今年もメインパレットに入れた全26色について、1色ずつ詳しく解説してみようと思います。
かなり長いですが、備忘録としての意味もあるので、時間のあるときにごゆるりと楽しんでくださいませ。
色名、メーカー、顔料、選んだ理由も書いています。去年と入れ替えしたものについては、それも。全く新しく入れた色についてはNEW!のマークをつけています。
Table of Contents
黄色系
黄色系は今年は3色のみにしました。いつもと似たような感じですが、いわゆる真っ黄色の色は入れていないくて、やや温かみのある黄色、冷たいレモン、くすんだ黄土色の3つにして、メリハリをつけました。
イエローオーカー
ウィンザー&ニュートン(PY43)
水彩を始めたときからずっとパレットに入っている定番の黄土色です。地味めなので「黄土色?本当に使える?」って思う方も多いかもですね。わたしもそうでした。ここ5年くらいでフル活用できる色だと分かりました。茶色ではなく、くすんだ黄色として、他の色と混色してみるといいですよ。下地色や色調補正にも使うことができます。
去年のパレットでも一番早くなくなった色でした。
どのメーカーのものでも問題ないですが、今年は溶けやすいウィンザー&ニュートンのイエローオーカーにしてみました。
カドミウムイエローディープ
ホルベイン(PY35)
毎年必ず入れているカドミウムイエロー。カドミウムイエローにも色々種類があります。オレンジよりの暖かい色から、真っ黄色、レモン色など…有毒ですが、発色と鮮やかさでは群を抜いています。私はカドミウムシリーズが気に入っているのですが、ダメな人は他の黄色を。
いつもだとカドミウムイエローペールかカドミウムイエローミドルを使っています。(いわゆる真っ黄色です。)今年は少し変えて、ややオレンジよりのカドミウムイエローディープを。少し薄めるとソフトで優しい黄色になるところがお気に入りです。
バナジウムイエロー
シュミンケホラダム(PY184)
去年に引き続き続投です。強烈なレモンですが、発色がよく溶けやすいです。
色々あるレモンの中でも特に色が冷たいです。それが面白い。とくに青、緑系との混色で威力を発揮します。去年思ったほど活用できなかったので今年も引き続き使ってみようと思います。カドミウムイエローの方をややオレンジ色にしたので、より色相が離れ、活躍の場が増えると思います。
緑系
今年は黄緑1色、定番の鮮やか緑1色、青緑2色としています。混色をメインにしていくつもりです。いつも入れている色を外して、別の色を入れたりしています。
オリーブグリーン
ホルベイン(PY150,PG7,PBr25) NEW!
ホルベインの傑作色。サブパレットには入れてるのですがメインでは初めてです。
透明感が強く色はかなり渋みのある黄緑。黄色が強いオリーブグリーンです。鮮やかな色と混色したり、あえて赤やオレンジと組み合わせて使うのも素敵なはず。今年活躍させるはずのセヌリエレッドとかなり相性いいのではないかと思っています。
毎年欠かさず入れていたサップグリーンの代わりです。サップグリーンはかなり便利な色であったので、常に頼ってしまいます。今年はちょっと違ったグリーンも試してみたいので、サップグリーンを外し、オリーブグリーンを入れました。
便利は渋い緑についてはこの記事が詳しいです。
ウィンザーグリーン(イエローシェード)
ウィンザー&ニュートン PG36 NEW!
いつも使っているのはフタログリーン(PG7)のほうです。今回入れたPG36はPG7の双子の兄弟のような顔料で、色が少し黄色がかっています。ですが、ほぼほぼ同じような色。
PG7の方は定番として使ってるのですが、PG36は初めてメインパレットに入れました。アクリルでは使ったことあるので、PG7と同じように使えることは確認済みですが、水彩でも使ってみたくて。
これらのフタログリーンの特徴は強い透明感、鮮やか、発色の強さです。鮮やかなミントグリーンとして使うこともありますが、基本的には混色します。混色することにより、どんな緑でも作ることができるのが、このフタログリーンの良さです。
ビリジャン
ホルベイン PG18 NEW!
この色はまったく初めて使う色です。去年ホルベイン108色を買ったので、そういえばこんな色もあったなあと。完全に好奇心ですね!
愛用者を聞かないのでわたしが検証してみます。色味は少しくすんだ青緑でたしかにフタログリーンbsをソフトにしたような色ですね。粒子も荒めで分離色も作れるはずです。
使うのが楽しみな色の一つです。
コバルトターコイズ
ホルベインアーティストパン(PB28)
シュミンケホラダムのコバルトターコイズが溶けやすく、色も緑っぽく鮮やかで気に入っていたのですが、使い切って以来、買い足ししてません。そこで去年出会った、ホルベイン固形のコバルトターコイズ!色も溶け具合も似ていて、今年はこっちを使ってみようかと。パンから出してパレットで使うのは邪道かもしれませんが…アラビアゴムで接着してます。
ところでコバルトターコイズにはPG50のものとPB28のものがあります。似たようなものだとは思いますが、PG50の方がちょっとだけ緑がかっています。
青系
青は6色。単一顔料のものばかり選んでいます。去年の青がとても気に入っていたので、変えたくなかったのですが、一方でまだ試していない青もあるので、今年はチャレンジします。
セルリアンブルー
ホルベイン(PB35) NEW!
メインパレットに初めて入れる青色。色はまさに空色です。単一顔料で白は混ざっていないのに淡い色で、心躍ります。
白が混ざってないのにこの淡さ!すごいね。
粒状化が激しく他の色とも決して混ざりませんが、きっと使いこなしてみせる!
フタロブルー グリーンシェード
ターナー(PB15:3)
とても鮮やかなシアンの色。三原色のシアンに一番近い、鮮やかな色です。
作れない色味ではあるので、この系統の色はパレットに入れていることが多いです。(ない年はとても不便を感じる)
とても優秀な色ではあるのですが、どうも着色力や発色が強すぎて、混色した色が濃すぎたり、ムラなく塗るのがむずかしい色でもあります。なので、いつもならピーコックブルーやセルリアンブルーヒューなど少し色が強すぎないものを選ぶのですが、今年は敢えてフタロブルーグリーンシェードで。
混色で力強い色を作ってみます。くすんだ色にアクセントを入れるのも向いてます。
プルシャンブルー
ホルベイン(PB 27)
去年に引き続き、続投です。
プルシャンブルーは色々ある青の中でも、他の青にはない独特の魅力があります。濃く塗ると、とても色が濃く深い紺色ですが、薄めて塗ると明るい水色になります。かなり色の幅が広く、色々な表情を持っているのがプルシャンブルーの魅力です。
色も鮮やかすぎないので、他の色とのバランスも取りやすいです。強い発色と着色力も特徴の一つで、重ね塗りにもむいています。ちょっとクセがあるかもしれませんが、初心者にもオススメしたい色です。
ところでこのプルシャンブルー、日本人にはとても親しみのある色でもあります。どこかで見た感じしませんか?
日本ではちょうど江戸時代に使われるようになった顔料で、浮世絵にたくさん使われています。有名な葛飾北斎の浮世絵でも見かけます。日本では「ベロ藍」と呼ばれた色でした。
ホルベインのプルシャンブルーは私のお気に入りです。
ウルトラマリンブルー
まっちベイシック PB29
必ずパレットに入る定番色。この色も混色で作ることができない&とても便利な色味なので、欠かせません。
ウルトラマリンは青の中でも紫(赤寄り)の鮮やかな青です。
持っていなかったらおすすめの色なのですが、ウルトラマリン顔料は粒子が粗めです。なので、混色すると分離してしまったり、色が強くつかないこともあります。独特の粒子が見えたりもします。
ところがまっちのウルトラマリンはとても滑らかで発色も安定していて、とても使いやすいです。色も明るく鮮やかです。これには驚かされました!
粒子の細かさや滑らかさ、溶けやすさです。お値段もお手頃でさらにお気に入りになりました。
ウルトラマリンディープ
マイメリ(PB29)
ウルトラマリンがなぜか2色も入っていて不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。
まっちのウルトラマリンはウルトラマリンにしてはかなり滑らかですが、マイメリのウルトラマリンディープはすごく粒子が荒く、ざらっとしています。。マイメリやシュミンケホラダムなどは、ウルトラマリンも粒子の細かいタイプと荒いタイプで2種類売っていたりします。
粒子の細かいタイプとの違いは、粗密感が強く下の色が透けがちなのと、他の色と分離しやすいところ、色が少し紫がかっているところです。使っていても、すぐに絵具がなくなってしまいます。色は淡めです。しっかり、濃く塗れるのは粒子の細かいウルトラマリンです。
粒子の荒いウルトラマリンディープ(マイメリ)は昨年少し使ってみて、自分との絵の相性の良さを感じたので、パレットに入れることにしました。
パレットに、2色もウルトラマリンが入っていてどうかな、と思ったのですが、そのうちまた使い勝手を報告しますね!
ダークブルー
シュミンケホラダム(PB60)
デルフトブルーの代打。デルフトブルーはとても好きな色味だったのですが、ちょうど使いきっていました。買い足そうと思ってましたが、今年、記事書くために買ったダークブルーもなかなかいい色味なので、こちらを。
顔料のPB60はインダンスレンブルーといいますが、メーカーによっても色の差があります。どの色も人気がありますが、デルフトブルーは少し赤みのある紺色で、華やかな雰囲気です。
とてもお気に入りの絵具です。ダークブルーでどのような味が出せるのか楽しみです。
紫
パーマネントバイオレット
ホルベイン(PV23)
定番の紫。
PV23ディオキサジンバイオレット、どのメーカーでも買えますが、色味や濃さ、耐光性に差があるそうです。紫は混色でも作れなくないですが、色々な混色の中でもいちばん鮮やかな色を作るのが難しいので、パレットに入れておいてもいいと思います。
ホルベインとウィンザー&ニュートンでは、少し色味が違います。ホルベインのパーマネントバイオレットの方が色が赤より、ウィンザー&ニュートンのウィンザーバイオレットは青よりの紫です。ウィンザーバイオレットは深みがあり、お気に入りの色の一つです。
ペリレンバイオレット
ウィンザー&ニュートン(PV29)NEW!
今年初めてパレットに入れた色。
ペリレンシリーズは独特の暗色と優れた耐光性があります。代表的なのはペリレンマルーン、ペリレンバイオレット、ペリレングリーンあたりでしょうか。
暗赤色や暗紫色はパレットにあると便利だと昔から思っていたので、今回入れてみることに。
赤、オレンジ
赤は今年、大きく色を変えました。今年は、いつも入れているPV19はいれていません。その代わりにセヌリエレッドをいれています。あと毎年入っているバーミリオン(朱色)の絵具も入っていません。代わりにキナクリドンスカーレットが入っています。とっても不安ですが、新しい世界が開けると信じて…
キナクリドンマゼンタ
ホルベインアーティストパン(PR122)
こちらも毎年のようにお世話になっている赤色です。メーカーだけ変更。ホルベインアーティストパンのキナクリドンマゼンタが明るくとても好みだったので、メインパレットに無理やり入れてしまいました。
青味がかった赤で、青系との混色に欠かせません。薄めてピンクとしても使います。耐光性も高く、透明感にも優れているので、汎用性が半端ないです。人気色オペラほどの彩度ではありませんが、普段使いには十分です。オペラは耐光性が低いので、作品を販売したり、飾ったりしたい時にはキナクリドンマゼンタをピンクとして使うのがおすすめです。
セヌリエレッド
セヌリエ(PR254)NEW!
こちらもメインパレットには初です。まさに真っ赤。真紅です。PG254でピロールレッドという名前で売られていることが多く、ほとんどのメーカーで買うことができます。珍しい色というわけでは無いですが、惹かれたのはこの発色の強さ。この赤を使って和風の絵にも挑戦したいと思います。
赤は好みが出ると思うのですが、できるだけ鮮やかな真っ赤が欲しい、という場合にはおすすめです。
基本の赤でオススメなのはPV19の絵具です。詳しく知りたい方はこちら↓
キナクリドンスカーレット
ホルベイン(PR209) NEW!
はじめてパレットに入れる色です。ホルベイン全色セットを買って色見本を作ったときに、いいなあと思った色です。濃さはあまりなく、とても鮮やかで明るい色です。透明感が強く、明るい色なので、重ね塗りしてピンクとして使うのに最適です。ブリリアントピンクはこの絵具の顔料を使っているようです。
去年は青系の絵が多かったので、今年はピンクの絵にも挑戦したいなと思ってます。
サターンレッド
シュミンケホラダム(PO64)
この色をパレットに入れるのは2回め。前回は一昨年。あまりうまく使えずパレットから外しましたが今年はリベンジ!今回はいつも必ず入れているオレンジ系レッド(バーミリオン系の朱色)が入っていないので、そのかわりこのオレンジをと思ってます。
色はとても鮮やかなオレンジ。素晴らしい彩度です。適度に透明感もあり、下地色にも重ね塗りにも良いのはないかと思ってます。
ちなみにカタログに載っている色と実際の絵具の色がかなり違います。カタログの色は、茶色のような色なのですが、実際にはかなり鮮やかなオレンジです。画像の色もさほどにこの色の鮮やかさを再現しきれていません。
スピナルブラウン
シュミンケホラダム(PY119)
続投。去年使ってとても便利だったので、今年も使います。
色は柔らかい明るめの茶色で、ウサギや子犬の毛並みのような色です。下地色や混色にも活躍しますし、人物画のベース色にしても優秀です。動物や食べ物のイラストを描く人にもオススメです。なかなかありそうでない個性的な茶色です。
溶けやすく伸びも良いのですが、時間が経つとパレットの上でボロボロになりやすいので、少しずつ出して使うのをおすすめします。
イングリッシュベネチアンレッド
シュミンケホラダム(PR101)
続投。10年ほどパレットの常連色。独特の赤みと強い発色の個性ある色です。耐光性も高く堅牢な色でもあります。
植物や土、建物など、自然のものにも人工物にもよく含まれている色で、よく使う色です。混色で力強い色を作ることもでき、絵を描くときに欠かせません。
シュミンケホラダムのイングリッシュベネチアンレッドは10年以上お気に入りの色で、パレットから外すことは考えられません。何本もリピートしている色です。
バーントアンバー
シュミンケホラダム(PBr7)
続投。こちらも10年ほど私が定番にしている茶色です。バーントアンバー自体は定番カラーですが、シュミンケホラダムのバーントアンバーの色味がとても気に入っています。
こっくりした深みのある茶色で美しい色合いです。どんな色とも相性がよく、また茶色の顔料にしては滑らかさがあります。下地色だけでなく、固有色が茶色のものを塗るときには必ず使っています。
セピア
マイメリブルー(PY164)NEW!
ずっとパレットに入れたいと思っていた色です。初めて入れます。
独特のグレーがかった茶色です。ダークブラウンの色味ですが、黒が入った色ではないところが珍しいです。溶けやすく、不透明感があります。茶色にしては珍しく粒子が細かめです。
この顔料黄色の仲間みたいですね。全く黄色っぽくはありませんが。。とても不思議。
人物、風景にも混色にも下地にも使えそうな色味です。便利そう。
シュミンケホラダムの廃盤色のウォルナットブラウンに少し似た色なので、こちらの色に代替わりさせることにしました。
インディゴ
マイメリ(NB-1)
この色を入れるのは去年に続いて2回目です。とてもとても気に入っております。
インディゴはほとんどが、黒と青の混合色ですが、マイメリは唯一のインディゴ顔料。しかも単一顔料。
色は濃い部分はしっかりした暗色、淡い部分は冷たいブルーグレーでとても上品な色でした。
影の色や夜空の色にとても重宝し、結構な分量の絵具を出したのにもかかわらずあっという間に使い切ってしまいました。おそらく来年以降もリピートすると思います。
マイメリのオススメ色です!
ニュートラルチント
シュミンケホラダム(PR122,PB60,PBk7)NEW!
こちらも始めて入れた色です。ずっと使ってみたかった色です。ニュートラルチントといえば、むらさきがかったグレーですが、この色はあまり見たことのない色です。赤紫っぽいのかなあ?とにかくとても雰囲気のある色です。黒として使うには少し色が淡いような気もします。
今年は黒髪を描いてみようと思っているのでうまく活用できたらと思います。
グレイオブグレイ
ホルベイン(PBk6,PW6) NEW!
初めて白が入ったカラーを導入してみました。どうなるかな。。デイビスグレーとかなり迷いました。弾きの強い紙や、淡い色に厚みを出すために使ってみようと思います。少し混ぜるだけで、色をくすませることもできます。これもまた記事で紹介できれば、と思います。
終わりに
というわけで、今年のパレットに入れた色を紹介してみました。長かったですね…!
ちなみに去年のパレットはこんな感じの色が入っていました。
今年のコンセプトは、「今まで使ってこなかった色を主力にし、使いこなす」ということです。
なので、今までで定番にしてきた絵具もあえてパレットから外したりしてます(使い慣れている色がパレットに入っているとそちらばかり使ってしまうため)
今まで使ってきた色に不満があるわけではありません。が、作家、また情報発信者として新しい世界を開き、成長していくという思いをこめて、新しい挑戦をしています。使い勝手などはときどきTwitterでつぶやくつもりなので、どうぞよろしくお願いいたします。
今年のテーマは「和」です。いつものスタイルに加えて和風の絵にも挑戦していけたらと思ってます。
(あとは講座の開設もできたらな、と!やりたいことがいっぱいで時間が足りるでしょうか…)
今年も面白い画材情報を発信していくよ〜
今年はどんな画材に会えるのかな。
楽しみ✨