なんだか賛否両論ありそうなタイトルですが、若いときにはよくつかめなかった「絵の上手さ」の正体について語ってみようと思います。もちろんこれが正解というものでもなく、こんな考え方もあるんだな!という感じで軽く読んでいただけたら嬉しいです。
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絵の上手さって!?
絵の上手さってなんでしょうね。皆さんは考えたことがあるでしょうか?
一口に絵の上手さといっても、写実的な人物画なのか、牧歌的な風景画なのか、はたまた漫画の絵なのか、でも全然変わってきますよね。大抵上手い!と誰もが感じる絵は同じですけど、その中でも魅力のポイントは違っていて、線がきれいだとか、体のバランスが自然だとか、色が綺麗だとか、発想がすごいとか色々な要素がありますよね。
て、考えると「絵の上手さ」って何だろう!!
と考え込んじゃうんですよね。
よく分からなくなっちゃった💦
そんなこと考えるより、手を動かせ、とかよく言いますけど…
でもこの「絵の上手さって何なんだ問題」を整理して紐といてみたら…
練習を頑張ろうと思う人もいると思うのです!そしてあんまり頑張らなくてもいいかな?という人もいるはずです。
なので、絵を描きたい、上達したい、と思う全ての人に「気が楽になってほしい」「もっと楽しんでほしい」という気持ちを持って、この記事を書きます!
絵の技術はゴールじゃない
「絵の上手さ」というのは言い換えると「絵の技術」ということでもあります。上手さというと、漠然とした感じですが、「技術」だと思うと少しはっきりしてくる感じがありませんか。
枯葉は思います。
絵の上手さ(=技術)はゴールではありません。
自分が伝えたいもの(アイディア)を伝えたいように表現する道具
これが技術の正体です。
なので技術を磨くというのは、道具箱の中に使いやすい道具をそろえることにも似ています。そして道具(技術)は1種類ではありません。色々あります。その中で、自分の身の丈にあった道具(技術)が必要なだけ揃っていればいいんです。その色々ある道具(技術)をおおまかに分類してみたいと思います。
それは細かく考えると本当に色々あるのですが
「大きく分けると3つじゃない?」
というのが最近考えていることです。
- 1.描写力
- 2.色彩
- 3.構成力
この3つです。
自分の作りたい作品にどの力がどの程度必要なのかは、違います。
この3つを完璧にマスターするには人生の時間はあまりにも短い😂
だからこそ、自分の描きたい絵にはどの要素が必要なのかな、と見極めが必要なのだと思います。よく絵の上達のことを考えるとき、そこまで上達に躍起にならなくても自分らしく楽しく絵が描けるケースも多いと思うのです。なので不必要にあせることなく、どの部分に比重を置くのか?それも見直してみるといいと思います。
言い方は悪いのですが、あまり技術がなくても描ける絵もあります。でも、自分の表現したいことが表現できていれば十分じゃないですか?
では1つずつ説明しますね。
描写力
描写力とは?
これが一番目立つ力です。なので絵の上手さ=描写力で語られることも多い印象。
「対象をそれらしく表現する力」です。
デッサン力(ちょっと不思議な言葉ですが)のような対象を観察してそっくりに再現する力もこれに含まれるし、コミックイラストのようにデフォルメに型のある絵をそれらしく描く能力もこれに含まれると考えています。
美しく線をひく能力や、立体感を持たせて影をつけるのもこの描写力に含まれるのではないかと思います。絵を描く工程でいうと、線画を描く部分と立体感をつける作業がこれかなと(あくまで所感です)
どんなタイプの絵でもある程度は描写力は必要になります。描写力がないと説得力が生まれないからです。説得力どころか、違和感や不気味さを残す場合もあります。なので、絵を描きたいと思ったときに、ある程度は身につける必要があります。
ですが、必要な描写力は「何を」「どのくらいのリアル度で」描きたいかによって変わってくるので、人によってはそこまで描写力が必要ないかもしれません。例えば、枯葉の絵柄を例に取ると…
こういう感じの人物画はわりと練習が必要でした↓ものすごくリアルでもないんですけど、人間っぽく見えるように描くのは難しい!
顔だけでも難しかったですが、全身、体の線が分かるように描けるようになるのにはもっと時間がかかりました。写真をたくさん模写しました(ほとんどヌード笑)
でも一方で、ひよこちゃんのイラストはそこまで、描写力いらないです…
こういうイラストはどちらかというとアイディアやキャラクターの魅力なんですよね。もちろんどちらの絵柄が上とか下とかではないですよ!ひよこちゃんは描写力がいらないので、たぶん誰でも簡単に描けます(子供でも描ける)けど、だからといって描写力が必要ない絵に価値がないということじゃないんです(誤解ないように!)
ただ、しっかりした基礎の力があると、描けるものの選択肢が増え、色々な表現ができます!なので色々なタイプの絵が自由に描きたい、または必要と感じる(←ここ重要)方は、どんどん練習して、描写力を身につけておくといいと思います。とくに体力があり、時間がある場合は(総じてそれは若いときだったりする…)身につけられるだけ身につけていくと、後々迷うことが少なくなります。
描写力を鍛えるには?
これを鍛えるのは、デッサンやスケッチ、クロッキー、模写、色々な方法がありますが、色々試してみて、どの方法でも描写力は鍛えられると感じました!大変で面倒な練習ほど(デッサンなど)効果が感じられ、簡単にできてしまう練習方法(クロッキーや模写)ほど枚数が必要になります。
ちなみに上達には個人差があり、すぐにコツをつかむ人もいれば、時間がかかる人もいます(どんなことでもそうですよね)
描写力は基礎体力みたいなものなので大事ですが、人によっては次にお話する「色彩」や「構成」の方が大事なこともあるので全部読んでみて、どのくらい自分に必要そうか改めて考えてみてくださいね。
色彩
色彩とは
意外と「その作品か好きかどうか」を判断するのは「色彩」の要素が大きいいう話もあります。確かに「色彩」の印象って結構大きい感じもします。
でも「名画」や人気作家さんの作品は「色彩」が素晴らしいことが多く、確かに「すごい」となるのは「描写力」でも、「好き」と思うのは「色彩」の要素なのかもしれないです。
ただ「色彩」の印象ってそこまで全面に出てこないんですよね。この絵の色彩はこんなふうに素晴らしいなあと思っているのはごく少数だと思います。ほとんどの人は「いい絵だなあ」と思った後に「色もきれいだな」くらいしか思いませんよね。
ただ、制作する側からすると、色彩は作品の伝えたいイメージや印象を左右する大事な要素です。
それもあまり意識して行われていなかったりしますが…
例えばダークトーンならシックで落ち着いたイメージ
パステルトーンなら、可愛らしいイメージ、
など、「イメージ」と「色彩」は深く深く結びついています。
色彩を鍛えるには
「色彩」は絵を工程では「色をつける」という部分になります。
そして「色彩」を表現する手段が、絵具やペン、色鉛筆など色をつける画材です。デジタルツールも画材といっていいでしょうね。
「色彩」の要素は画材と結びついていて画材を扱うというのは「絵に色彩の要素を最適な形で入れる」ということです。なので画材の扱い方を学ぶ、ということは色彩を扱うことの第1歩だと思っています。なので画材ブログをぜひ参考にしてみてくださいね。
あと色彩はセンスと言われますが、心配しないでください。色彩は理論があります。美しく見えるには理由があり、知識として学ぶことでかなり補うことができます。
こんな本をご参考に。
また配色本なども売っていますので、どんどん取り入れるといいですよ。
構成
構成とは?
これもなぜかほとんど語られないのですが、超重要です。
構成とは画面構成のことを指しますが、(どういう構図にするか)私はもう少し広く捉えています。絵の中にどんな要素を取り入れるか、どういう配置にするか、絵のアイディアや発想そのものもこの構成という要素に入ると考えています。またその作品にどんなテーマをこめるか?というのもこの構成の要素に入れてもいいかなと思っています。
例えて言うなら…
舞台監督がいるとします。どんなお芝居にするか(テーマ)、どんな配役にするか(モチーフの選定)、背景はどうするか、衣装や小物の配置、また役者の配置、ポーズなど決めますよね。この監督がやる仕事が絵で言うと構成の要素です。
一番わかりやすいのは構図(モチーフをどのように配置するか)だと思いますが、創作的な作品を作る人も多いので、背景や絵に取りいれる小物や衣装などもここに入ってくるかなと思います。
もちろん描く絵のタイプによってはあまりこの要素がそこまで必要でないこともあるかもしれません。後で詳しく語りますが、目で見たものをそっくりうつしていくタイプの絵だとそこまで、構成力が必要ないかもしれません。それでも多少なり、不必要なものをけずったり、見せたいモチーフを強調したりしますよね。どんな絵でも構成は必要だと思います。構成というと盛ることを考えてしまいがちですが、思い切って削るのも大事です。
足し算だけでなく
引き算も大事!
また描写力がすごい作品なのに、あまり魅力的に見えないのは、この構成がいまいちという場合があります。また、そこまで描写力がなくても、構成がいいととても魅力的に見えることも多いです。
構成力を鍛えるには…
それこそアイディアスケッチなのかな、と思います。この記事を読んでみてください。
また小さな紙に色をつけてみるのは色彩の要素と構成の要素どちらをも鍛えることができると思いますね。構図はとても大切なので、同じテーマを色々なパターンで描いてみるというのもいい方法だと思います。
また、日頃から絵とは関係なく色々なコンテンツを楽しんで、インプットしておくことも大事かもしれません。何を描いたらいいか分からない悩みについてはまた記事を書こうと思っています。
苦手なのであまり練習したくない人への処方箋
世の中のお絵描き上達系のアカウントを見てみると「とにかく練習しろ、手を動かせ、やらなければ上手くならない」というメッセージが多いですよね。私も上手くなりたいなら練習するしかない、というのには賛成です。
でもこの3つの要素を満遍なく、伸ばしていくのにはとにかく時間が足りない…!
全ての人が、絵の上達にたっぷり時間をかけられるわけじゃない。勉強しながら、仕事しながら、家事育児しながら、時間ない中で、なんとかやりくりして絵を描いている人、たくさんいるはずです。
私もです。
とにかく時間が足りない!
それに、そこまで「絵が上手くならなくてもいいかなあ」という人だっている。
何でもそうなんですが、楽しめる範囲でできればそれで十分という人も多いはず。
うんうん、
たのしく描ければ十分だ✨
「絵のために練習したくはないけど、ちょっと見栄えのする絵を描けないだろうか?」
そんなことを思ってしまった方のための処方箋を考えてみました。
描写力を諦めた…練習したくない人へ
正直、描写力を高めるための練習は、ちっとも楽しくありません。繰り返し描いていくうちにすこしずつ、物の構造が分かってきて少し面白くなりますが、それまでの道のりも長い💧
練習しんどいよ〜
という方のために、練習しないで、技術を底上げしてみせる術を伝授します(ちなみに全て過去の枯葉が実践済み)
またこういう方法を選択している人は、技術の底上げではなくあえて表現としてこれを選択していることがほとんどだと思うので、そのあたりはご承知おきください!
単純なデフォルメの絵にする
リアルな絵よりはシンプルな絵の方が上達しやすいです。シンプルな絵柄の方がバランスをとりやすいですし、立体感などもあまり考えなくていいですよね。ここで消費カロリーはかなり減らせます。
体をはっきり描かない
これは人物画に限った話になりますが、人物の体がはっきりとしないようなふわっとした服を着せる。人物の体をマスターするのは時間がかかります。なので難しい部分は隠してしまう。誤魔化しに感じるかもしれませんが、その代わり服のデザインを凝ればいいんです!(民族衣装をイメージしてください)
全身を描く時はふわっとした服。露出度を上げる時はバストアップの絵。とかにするとそこまで超絶技巧でなくてもそこそこに素敵な絵が描けます。(初期の枯葉の絵はこの方法を使って作品の完成度を最大限まで上げていました)
もちろんふわっとした服が好きなのもあります。
ただ、体を描く自信はあまりなくて、露出は避けてました。
影をつけない
影をあまりつけない、と決めてしまうと消費カロリーを減らせます。光と影や立体感を考えると、形を正確に取る以外に「考えること」が増えます。
枯葉の絵にはあまり影がありません。光源も考えません。これも逃げのように感じる方もいるかもしれませんが、そもそも日本画には影は表現されていませんよね。なのでこれも表現の選択肢の一つかなと思っています。そのぶん、線の美しさや画面の流れなどは意識していますよ。
影なんてなくても絵は成立する!
低コントラストの色彩にする
これは色塗りでの工夫になりますが、低コントラストの色彩にすると、あまり形が正確でないのには気づかれにくくなります。コンテストや公募、SNSで人目をひくには、ある程度コントラストの高さが必要になりますが、趣味で描く絵だったら、低コントラストでもいい…!いや、その方が素敵な場合もあります。
昔の作品は技術をごまかそうという意図はありませんでしたが、低コントラストの作品が多かったです。大勢の中では目立ちにくいですが、じんわりと味わえるような色合いだったとも思います。
理想は高コントラストと低コントラスト、両方を描きたい雰囲気によって選べることですが、描写力に課題を感じる場合はあえて低コントラストを選ぶのもありです。
色彩苦手…色に興味がない人へ
これは、もう作品をモノトーンかワントーンにするのをおすすめします。モノトーンは本当に白黒の絵ですが、白黒の作品も色鮮やかな作品と同じくらい魅力的だと思います。
枯葉がいいな〜と思う方は鉛筆画だったり、ペン画、切り絵など白黒作品の方が多いんです。自分が色をたくさん扱うので反動なのかもしれません。
色彩理論を勉強するのもいいのですが、描写力や構成力があるなら、もういっそのことモノトーンでもいい気がします。モノトーンに抵抗があるなら、セピアなどのワントーンやインディゴや紺色系のワントーンでも素敵です。作品が色とりどりでなくてもいいと思うんですよね。
枯葉も色を扱うのに疲れて、定期的にワントーンやモノトーンの作品を描いてます。
それどころか色彩という要素をあえて抜くことで、テーマや伝えたいことがかえってダイレクトに伝わってくるなんてこともあると思います。
枯葉が若い時、とても憧れていた作家さんがいました。HPで作品を追っかけていたのですが、最初はカラーの作品とモノトーンの作品両方描かれていたのですが、ある時からモノトーンの作品だけに絞られました。どこかで色を捨てることを決断されたんだと思いますが、作品はどんどん深みを増していって、そういう選択も含めて素敵、と思っていました。
色がないのも色彩です!
構成や発想するのが苦手という人へ
構成とかよく分からないし、そもそもアイディアを出すのが苦手。
という場合は、描きたいモチーフを探して忠実に描く、ということを考えてみてもいいのではないかと思います。いいなと思う風景を探す、描きたいようなモチーフ(花やフルーツ)を探す、モデルを探す、そんなことからスタートしてみてはいかがでしょうか。(というかこちらの方が正統な絵のスタイルなのかもしれませんが)
ありのままを描く!
これも楽しい✨
その中で、もっと美しく見せるためには、ここを大きく描いた方がいい、とかコントラストを強めた方がいいとか、色を工夫した方がいいとか、色々構成を工夫する場面がでてくるのだと思います。
発想が苦手なら、現実のものをありのままに描くことからスタートして、少しずつ自分の理想に近づけていく経過で構成を工夫していけばいいのではないでしょうか?
いまや絵には色々なジャンルがあり、こうでなければいけないというものはありません。もっと抽象的なものでもいいし、広義では色遊びみたいなものも作品に含まれると思います。
枯葉のことでいえば、フルーツを描くのが好きなのですが、これはなるべく本物らしく見たまま描こうと考えています。普段描くファンタジー系の絵に比べると構成の自由度は少なめなのですが、それでもフルーツをバランスよく配置したり、背景をあえてなくしたりとそれなりに工夫しています。
こういうのもいいですよね!
苦手なことを受け入れる
何が言いたいのかというと、描けないものをあえて避けて、持てる力だけで、自分史上最高の作品を描いていくという経験を繰り返すことで自信をつけたらいいと思うんですね!
苦手なことを克服しなければいけない?
いやいや、苦手なことも個性なんですよ。
苦手?と思うことは逆手にとって、うまく長所にしていったらいいと思うんですね。むしろ「苦手なんじゃなくて、私はこういうアプローチの方が好きなのだ!」という捉え方の方がいいかもしれませんね。色彩よりモノトーン、や影描かない、などですね。
で、色々な絵を描くうちに「いやもっと色々な絵が描けるようになりたいんだっ!」と思うようになったら、はじめて絵を練習したらいいと思うのです。枯葉も作家活動を続けて5年くらい経った頃、ある日描けないものが多いことに気がつきました。そのときはじめて技術の必要性を感じ、練習をするようになりました。
必要に駆られてする練習だと身が入りますからね。
どのタイミングでも遅いということはないです。
最後に
ず…ずっと書きたいと思っていたことが書けた!
いや賛否両論ありそうで怖いですが…
きっと…
きっと大丈夫!
今まで意図的にブログは「色彩」のことだけにしようと思っていました。だれも傷つけない楽しい話題なので…特に描写力に関しては、上手くなるためには努力しなくてはいけない、という論調になりがちで、それを語った時点で、誰かを傷つけてしまいそう…と思っていました。
絵が上手いといっても、色々な上手さがあるので、それを言語化できたらな〜とずっと思っていました。もちろんこの3つの区分けが正しいとは限らないですし、この3つの要素はお互いに繋がっていたりします。
絵が上手いというと描写力に目が行きがちですが、「そんなに上手いわけでもないけど、なんか魅力的だよね」という作品も確かに存在します。(子供の絵とか最たるものではないですか?)そういう作品は構成や色彩がいいことが多いです。
なら、構成や色彩も絵の技術の一部では?描写力の向上だけでなく、構成と色彩のことをもっと考えてみては?というのが枯葉の考えで、それを誰かに伝えたかったのです。
描写、色彩、構成、
この3つで考えてみよう!
一貫して、「みなさんもっと気楽にお絵描き楽しんで!!」という気持ちで書きました。
それぞれ絵を描くペースや目的はさまざまですが、絵の技術に関しては、臆することなく、いい意味で他者から色々なことを学び取り、生かしていければなあと思います。そして自分の作品のいいところをたくさん見つけてあげてほしい。
また、作品作りは自分のためであることもお忘れなく!!