか!



マゼンタはメーカーによって色名が違い、PV19という顔料の絵具です。色はやや紫よりの鮮やかなローズレッドです。
(ホルベインではキナクリドンレッド、ウィンザー&ニュートンとシュミンケではパーマネントカーマイン)
フタロブルーもメーカーによって色名違います。中身はPB15という顔料ですが、その中でもフタロブルー(イエローシェード)という色です。色は、プリンタのインクのシアンに似ていて深い水色です。
この記事ではマゼンタ、フタロブルーという名前で統一しています。
ウルトラマリンは、どのメーカーでもウルトラマリンです。

色名はメーカーさんによってちがうので、
記事読んでみてね!
赤は一種類しかないので、紫を作る組み合わせは2種類です。
- マゼンタ×シアン
- マゼンタ×ウルトラマリン
ではどちらの方が鮮やかな紫を作ることができるか、やってみたいと思います❗️

ややこしくてごめんね!
顔料だとマゼンタはPV19
シアンはPB15:3
ウルトラマリンはPB29
です!
鮮やかな紫ができる組み合わせ(PV19を使う)
まずはマゼンタ(キナクリドンレッド)という赤を軸に、ウルトラマリンと混ぜた場合、シアンと混ぜた場合で比べてみましょう。
マゼンタはホルベインではキナクリドンレッドという名前の絵具です。

こんな色ですね。真っ赤と言うより、赤紫というか、ピンクっぽい赤ですよね。
青やウルトラマリン とフタロブルーの2色を使って比べてみます。
ウルトラマリンはどのメーカーでも同じような色です。紫がかった青、群青色ですね。

シアンはフタロブルー(イエローシェード)のことです。水色って感じの青ですよね。

さて、どちらを混ぜた時の方が鮮やかになるでしょうか?

予想してみてね!
マゼンタ(キナクリドンレッド)×ウルトラマリン
マゼンタとウルトラマリンを混ぜてみました!

比較的鮮やかな紫ができましたね。ただ、ウルトラマリンが粒子の荒い色なので、粒子の細かいマゼンタと混ぜると分離してしまいます。色同士がしっかり混ざりきらず、色が別れてしまうんですね。真ん中あたりの紫のところを見ると、紫の葉の真ん中あたりに粒子の大きいウルトラマリンブルーが溜まっているのがわかると思います。
そして、ウルトラマリンは透明感があり、あまり強い色味でないので、混ぜてできた紫も割と淡く明るいです。
マゼンタ(キナクリドンレッド) ×フタロブルー
次にマゼンタとフタロブルーを混ぜてみました。

フタロブルーとマゼンタを混ぜると、ウルトラマリンの時よりもやや渋くなりますが、紫として成立しています。
マゼンタもフタロブルーも粒子の細かい滑らかな色なので、分離せずキレイに混ざっています。
シアンは色味が強いので、混ぜて作った紫は、色が濃く深い紫です。
どちらの組み合わせの方が鮮やか?
シアンと混ぜたときよりも、ウルトラマリンを混ぜたときの方が、鮮やかな紫になります。
混色は色相環の中で、近くの色同士を混ぜた方が、鮮やかな色を作ることができる、というルールがあります。

なので紫の場合だと、紫よりの赤と紫よりの青を混ぜた方が、鮮やかな紫を作ることができます。この場合だとマゼンタ(キナクリドンレッド)は紫がかった赤、ウルトラマリンは青の中では一番紫がかった青なので、比較的鮮やかな紫ができています。
鈍い紫ができる組み合わせ(カドミウムレッドを使う)
試しに、赤をもっと黄色よりの赤に変えてみましょう。赤をマゼンタ(PV19キナクリドンレッド)からカドミウムレッドライトにしてみます。
カドミウムレッドライトは、黄色寄りの赤なので、青との距離はもっと遠くなります。


さて、どんな紫が作れるでしょうか?
カドミウムレッドライト×ウルトラマリン
まず、カドミウムレッド とウルトラマリンを混ぜてみましょう。

赤をカドミウムレッドにすると、かなり渋みが増して、紫というよりグレーに近い色ができました。赤を変えるだけでこんなに変わるとは。。
これでは紫とはいえないかもしれませんね。
顔料同士の相性があまりよくないです。ざらっとした感じになり、あまりキレイににじみません。
カドミウムレッド×フタロブルー
次に、カドミウムレッド とフタロブルーを混ぜてみましょう。ちょっと嫌な予感がしますが…

ああ、やっぱり…
シアンとカドミウムレッドの組み合わせでは、さらに渋い色になってしまいますね。。もはや、紫の気配はなくなりました。
補色の組み合わせに近づいたので、同じくらい混ぜると色味がなくなって、グレーになりました。
これはこれで何かに使えそうですが、紫を作れる組み合わせではないことがわかりました。
顔料同士の相性が悪いのか、こちらもちょっとざらっとした感じ。
赤を黄色よりにするとかなり渋くなる
赤を黄色よりにすると、かなり渋い紫(というよりグレー)になることがわかりました。
赤がマゼンタの時にはキレイな紫ができたのに。。
色相環の中で距離が遠くなるほど、混ぜたときの色は渋くなりますが、これほどとは。。カドミウムレッドとシアン(ピーコックブルー)が色相環の中では一番離れているので、一番色が渋くなります。

鮮やかな紫を作りたいときは
この組み合わせは使えないね
赤の色を変えて、もっと鮮やかな紫はできるか?
どうやら、赤の色のチョイスが、紫の彩度に影響を与えている感じです。青は、フタロブルーとウルトラマリンとで比べた場合、確かにウルトラマリンを混色した場合の方が鮮やかにはなるのですが、フタロブルーを混ぜたときもそこまで彩度が落ちていません。
ウルトラマリンとフタロブルー、どちらの青を使っても、一応紫にはなっています。
ただ、赤の方を変えてみると、かなり彩度が落ちてしまいましたね。

どうやら、赤が大事みたいです!
なので、赤をさらに紫よりにする、またはさらに純粋な色にすることで、もっと鮮やかな紫になるかもしれません。やってみよう!
もっと鮮やかな紫ができる組み合わせ(赤を紫よりに)
先ほどのマゼンタはPV19という顔料ですが、これをもっと紫より赤に変えてみます。キナクリドンマゼンタPR122という顔料です。
この色です!

この色がどんな色が知りたい方はこの記事を読んでみて↓
キナクリドンマゼンタがかなり鮮やかな色なので、この色を使ってみます。
マゼンタ(キナクリドンレッド)→キナクリドンマゼンタにチェンジ!


どうかな?鮮やかな紫になるかな?
キナクリドンマゼンタ×ウルトラマリン
キナクリドンマゼンタとウルトラマリンを混ぜて紫を作ってみましょう。ドキドキ…

できましたっ!
やはり鮮やかな紫になりました!マゼンタの時と比べると、特に赤に近い部分の紫の彩度に差があります。鮮やかな赤紫になってます。
私はもうこれで満足です^^
少し分離していますが、そこまで気にならないですね。
パープルマゼンタ×フタロブルー
次にキナクリドンマゼンタとフタロブルーを混ぜて紫を作ります。

こちらはやや落ち着いた感じになりますが、赤がマゼンタ(キナクリドンレッド)の時よりは鮮やかな紫になっています。
フタロブルーの色味が強いので、混ぜた色はかなり濃く深い紫になります。特に青紫が、インダンスレンブルーのような深いブルーになり、とても素敵です。
もっともっと鮮やかな紫ができる組み合わせ(赤をもっと純粋な色に)
プリンタのインクの赤が、かなり明るめのピンクであることから、混色によって紫色の鮮やかさを保つためには、もっと純粋な赤にすればいいはず。
ということでマゼンタ(キナクリドンレッド)を彩度の高いオペラという色に変えてみます。

オペラは、彩度が高いだけでなく、色相もやや紫よりで、キナクリドンマゼンタ(先ほど試したPR122)と同じくらいの色です。
ただ、オペラは耐光性に欠ける色なので、作品を販売する時や部屋に飾る時には、注意が必要な色です。作品をファイルに保存しておくなら特に問題ないです。
オペラの色比較と耐光性についてはこの記事をチェック↓
オペラ×ウルトラマリン

ものすごく鮮やかな紫になりました。さすがオペラ!
オペラは、とても鮮やかな赤で、かつ色に深みがないので、混色してできた紫にも明るさがあります。鮮やかな紫にしたい時にはこの組み合わせがいいと思います。
オペラ×フタロブルー

こちらも鮮やかです。鮮やかな紫だけでなく、鮮やかな青も作れる事がわかりました。ちょうどウルトラマリンブルーのような色です。でもウルトラマリンブルーと違って粒子が荒くないので、滑らかな赤みのブルーが欲しい時には、この組み合わせが使えるかもしれません。
鮮やかで、深みのある紫ができる組み合わせ(追記)
もうひとつだけ!こちらは追記になります。
まっちの透明水彩(マッチベイシックカラー)マゼンタとウルトラマリン、ブルーで作れる紫が、とてもとても美しいので、こちらも紹介させてください!
まっちは日本のメーカーです。手に入れづらいのですが、とてもおすすめのメーカーです。
マッチベイシックカラーのマゼンタはとても鮮やかな赤紫です。この色は他のメーカーでは売っていない色で、鮮やかさで明るい色味なので、混色でとても強い威力を発揮します。
マゼンタはこんな感じの色です。色相はPR122やオペラとも似ていますが、かなり鮮やかで、色の深さもあります。


どんな色になるのかな。ドキドキ…
マゼンタ(まっち)×ウルトラマリン(まっち)

どうですか!?この美しさ!!
オペラ混色よりも、マゼンタ(まっち)の混色は深みがありながらとても鮮やかです。オペラでは作ることのできない色を少なからず含んでいます。色々試した結果、オペラと同様耐光性はイマイチという結果になりましたが、それを差し引いてもなかなか良いです。
今まで見たどの紫よりも綺麗。
マゼンタ(まっち)×ブルー(まっち)

画像ではわかりにくいですが、こちらもあまり彩度が落ちていません。より深みのある紫で美しい!
普通は青をウルトラマリンからシアンの色に変えると、彩度が落ちますが、マッチの色は純度が高いのか、あまり彩度は落ちません。本当に不思議。この紫もとても使えそうです。
ちなみに今回の混色は全てマッチベイシックカラーを使用しています。
マッチベイシックカラーのレビューはこちら!
初心者にもおすすめの絵具です。一般的な絵具は5mlチューブでマッチ水彩は2倍量の10mlチューブであるため、かなりお買い得だと思います。クオリティは高いです。
作った紫-混色一覧
色を比べられるように一覧にしました。
紫が鮮やかな順番に並べています。
オペラ使用の紫とマッチのマゼンタ使用の紫は同じくらい鮮やかでしたが、マッチのマゼンタの方が深みのある混色でした。










紫の混色まとめ
鮮やかな紫をつくるためのポイントは3つ
- 青はウルトラマリンがよい(ただ、フタロブルーでもそこまで差はでない)
- 赤はなるべく紫よりの赤がよい
- 鮮やかさにこだわるなら、オペラかまっちのマゼンタがおすすめ(耐光性は低め)
おわりに
意外と奥深い混色。
鮮やかな紫の絵具を買ってしまえばよいのですが、混色のメリットは、2つの絵具の配分によってグラデーションにしたり、色の変化をつけることができることです。
紫は、少し青がかった色や、ピンクがかった紫が、混ざりきらずに、見えているととてもきれいに見えます。紫陽花のような感じです。このような同系色が複数同時に見えていると、とても美しく見えます。

単色で塗ってしまうと、安定感はありますが、少し味気ない感じになります。
また混色は、鮮やかな混色の方が優れている、というわけでもなく、色が渋くなる混色の方が使い勝手が良いこともあります。ぜひどちらも試して欲しいな!と思いました。

もちろん好みもあります!
マッチのマゼンタを使った紫もぜひ試して欲しい。
青と赤があれば、どの色でもできます。

紫の絵具の記事もおすすめです↓
他にも混色の記事もあります、役に立つ!と評判♪↓